平均値は嘘をつく――見破れるだけで価値が出る 『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』

今年7月発売の『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』から「Chaper4平均」の一部を紹介します。

平均値はビジネスシーンのみならずあらゆる場面に登場する数値です。しかしその正確な求め方や、平均値に潜む落とし穴を正しく理解している人は稀です。かつてイギリスの首相であったベンジャミン・ディズレーリは、「ウソには3種類ある。ウソ、まっかなウソ、そして統計だ」と言ったとされます。そして統計の最も基本となるのが平均値です。つまり平均値はしばしば嘘をつくのです。平均には「人並み」や「合格点」というイメージが付きまといますが、それは決して正しくないことが多いのです。
多くの人が正確にその差異を説明することのできない単純平均と加重平均の違いについて説明します。この差異をしっかり理解しておくことが、実態を見抜くことにもつながります。日経平均225とTOPIXの事例でそれを見てみましょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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日経平均225とTOPIX

日本の株式市場の状況を表す代表的な指標に、日経平均225とTOPIXがあります。ニュースなどでよく紹介されるのはこの2つで、いずれも平均の計算で求められます。

●質問
この2つは似たような挙動をすることが多いのですが、通常の変化率は異なります。また、しばしば日経平均225が上がったのにTOPIXが下がる、逆に日経平均225は下がったのにTOPIXが上がるというケースが生じます。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

1つの理由は、日経平均225が、日本経済新聞社が選んだ225銘柄のみの平均だということです。
それに対して、TOPIXは2022年3月まで東京証券取引所に上場する普通株式全銘柄を対象としていました(2022年4月の新市場区分以降は、時価総額が小さい銘柄についてはウェイトが段階的に低減される予定です)。つまり平均値をとる対象が違うというのが1つの理由です。

もう1つ、数学と関連する大きな要素は、日経平均225が「単純平均」(算術平均ともいいます)であるのに対し、TOPIXが「加重平均」であるということです。

単純平均と加重平均の詳細はのちに述べますが、端的にいえば、単純平均はシンプルにサンプルをたし算してそのサンプル数で割ったものです。

たとえば、ある3人の持っているクレジットカードの数がそれぞれ3枚、4枚、2枚だとしたら、この3人の持っている平均のクレジットカード数は(3+4+2)÷3=3枚となります。

一方、加重平均は、「重みづけ」をした平均ということです。重みづけとは、単なる平均ではなく、重要なものやサンプル数が多いものを重くウェイトづけする(重視する)ということです。

たとえば、A市の就業者の平均収入が500万円、B市の就業者の平均収入が550万円だった場合、その平均は(500万円+ 550万円)÷2 = 525万円とはなりません。それぞれの市の就業者数が異なるからです。

仮にA市の就業者が10万人、B市の就業者が20万人の場合、A市とB市の平均の収入は、(500×100000+550×200000)÷(100000+200000)=533万円となります(万円の単位以下は省略)。

収入が高いB市の就業者人口が多いため、単純に足して2で割った525万円よりもB市の数字により近い533万円となるのです。

加重平均と単純平均

日経平均225とTOPIXの話に戻ると、日経平均225は単純平均であるため、値嵩株と呼ばれる株価の高い銘柄の変化に大きく影響を受けます(厳密には、株式分割の影響を調整するため、「除数」と呼ばれる数値で割って調整を行います。また最近では「みなし額面」という手法も用いられます。詳細にご興味のある方は調べてみましょう)。

値嵩株の代表としては、東京エレクトロン、ファーストリテイリング、ファナック、ダイキンエ業などが挙げられ、これらはすべて株価が20000円を超えていて、60000円を超える銘柄もあります。取引単位はすべて100株ですから、一般人にはなかなか手をだしにくい銘柄でもあります。

たとえば、2022年4月15日は日経平均が27093円と前日に比べて78円下がりましたが、そのうちのマイナス99.46円は東京エレクトロン1社の値下がりによるものです。この日、東京エレクトロンの株価は56710円から53880円へと4.99%値下がりし、それが日経平均225に大きな影響を与えたのです。
同じ日に大日本住友製薬の株価も3.61%と大きく下がったのですが、同社の株価は1174円で、寄与度はマイナス1.55円にとどまりました。

一方、TOPIXは時価総額(株価×発行済株式数)の動きを反映します。TOPIXは1968年1月4日を基準日として、当時の時価総額の合計を100として指数化したものです。

前述の2022年4月15日に株価が2160円へと28.5円(1.34%)上がったトヨタ自動車は、日経平均225への寄与度はプラス5.01円でしたが、東京エレクトロンより時価総額が4倍程度大きいため、TOPIXにはそれ以上の影響を与えました。

このような理由から、日経平均225とTOPIXはしばしば動きが逆になるという出来事が生じるのです。

『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』
著者:グロービス 執筆:嶋田毅 発行日:2022/7/29 価格:1,760円 発行元:東洋経済新報社

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