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リスキリングの主体は個人ではなく、企業―誤解だらけの「リスキリング」を徹底解説<前編>

投稿日:2023/04/17

最近よく耳にする「リスキリング」という言葉。単なる“大人の勉強”のことでは、と思い込んでいる人も多いのでは――。これは大きな誤解で、じつは企業が生き残りを賭けて取り組むべき事業戦略の一環なのだそう。いったいどんな学びを指すのか?リスキリングの第一人者、後藤宗明氏に聞いてみた。(文=西川敦子)

リカレント教育とどう違う?「道なき道を進むための学び」とは

八尾:国が推進しているリスキリングに注目が集まっています。とはいうもののリスキリングとは何なのか、リカレント教育とどう違うのかなど、正確なところはよくわからないという人は多いのでは。

後藤: リカレント教育とは生涯にわたって繰り返される学びのこと。大学を卒業して就職し、退職してから大学院に通い、また就職する……といった具合に、学習と就労のサイクルを繰り返しつつ受ける教育を指します。

2016年、リンダ・グラットン氏の著書『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)がベストセラーとなったことで、日本でもリカレント教育への関心が高まりましたよね。ただし、リカレント教育の原点はあくまで個人の関心。必ずしも仕事に直結しない学びも含んでいます。

一方、リスキリングとは従業員に対し、自社の戦略に必要な職業能力を再開発することを指します。主体はあくまで個人ではなく、企業なのです。日本では「学び直し」という和訳がつけられたため、「個人で取り組むもの」というイメージが広がってしまいましたが、誤りです。

注意したいのは、学んで終わりではないという点。学びを活かして、新たに必要となる職務に従業員を配置転換する――ここまでできて、初めてリスキリングと呼ぶことができます

リスキリングは、もともと2016、17年頃から欧米で広がった概念です。背景にあったのは急速に進展するデジタル化と、その影響で起こりうる“失業”です。外部環境の変化に合わせて企業を変革し、成長事業に労働力を移動させようと、企業が一斉にデジタル人材育成に注力するようになりました。

ところが同じ頃、日本の関心は「百年時代の学び直し」や「リベラルアーツ」に向けられていた。新型コロナの感染拡大を契機にデジタル化が進み、ここにきてようやくリスキリングに注目が集まっているわけです。

産業構造の変化を見抜いた企業や個人が生き残る

八尾:人材がいなくては新しい産業も生まれません。技術の進歩についていけない企業が取り残され、失業者も増えてしまう。変化の激しい時代においてリスキリングは不可欠ですね。

後藤:従来の人材教育だけでは企業経営は立ち行きません。たしかに既存事業を拡大、再生産していけばよかった頃は、既存のスキルを磨くスキルアップやOJTで事足りていました。ですが、これからは道なき道を進み、新しい価値を創らなければならない時代です。企業は未来の産業構造の変化を予測し、今後、従業員にどんなスキルが必要になるか見抜かなければなりません

後藤:「リスキリングなどより、コミュニケーション力やリーダーシップ育成が肝心」と考える方もいるでしょう。もちろんビジネススキルは今までも重要だったし、これからも必須です。ビジネススキルという土台なくして、AIなどのテクノロジーを活用することはできませんから。ただ、昨今は外部環境が急速に変化していますので、ソフトスキルとハードスキルの掛け合わせをつねに意識して能力をアップデートしていく必要があります。

では、DX研修など新しい教育プログラムを導入すればいいかというと、そう単純な話でもないのです。リスキリングは自社の事業戦略に基づいて全社プロジェクトとして行うもの。研修もリスキリングの一部ではありますが、「研修=リスキリング」ではありません。日本ではなぜか学ぶことだけに焦点が当たってしまっているのですが、学んだことを活かすところまでやらないと意味がないのです。

八尾:まず、企業として目指すゴールを明らかにする。必要となるスキルから現在持っているスキルを引いた、“スキルのギャップ”を把握する――リスキリングとは目標を実現するための学びであり、未来に向けた生存戦略だということを理解しておく必要がありますね。

後藤:企業だけでなく、個人にとってもリスキリングは生存戦略といえます。あらゆるスキルは陳腐化する。環境変化の激しい時代、つねにリスキリングしないと市場評価は下がっていきます。人に投資し、新しいスキルを身に着けてもらうことで、企業としても道が拓けますし、社員のキャリア展望も明るいものになっていくのです。

後編に続く

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