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「経営を教える」会社の唯一無二の経営理念とは

投稿日:2023/11/14更新日:2024/01/11

今年11月発売の『経営を教える会社の経営』から「PROLOGUE 4.グロービスの経営理念」の一部を紹介します。

われわれグロービスはさまざまなビジネスを営む組織体ですが、祖業であるビジネススクール事業を始め、「経営を教える」事業が売上的にも人員的にも大きな比重を占めています。そして経営学では、経営理念やビジョンを、経営戦略や人事戦略、各種施策の上位に位置付けられる、企業の基本的な信念や目指すべき未来像と定義し、重視しています。昨今流行りのパーパス経営も基本的にはその立場に立ちます。

良い経営理念やビジョンがあれば、ステークホルダー(従業員や顧客、パートナーなど)もどんどん集まりますし、ブランドイメージも高まります。では、「経営を教える」会社であるグロービスは、どのような経営理念を謳っているのでしょうか。そこに込められた想いとともに、そのユニークさや魅力を確認してください。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

グロービスの経営理念

ここで、グロービスの経営理念を紹介します。

  • ビジネスを通しての社会貢献(対社会)
    グロービスは、常に新たな価値を創造し、ビジネスにおける新機軸を打ち出し、社会的善のビジネスを通して社会貢献を行う。
  • 自己実現の場の提供(対個人)
    グロービスは、社の内外を問わず、グロービスに関わるスタッフ各自が可能性を信じ企業家精神を発揮し、相互啓発を通して自己実現できる場を提供する。
  • 理想的な企業システムの実現(対ステークホルダー)
    グロービスは、顧客を初め事業に関わる全ての人々の満足度を高め、21世紀のリーダーとして、フェアでオープンな理想的企業システムを構築し、維持する。

グロービスは誰にどのような価値を提供するかを、この通り経営理念を通じて、明確に宣言しています。

ビジネスを通しての社会貢献(対社会)

グロービスの経営理念の冒頭にある「ビジネスを通しての社会貢献」とは、私たちにとってビジネスとは目的ではなく、あくまで手段に過ぎないことを表しています。つまり、グロービスが行うすべての活動は社会貢献のために行う、ということを表しています。

グロービスは法的には民間企業(営利企業)に分類されますが、利益を創出することやビジネスを営むことそのものを目的とするのではなく、すべては社会に貢献するためにビジネスをする、という理念を持っているのです。逆に言えば、社会貢献に繋がらないビジネスは一切やらない、ということです。世の中には、儲けることを目的にビジネスをしている個人や組織もあります。そういった存在を否定するわけではありませんが、グロービスはそれらの利益至上主義の会社とは一線を画す会社です。

昨今は、ESG(Environment、Social、Governance)やSDGs(Sustainable Development Goals)の流れもあって、営利企業と言えども単に儲けることができていればそれで良しとされる時代ではなくなってきました。個人的に、これはとても良い流れだと思っています。企業とは「社会の公器」と呼ばれる通り、本来は社会をより良くするために存在するものです。そして企業は、社会を良くした分だけ、それに相応しい対価(金額)を頂く存在であるべきです。それにも関わらず、私たちが活きる地球や社会環境を害してまで成長していく企業が生まれてしまったこと自体が、本来的には望ましいことではないはずです。

多くの企業が、社会に貢献する活動をしていることをアピールするために、本業とは別のCSR活動に取り組んでいます。そのCSR活動が社会を良くすることに繋がっているであれば、それは取り組んだ方が良い活動であることは間違いないでしょう。ただし、本来、「社会の公器」たる企業としては、取って付けたようなCSR活動を行うよりも、本業自体を社会貢献活動に直結させるべきではないでしょうか。

グロービスは、創業者の堀が「ビジネスを通しての社会貢献」をするために創った企業であるが故に、社会貢献すること自体を本業とした企業(=社会貢献本業カンパニー)であることを自負しています。

自己実現の場の提供(対個人)

経営理念の2つ目には、対個人に対して自己実現の場を提供する、ということを謳っています。自己実現とは、個人が自分の能力を最大限に発揮し、自身が心から望む自分のありたい状態を実現することです。有名なマズローの欲求5段階説において最上位に来るのがこの自己実現欲求とされている通り、自己実現は人間にとって最も高次の欲求とされています。私たちは、グロービスに関わるすべての人にこの自己実現を果たしてほしいと強く願っており、それを実現させるための場を提供すべく日々活動しています。

もちろん、自己実現を果たす道のりは容易いものではないかもしれませんが、グロービスには「可能性を信じる」という信念がすべてのスタッフに宿ったものとして存在しています。これは、堀がグロービスを創業した時から持っていた重要なスタンスです。グロービスは自身の可能性を本気で信じられる人の集団だからこそ、相互啓発を通じて自己実現できる道を自ら切り拓いています。

この理念では、「社の内外を問わず」と述べている通り、グロービスの社員はもちろんですが、グロービス社外の方々、例えば大学院や企業研修の受講者、社外の講師、そしてベンチャーキャピタルにおける起業家など、様々な個人の自己実現を果たしていくことを誓っています。

実際に、この経言理念に惹かれてグロービスに入社された方々が多くいます。

理想的な企業システムの実現(対ステークホルダー)

経営理念の最後に掲げているのは、「理想的な企業システムの実現」です。この理念は、私が個人的に最も強く想いを持っている部分であり、本書を執筆する動機に繋がった部分でもあります。

グロービスは、世の中の個人・法人・社会に対して、良き経営の在り方を提供している会社です。それ故に、私たちグロービス自身が理想的な経営を実現することができていなければ、提供しているサービスの説得力を失ってしまいます。つまり、この理念があることこそが、グロービスをグロービスたらしめているのだと私は感じています。

私は、初めてこの言葉を見た時に自分の中に衝撃が走りました。経営理念というのは、各社が信じる最も重要な価値観を表すものですが、そこにはそれぞれの組織が信じる“理想の中身”が言語化されているものです。それに対して、グロービスの場合は、“理想の中身”を表現するところに“理想”という言葉そのものを直接的に謳っているところに、私は他の組織とは一線を画す気概を感じたのです。経言理念に“理想”を高らかに謳うからには、グロービスは当然ながら理想に反するようなことはできません。しかも、その理想を全てのステークホルダーに対して宣言しているため、そこに懸ける想いも生半可なものではないのです。


経営を教える会社の経営: 理想的な企業システムの実現
著:グロービス 、 内田圭亮 発行日:2023/11/8 価格:1,980円 発行元:東洋経済新報社

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