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学ぶ人が幸せになる、世界最先端の21世紀型教育とは――『新・エリート教育 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?』

投稿日:2022/05/31

これまでのご自身の教育であれ、お子さんがいらっしゃる方はその現在進行中の教育であれ、教育の現状・課題に対しては、多かれ少なかれ誰もが思うこと・感じることがあるのではないでしょうか。

日本の教育への処方箋 「ホール・チャイルド・アプローチ」

本書の著者はその序章で「日本の教育は、子どもたちの幸せな人生につながっているか?」と問うています。この問いには子供の学校教育のみならず、社会人の学び直し(リカレント教育)も含まれています。言い換えれば、性別・年齢等の属性の違いに関係なく、学ぶ人誰もが幸せになることが教育に期待されている本来の役割だと言えます。しかし、国内の学校・教育機関は現実的にその役割を十分に果たせているでしょうか?
残念ながら、そうとは言い難い現状があります。子供も大人も学力絶対主義にいまだ陥っており、ペーパーテストでの評価・採点にその都度一喜一憂しているのが多くの日本の教育現場の実態であると言えるでしょう。

そんな日本教育の現状に対して参考になるのが、「ホール・チャイルド・アプローチ(Whole Child Approach)」という21世紀型の主に米国発の新たな教育手法です。本書では、海外の先進事例を主に取り上げながら(とは言え、国内の動向にも一部触れつつ)、個人の興味・関心を基にその心(ハート)と身(ボディー)と頭(マインド)をトータルにバランス良く育成するこの「ホール・チャイルド・アプローチ」を提唱しています。
この手法が活用される例としては、アメリカの公立先端モデル校のハイ・テック・ハイ(High Tech High)や、今や世界を代表するオンライン難関大学のミネルバ大学(Minerva Schools at KGI)などがあり、本書でもこうした学習者が自律的に学ぶまさに画期的な教育事例を幾つも具体的に紹介しています。

VUCA時代に求められる理想の人材とは

「ホール・チャイルド・アプローチ」が目指す理想の人材とは、著者によれば「自らの得意分野や個性を磨き、存在しない世界を妄想して、各国の仲間と協働しながらのびやかに新しい価値を生み出す創造性にあふれたリーダーシップを発揮する人」=「クリエイティブ・リーダー」なのだと言います。また同時に著者は、そうした人材こそが書名にあるVUCA(先行きが不透明で将来の予測が困難な)時代を生き抜く「新・エリート」だと結論付けています。

その理由・背景としては、このVUCA時代において主体的な思考・行動を行うに当たっては、学力以上に自己調整力(外部の誘惑に対して自身の感情・行動を律してコントロールする力)・やり抜く力(GRIT)等のいわゆる「非認知能力」がより一層重要になるからです。ホール・チャイルド・アプローチを実践する教育機関が、学習者中心の学びに取り組むのも、ただ学校に留まらず、むしろ実社会でこそ内発的な動機を基に創造的に考え自律的に動く人材育成の手段・方法が求められているからです。言い換えれば、人工知能(AI)等の技術革新による産業構造・就業構造の一大変化を受けて、定型的かつルーチンな仕事はAIに次々と奪われて、非定型かつクリエイティブな仕事が人間には最終的に残る中で、そうした仕事に求められる知識とスキルを今から確実に身に付けることが必要なのです。

この機会に本書をぜひ一読した上で、あなたにとっての教育が意味することを改めて考えてみませんか?あなた自身のためにも、あなたの子供たちのためにも。

新・エリート教育 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?
著者:竹村詠美 発行日:2020/7/23 価格:1,980円 発行元:日本経済新聞出版

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