リリックの感性を愚直に磨く
前回、HIPHOPカルチャーの持つ特徴から、ビジネスパーソンが仕事に活かせる成功の要諦を述べてきた。ここからは実際にHIPHOPの世界で成功してきたアーティストたちから学ぶことのできる要諦を紹介したい。
HIPHOPシーンで成功するのは生半可なことではない。
歌詞(リリック)、音楽(トラック)の感性をとにかく磨き続けなければならない。
歌詞(リリック)一つとっても、HIPHOPには「韻を踏む(ライミング)」という特徴的なものがある。全く違う言葉を、母音を揃えて歌詞に散りばめていく一種のテクニックだ。例えば、「グロービス」と「向こう見ず」。どちらも「うおおいう」と同じ母音を踏んでいる、といった具合である。
しかも、ただ韻を踏めばいいというものではない。きちんとリスナーの心に響くようなメッセージを込めなければならない。
ここで、私が大好きなZORNというアーティストの楽曲「My Life」のverse(※AメロBメロ部分)を紹介したい。何気ない日常に誇りを持ち、力強く生きようとする生き様が、見事に韻を踏みながら表現されているので、少し長いが、全てをお読みいただこう。
思い通りにいかぬ日常に ふてくされに似た憤り
また言い聞かすこれはまだ序章
高く飛び上がるためにある助走
いつもと同じウェイ でも行先はステージの上
金ピカのチェーンなんて持ってない 高級車にだって乗ってない
でもここに誇り持ってたい 少年のよう夢を追ってたい
踏んだり蹴ったり散々なめ 諦めることは簡単だぜ
ガンガン前人生一回 生きていたい ただ精一杯
60ワットの栄光さ ぜんぜん金なくても成功者
一本道を行こう 洗濯物干すのもhiphop
――My Life / 作詞 ZORN 作曲 DJ OKAWARI , ZORN
いかがだろうか?見事にライミング(韻踏み)しながら、胸を打つメッセージが表現されているのがお分かりいただけると思う。
弛みない努力で成長し続けようとする行動力
成功しているHIPHOPアーティストは皆、このようにボキャブラリーを増やし、自身の心の中にあるメッセージをどう歌詞として韻を踏みながら表すか、相当な努力を重ねている。
例えば、Creepy NutsというHIPHOPシーンを牽引するグループのMC・R-指定というアーティスト。
彼は中学2年生の頃には既に歌詞を書き始め、そこから日本のHIPHOPシーンを代表するMCとして名実ともに名を知られる今に至るまで、言葉を磨く努力をし続けている。
彼が得意とする「聖徳太子フリースタイル」と名付けられたその場で集めた複数の言葉でライミングする即興ラップからも、その努力の結果が垣間見える。これは、会場の観客数名をその場で指名し、その観客が思いついた複数の言葉を適当に集め、その言葉を使って即興で「ライミング」するパフォーマンス。メッセージ性のあるリリックとして紡ぎ出すその様は、彼を「天才」と言わしめる圧巻のパフォーマンスである。百聞は一見に如かず、一朝一夕にできるようになるものでも、才能があるからできるものでもない。弛みない努力がなければなし得ないものだ。
ビジネスでも変わらない。
自身の“能力開発”に弛みなく取り組み続けなければ、このVUCAの時代に満足のいく成果を出すことなんてできない。ましてや、成果を出し続けることなんて不可能だ。
自身の目指すゴールに向かって、必要となる能力を鍛え、挑戦を続けていく。これはHIPHOPとビジネスに共通する成功への要諦の一つであることは間違いない。
終わりに
HIPHOPという一見アウトローな音楽ジャンルも、その実、ビジネスパーソンとして学ぶべきポイントがたくさんあることをご覧いただけたのではないだろうか?
ビジネスシーンでも、HIPHOPシーンでも、成功するために必要なのは、自分を信じ現状打破を諦めない粘り強さであり、コミュニティへの信頼であり、そして努力である。HIPHOPはその成り立ちからストレートにそれを伝えてくれている。
ライブで、どんな苦境をも跳ね除けて力強く生きようと魂の叫びをこだまさせるアーティストの生き様に胸打たれるビジネスパーソンは私だけではないはずだ。
LuckyFMでは、7月23-24日にCreepy Nutsも出演するLuckyFM Green Festivalを国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)で開催します。チケット絶賛発売中です。