ますます「わがまま」になる顧客とどう付き合うか?

今年9月発売の『MBA 2030年の基礎知識100』から「第6章70 マーケティングの個別化が進む」を紹介します。

数十年前の「モノ不足」の時代には、企業が大量生産したものを皆が買うということが一般的でした。その後「モノ余り」の時代が訪れ、企業はユニークな差別化や多品種少量生産を求められるようになりました。そして2030年には、現在進行しつつある「個別化」がさらに進むことが予想されています。顧客ニーズがますます多様化し、企業は工夫してそれに応えないと買ってもらえないという時代がやってくるのです。SNSでの口コミやネットでの比較もより重要視されると予想されます。そして個別化に応えるうえでのカギは、ここでもテクノロジーの活用です。ビッグデータを活用し、個々の顧客にあつらえた「体験」を提供できる企業こそが生き残れる可能性が高いでしょう。顧客体験価値マーケティングが言われて久しいですが、その体験の粒度をより細かくし、顧客に向き合える企業が優位に立てるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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マーケティングの個別化が進む――あらゆる面で技術を活用

マーケティングの分野では古くからテクノロジーが利用されてきましたが(例:CRMシステム、レコメンデーションなど)、近年はDX推進の中でさらに強化が図られています。2030年頃には、かつてはSF映画の中で見られたようなことが、いよいよ実装されるかもしれません。ここでは、マーケティングプロセスに沿って、その可能性を見てみましょう。

まず、顧客のターゲティングやポジショニングにおいては、ますます個別化が進むでしょう。ワン・トゥ・ワン・マーケティングが加速するということです。
キーとなるデバイスはスマホやスマートグラスです。例えばGPSを利用して、街を歩いている人に付近の店についての関心がありそうな情報をピンポイントで届ける、といったことが、より洗練された形で行われるようになるでしょう。スマートグラスをかけていれば、店頭に並べられているさまざまな商品の訴求ポイントや特性が、個人ごとにあつらえられた形で提供されるかもしれません。

プロダクトも、個別化のコストが下がる中で、よりバリエーションを持った形で提供される可能性があります。基盤の部分は大量生産しながらも、ちょっとした部分でのカスタマイズが進むかもしれません。また、カスタマイズ製品について、希望スペックをユーザーが書き込んでから手元に届くまでのスピードなども、どんどん上がることが期待されます。

価格も一律ではなく、よりバリエーションのある価格設定がなされる可能性があります。価格のバリエーションが早期になされた業界としてはエアラインがあります。それと同様のことが、いくつかの領域で起きるかもしれません。例えばアミューズメント施設であれば、早く予約した人に安くする、あるいはリピーターほど安くする、また、エクストラの金額を払った人に便宜を図る(例:待ち時間なくアトラクションが楽しめる)といったやり方です。ここでもデータに基づいた個別化がどんどん進んでいくでしょう。

プロモーションはいち早くIT活用が進んだ分野ですが、ここでも個別化がさらに進むことが予想されます。現在ではまだ必ずしも高くないレコメンデーションの精度も、ますます上がるでしょう。また、現在は、プロモーションメールなどはほとんど読まれずに破棄されるものが多いですが、開封率を上げる工夫などもなされていくでしょう。「数を打てば当たる」という世界観が変わり、顧客体験価値も意識した「質」の面により重心が移る可能性があります。顧客の行動変容プロセスの把握やそれに応じた打ち手についても、よりきめ細かい施策が取れるようになるかもしれません。すでにBtoBの営業用システムでは行われていることですが、BtoCの商材においても、いくつかの分野ではこれが進む可能性があります。

チャネルでは、昔から言われてきたオムニチャネルが、いよいよ実効性あるものになるかもしれません。Eコマースや直接自宅へ送るデリバリーサービスも増えるでしょう。いわゆる「ラストワンマイル」の課題が、さまざまな形で克服されるかもしれないのです。

これらは、昔から言われつつも、諸事情があってなかなか進んでこないものが多かった分野です。すべてが実現するわけではないかもしれませんが、ますます「わがまま」になる顧客に対し、個別解を提供しないと、なかなか買ってもらえない時代がやってくる可能性が高いのです。

MBA 2030年の基礎知識100
著者:
グロービス 著・編集:嶋田毅 発行日:2022/9/22 価格:2,145円 発行元:PHP研究所

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