3/8は国際女性デーです。1908年にニューヨークで行われた女性の労働条件の改善と参政権を求めたデモを起源としたこの記念日は、女性の生き方を考えるきっかけとなっており、更に諸外国では3月を「女性史月間」と定めています。
日本のビジネス環境における男女平等は、進んではいる一方、まだ途上にあります。現在、女性が直面している最大の課題や、それを克服するためにはどんなことが必要でしょうか。グロービス・マネジメント・スクールやグロービス経営大学院の女性講師に連載で話を聞きながら、日本において働きながらMBAで学ぶ女性へのメッセージも寄せてもらいます。第3回は、グロービス経営大学院でテクノベート・ストラテジーなどを担当する小川智子です。ロンドン大学の大学院における、変革できる日本の組織・リーダーシップのあり方の研究経験や、長い講師経験の中での多くの受講生との対話をふまえたメッセージを送ります。
※本稿は、以下GLOBIS Insights掲載の記事をもとにしています。
<Japanese Women in Business: How to Advance Your Career Despite Inequality>
「多様な人材が最大限パフォーマンスを出す」組織文化・制度設計は難しい
ほとんどの日本の組織はダイバーシティの重要性を認識しており、多様な人材の活躍を期待しています。既存制度の見直しなどにも取り組んでいます。一方で、全ての日本企業で、女性が働きやすい制度・組織文化の醸成が進んでいるとはいえません。性別が理由で出世できないグラスシーリングはずいぶん改善されたものの、「女性が働きやすい制度や文化」を掲げる割に、実際には十分活躍できる場がない組織もあるようです。特に、管理職に就いているワーキングマザー(子育てで時間的な制約のある女性)は実感されているのではないでしょうか。
この課題は、女性が働きやすい特別休暇などの「ルール」や管理職割合を含む「KPI」など制度だけに着目すると起こりやすくなります。「自社の”多様な人材”とはどんな人たちか」「彼らはどのような働き方をしたときパフォーマンスが上がるか」「多様な人材をどのように組み合わせて組織で最大限の成果を出すか」を徹底的に考察したうえで、組織全体の業務ルールの再構築や新しい文化醸成をする必要があります。ただ、人は変わるのを好まない生き物。今、多様な人材がいなくても当面はうまく機能している組織にとって、自分達のやりやすい制度や文化を変えるのは難しい、というのはあるようです。
今の状況をチャンスと捉え、自ら変えていく
そんな環境では、MBAを取得された女性の皆さんこそ、より良い職場環境を”自ら”作ることができるのではないでしょうか。というのもMBAを取得された方であれば、経営を学び、ビジネススキルを得ており、加えて人的ネットワークがあるので、成果を出しやすいからです。そして、成果を示しながら自らロールモデルとなり、経営視点で女性にとってさらに働きやすい労働環境の提案をすることができます。提案を受けた組織のリーダー達も改善イメージを持ちやすいでしょう。
ただ、すべての組織が、女性が個人で成果を出し、さらに働きやすい組織を提案したとしても、その通り変わるわけではありません。業績を評価されなかったり、働きにくさを感じたりしたら、より良い組織を探すのも重要です。これはジェンダーに関係なく言えることですが、ある組織で能力が発揮できなくても、他の組織では、あなたの能力を求めているはずです。