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『森のような経営』――畑違いの現象から原理原則を得る

投稿日:2023/01/12


『森のような経営』――何とも不思議なタイトルである。お世辞にも、出版ビジネス的に“売れそうな”タイトルではない。それでも、「森」と「経営」という全く異質の掛け算に興味を持つ人も多少はいるかもしれない。この本はそんな異質なテーマをキーワードに、著者二人によって「森のような経営」をテーマに対談が進んでゆく。

「森のような経営」とは?

そもそも、「森のような経営」とは何か?その前に、この本が出てきた背景を説明したい。これまでは、経営者が決めた中長期の経営計画に従って一般従業員が動けば、それなりに組織は上手く機能した。
しかし現在は、VUCAと言われる先の読めない時代になってきたため、そのやり方が上手くいかなくなってきている。多くの人はそのことに気が付いているが、大きな組織にいる人ほど、中々、慣れ切った既存のやり方を変えることができない。そんな閉塞感の漂う今こそ、「森」という自然界のエコシステムからヒントを得た経営を行ってみるのはどうか、と筆者たちは提案している。それが「森のような経営」だ。

では、「森」から得られるヒントとは、具体的にどんな状態なのか?著者の発言を引用してみよう。

たとえば森の中で1つのどんぐりが落ちて、すごく大きなカシの木に育ったとします。これを最初から計画して「10年後には、ここに高さ〇メートルのカシの木が育つようにしたい。そうならないと困る」と考えるのは、この世界でおそらく人間だけです。森には何万個、何十万個のどんぐりが落ちているのだから、どの1つが巨大なカシになるかなんて、分からない。これが自然界です。なるかもしれないし、ならないかもしれない。自然界にいる生き物は、みんなそうやって生きている。

『森のような経営』p.80

少しでも「森」の感覚を掴んで頂けただろうか?まだ頭の大部分が??(クエスチョンマーク)で埋め尽くされていることと思うが、気にする必要はない。著者(山藤氏)の言葉を借りれば、「大丈夫」。今、この瞬間、「森のような経営」に興味を持ったその感覚を大切にしてもらいたい。

「森のような経営」からあなたは何を学ぶのか?

この本を私が紹介した理由の一つに「アナロジー(類推)」を捉える力に対する問題意識がある。すなわち、「森」という一見、経営とは全く畑違いの現象に対して、共通項を見いだしたり、構造(エコシステム)からヒントを得たりすることが大切だと感じるからだ。

しかし、仕事柄、時折以下のように思考停止したかのような声を聞くことがある。

「我が社のXYZ業界は特殊で、他業界の話は参考にならない」

「我が社は、A国に進出していないので、A国のケーススタディでは、参考にならない」

このような考えで学びを止めてしまうことは、非常にもったいない。本来の学びの観点からすると、具体的な事例・事象から、教訓や原理原則を見いだした上で、自社・自身の置かれた状況、課題に引き寄せて考えることができるようになりたいものだ。

本書でも、今流行りの「ジョブ型」とは逆行するような「年功序列型の昇給システム」を著者(山藤氏)の経営する会社で採用するなど、一見すると時代遅れの施策事例も紹介される(なぜ山藤氏が「年功序列型の昇給システム」を取り入れたのか、その合理的な理由は、本書を読んで確認して欲しい)。こういった事例は、そのまま自社に取り入れることは難しいことが多いだろうし、そもそも読者の多くは、人事システムを変革できる立場にはないだろう。そういった違和感を覚えた際に、「(この本は)使えない」と学びを止めてしまうのは非常にもったいないと感じる。ぜひ、本書を読みながら「森」と「経営」の共通項を見いだす気持ちで、読み進めて頂きたい。

森に行けない人が森のようであるための8つの実践方法

さて、最後に本書の中で紹介されていた「【家でできる】都会の日常で森を育む8つの習慣」を紹介して、この書評を締めくくりたい。
本書の中では、「森」を実感するために、実際に森に行き、2泊3日で寝泊まりする「森のリトリート」を紹介している。しかし、私も含めた多くの読者にとって、実際に「森」に行くことはハードルが高過ぎる。そこで、自宅周辺でも「森」を感じることができる簡単なエクササイズが紹介されているのだ。ここまで読んだ方は、多かれ少なかれ「森」に興味・関心を持った方々だと思われるので、下記の8つの習慣の1つでも是非、実践して頂き、「森」を体感してみてはいかがだろうか?何か感じるものがあるかもしれないし、何も感じないかもしれない。でも「大丈夫」。「森」のように、ありのままで行きましょう。

【家でできる】都会の日常で森を育む8つの習慣

①ゆっくり呼吸をする

②足の裏で自分の体重を感じる(木になる)

③ゆっくり歩く(スロー散歩)

④鳥の声に耳を傾ける

⑤植物を育てる

⑥感じたことを書き留める

⑦雨でも傘をささない

⑧会話断食(サイレントデー)をする

『森のような経営』p.177

森のような経営 - 社員が驚くほど自由で生き生きする。「心理的安全性」に溢れた組織づくり
著者:山藤賢・山田博 発行日:2021/10/25 価格:1,650円 発行元:ワニ・プラス

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