株主と対話し、より良い妥結点を見つけることが経営の要に

今年9月発売の『MBA 2030年の基礎知識100』から「第5章63企業は株主とどう向き合うべきか」を紹介します。

株主会社の基本は「所有と経営の分離」です(なお、会社にはいくつかの種類がありますが、ここでは最も一般的な株式会社を取り上げています)。これにより、「お金はあるけれども直接経営はしたくない投資家」と、「経営はしたいものの多額の資産を持たない者」がお互いに便益を得ることができるようになるのです。難しいのは、特に公開企業の場合、株主が多数おり、その期待が一致しないことです。成長のための投資を重視する株主もいれば、配当などの短期的な株主還元を求める株主もいます。株主総会で経営を委託された経営者(経営陣)は、彼ら、特にある程度の比率の株式を保有している複数の機関投資家の要望を絶妙のバランス感で満たさなければなりません。そのためにはやはり彼らとの対話が必要です。株主も、まともな機関投資家であれば会社のためになる提案をするものです。株主との対話をむやみに厭うのではなく、こちらの言い分も聞いてもらったうえで妥結点を探るWin-Winの関係構築が2030年にはますます大切となるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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企業は株主とどう向き合うべきか――株主は本来「モノ言う」もの

今でも「モノ言う株主」という表現を好んで使う言論人やメディアは少なくありません。筆者(嶋田)がかつて、「アクティビスト・ファンド」と書いて、あるメディアに寄稿した時に、ご丁寧に「モノ言う株主」と書き換えられたことがありました。しかし、本来、株主は企業価値を高めるべく企業にモノを言う立場であり、かつての日本企業の株式持ち合いに見られたような「モノ言わない株主」の方が、むしろ異常だったわけです。

確かに一部の強欲なファンドなどもありますが、多くのファンドは企業価値を高めるような真っ当な提案をするものです。株主として株主の立場でモノ言うのは当然の責任です。

一方で企業は、株主に報いつつも、社員を雇い、社会に貢献していかなくてはなりません。それゆえ、お互いの立場に立って、しっかり議論をすることが、本来求められる姿です。そうした議論の中で、お互いに新たに気付くことがあり、妥協点が生まれます。そうしてお互いに納得感を持って信頼関係を築くというのが、株主と企業との本来の関係です。

メディアを筆頭とする日本人の錯覚は、株主、特に外国人株主に言われたら、言われた通りにしなければいけない、あるいは、投票になったら終わりだ、といったことです。極端な場合は、うるさい株主は排除すべきという論調になります。これは間違いですし、非生産的な発想です。

違う立場で違う意見を持った人たちが議論をぶつけ合うことによって、お互いによりよい姿を見つけていくことが企業に求められます。同一性の中でずっとやっていくことがよいわけではないのです。先にダイバーシティの話をしましたが、ダイバーシティは従業員のみの話ではなく、株主にも応用できる話です。

企業側としては、「こうした方があなた方のためにもなる。ただ、あなた方にはあなた方の立場があることも分かる。だから、ここまでは飲むけど、あなたたちもここまでは飲んでほしい」といった、相手視点に立った交渉やコミュニケーションを行うことが、本来のあるべき姿です。

MBA 2030年の基礎知識100
著者:
グロービス 著・編集:嶋田毅 発行日:2022/9/22 価格:2,145円 発行元:PHP研究所

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