あすか会議2023
第2部全体会「Generative AI時代に高まる人間性〜AI×エンタメの可能性~」明石ガクト×前田裕二×樹林伸×瀧口友里奈
(2023年7月1日開催/国立京都国際会館)
AIの進化は止まらない。特にGenerative AIの登場は、音楽、アート、映画など、エンターテインメントの世界に果てしない新たな可能性を生み出そうとしてる。そうした中で、人間が生み出すコンテンツの、AIに勝る可能性とその価値とは何なのか。エンターテインメントとAIの交差点に立つパネリストたちが、AIの進化がエンターテインメントをどのように変え、その中で人間性が生み出す価値がどう進化していくのか、AI時代におけるエンタメの未来像を議論する。(肩書きは2023年7月1日登壇当時のもの)
00:31 AI×エンタメにおいて、気になっているAIの使い方
-(樹林氏)金田一少年の事件簿で、密室トリックを考えてもらおうと思ったが、箸にも棒にも掛からなかった。密室ということを今一つ理解していなかった。まだストーリーテリングに関してはまだ出来ない。ただそれっぽいものを作るのは上手い。『神の雫』に十二使徒というワインが出てくるが、間違ったワインが出てきた。ただそれっぽい。知らない人が見たら勘違いしてしまうの。
-(明石氏)今業務でも使うようにしているが、十二使徒のような絶対的なものにAIは弱い。ただ相対的なものを作るのはすごく上手。こないだTwitterに「可愛くてごめん」という曲を踊った動画を上げた。踊っている自分を、相対的に素敵な女性2人に変換したものがバズった。元になるもののバリエーションを増やしたりするのは上手い。これは結構エンタメに影響を与える。会社の代表はダンスじゃなくて何になるんだという話だけど、こういう才能を生かしてライブ配信できるようになったら、SHOWROOMでトップになれるんじゃないか。今は1秒間に15フレームなら出来るが、結局時間の問題。今までバーチャルなモデルを作るのに時間がかかったが、ものすごいコストが下がっている。
-(明石氏)今AIはライフハック、ビジネスハック的な方が注目されている。でもこれはリーダーとしてめっちゃせこい。未知な技術を使って何を新しいものを作る方が楽しい。
-(前田氏)推し活のように、本当に応援できるかどうかが大事。24時間365日無尽蔵に配信するAIは推せなさそうということがわかってきた。そういう人に投げ銭したいとは思われない。例えば、人間とAIに投げ銭が貰えるかを戦わせる。AIが負けたら魂が消えてしまう、AIはそれを恐れているという設定にする。それをやったときに、AIに共感できるかは試してみてもいい。AIには感情はないと言うが、それは本当なのだろうか。感情は本人がどうとかではなく、相手側がどう感じるかによって成り立っている。感情移入や共感が成されるかもしれない。
15:56 人間に残りそうなものは?推されるアイドルの特徴は?
-(前田氏)BiSHの解散ライブに行った時、東京ドームでサイリウムを配っている人がいて、誰ひとりサイリウムを持っていない人を作りたくないと話していた。推す理由は、「好きになれるか」と「役に立てるか」。好きになれるかはAIにも出来るかもしれないが、役に立てるかはAIにはまだ苦手なのでは。ファンサブやリツイートなど。推す余白を生みにくいし、感謝が跳ね返ってくる感覚も弱い。
-(明石氏)WACKのアイドルは、オーガニックな感じがする。世の中にはオーガニック食品、完全食品、間にあるセブンイレブンで売っているものがあるが、適度に添加物が入っているものを一番気軽に食べる。オーガニックは高いし完全食品は続かない。間にあるものは人間で言うと、2.5次元なのではないか。InstagramやTikTokの投稿では、フィルターで盛っている。ベースにあるストーリーはそれっぽいものを作れても、共感するようなものは作れないのではないか。40代のおっさんがセブンイレブン化しいていくことになるので、爆発的に流行ると思う。
26:32 良いストーリーとは何なのか。
-(樹林氏)共感性を持てることが大事。プラス意外性。両方を満たすものが売れる。例えば金田一少年の事件簿なら、スケベでしょうもないが(共感性)、天才でトリックを解き明かす(意外性)。意外性は難しい。意外じゃないものを知り尽くしているから意外性が出てくる。取材の中で10の中ら1とか2しか使わない。これをAIが情報を集めてきてくれたら楽になるが、なかなかAI相手に話したいとは思えないのではないか。
-(明石氏)モーフィングの話で言えば、AIが出てきた後は作業が早くなった。ワンクリック、ワンプロンプトで色々出来てしまう。アメリカのワンダーダイナミクスの映像はすごい。アニメ化・ドラマ化に至らなかった作品も、どんどん映像化されていくし、クリエイターエコノミーを助ける存在になる。
-(樹林氏)売り方を考えてくれることを期待している。
-(前田氏)物語には、フィクション的なものとリアリティ的なものがあるが、AIが得意なのは前者。ハリウッドの50年分ぐらいの脚本をすべて読み込んで13個に分ける「SAVE THE CATの法則 」という本にもあるように、人の心が動くものはある程度類型化できる方向性になるのではないか。音楽もそう。
-(明石氏)TikTokでは楽曲が鍵。大体1曲100万円くらいで高いなと思っていた。AIだと安くできるが、クリエイターがいなくなってしまうのを危惧している。変わらなきゃいけないことに面白さを感じている。
37:35 動画編集者がいらなくなったとき、どういう仕事に転換していくのか。
-(明石氏)絶対的なものを決める立場にならなきゃいけない。全体の世界観を決めてディレクションする人とそれをまさに体現する、BiSHみたいな生身のストーリーを持ってる人、これは代替不可能だから、みんながそうなっていかないといけない。これは、なかなかしんどい時代。
-(樹林氏)感動、怒り、涙みたいなものは、まだAIは概念としてしか理解できていない。
39:40 質疑応答① これからの子どもたちは何を学ぶべきか?
-(明石氏)これからはリベラルアーツの時代になる。それはイギリス式詰め込み教育。
-(樹林氏)AIに取って代わられそうな、プログラムみたいなことをやらせるべきではない。対人コミュニケーションは大事。
-(前田氏)現実世界との接点が大事。子どもが言い出した「好き」を絶対に止めないこと。
46:55 質疑応答② 加工したものが社会的に役立つのだ とすれば心が現実との乖離を受け入れられなくなってしまうのではないか。
-(明石氏)価値観は変わっていく。理想の自分に近づきたいという欲望は高まっていくのでは。
-(樹林氏)色んな価値観を受け入れる人が増えたらいいなと思っている。
-(前田氏)人気になるVTuberはネットの住民みたいな人が多いが、褒められるとその人は明るくなっていく。何らかの形で承認される経験を経ることが大事。