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答えは教えるのではなく、相手に考えさせる

投稿日:2023/08/25

今年5月発売の『入社1年目から差がつく ロジカル・アウトプット練習帳』から「Lesson20 問いかけて伝える」の一部を紹介します。

部下の育成の技術にコーチングというものがあります。これは傾聴と質問を中心にした指導方法です。上司が一方的に喋ったり、最初から答えを教えるのではなく、基本的に聞き手役となり、たとえば「ではどうしたらそのお客さんの不満を解消できるかな?」などと問うスタイルです。

コーチングのポイントは、仮に相手が答えを知っていてもいきなりそれを言うのではなく、しっかり相手に考えさせることです。なかなか答えが出てこなければ問いを変えたりヒントを与えたりすることで答えが出るように促します。部下としては、上司に教えてもらった事柄は忘れやすいのですが、自分で考えた答えは忘れにくいという点がポイントです。

この手法はコーチングのみならず、さまざまなコミュニケーションにおいて応用可能です。相手の記憶に鮮明に植え付けるためにも、時には問いかけて伝える工夫ができないか考えてみましょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

問いかけて伝える

伝えたい内容を問いかけることによって相手に伝えることが可能です。問いかけるとその問いの答えを相手は考えようとします。つまり問いによって、「考え」を相手に想起させることができるということです。そうすると、「考え」は自らが伝えなくとも、相手がその「考え」を想起すれば、結果的に「考え」が伝わったことになります。では、どう問いかければ上手く伝えることができるのでしょうか。問いかけて伝えることのメリットは何なのでしょうか。

演習

「昼夜間の営業から24時間営業に変えるとマルチタスクをこなせるスキルが店員に求められることになる」ということを説明してみましょう。

演習

例えば、以下のような説明が可能です。

「一般的に、昼夜間と比べると深夜や早朝の顧客は少なくなります。そのため、深夜や早朝の店員数は少なくなります。一方で、店として提供する商品やサービスは変わりません。そうすると、提供する商品やサービスが変わらない中で、深夜や早朝は、より少ない人数で対応しなければならなくなるということです。そうすると、一人ひとりが担う役割は増えることになります。 24時間営業にするとマルチタスクをこなせるスキルが店員に求められることになります」

この説明を図示すると、次のようになります。

では、同じことを問いかけによって伝えます。

「24時間営業にするとどんなスキルが店員に求められるのか考えてみることにしましょう。 まず、お客さんの数は、一般論としては、深夜や早朝は昼夜間と比べるとどう変わりますか?」

 (減る)

「そうですね、そうすると店員の数はどう変わりますか?」

 (減る)

「では、24時間営業にした場合、お店が提供する商品やサービスは変わりますか?」

 (変わらない)

「そうですね、ということは、従業員の数は減る、お店が提供している商品やサービスは変わらないとなると一人ひとりに求められる役割はどう変わりますか?」

 (増える)

「そうですよね、そうすると、24時間営業にするとどんなスキルが店員に求められることになりますか?」

 (マルチタスクで複数の業務を遂行できるスキル)

このように問いを重ねることによって、伝えることができます。

実際に行っていることは前述の図の下段の箱の中にある情報を順番に相手に答えてもらっていることになります。問いかけることによって、以下の3つの情報を相手に渡しているということになります。

  • 深夜、早朝の顧客数は、昼夜間と比べると少なくなる
  • 店員数も深夜、早朝は少なくなる
  • 店として提供する商品やサービスは変わらない

もし、いきなり、「24時間営業にすると店員にはどのようなスキルが求められますか」と問うてしまうと、何の下地もない中で考えなければならないため、どんな回答が出てくるかわかりません。

一方、先ほどの3つの情報を相手に渡した後であれば、最終的に伝えたいことを相手が言ってくれる確率は高まります。

問いかけることによって、相手に考えさせることができます。考えた答えは、その問いかけの結果、相手から出てくる情報です。その情報を伝えてしまうというのも1つのやり方ですが、問いかけて、答えが出るのであれば、情報を伝えた結果と同じ状況をつくることができます。両者の間でやりとりされる情報をどちらが出したかの違いでしかありません。問いかけることによって伝えることができるということです。

POINT
  1. 言いたいことを図示して表現する
  2. 下段の情報が答えとなるような問いを準備し投げかける
  3. 最後に上段の言いたいことが答えとなるような問いを準備し投げかける

入社1年目から差がつく ロジカル・アウトプット練習帳
著・編集:グロービス (著)、岡重文(著) 発行日:2023/5/31 価格:1,760円 発行元:東洋経済新報社

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