藤原和博(ふじはら・かずひろ):教育改革実践家、杉並区立和田中学校・元校長
1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェロー。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年〜11年、橋下大阪府知事ならびに府教委の教育政策特別顧問。『人生の教科書[よのなかのルール]』等、著書多数。藤原和博の[よのなかnet]、Twitter
藤原和博さんのニュースピックアップ
1. 「徳島からシリコンバレーを」 約20年ぶりに高専新設
注目している。仕掛け人はSansanの寺田親弘社長だ。起業家の学校づくりというとホリエモンこと堀江貴文氏が主宰する「ゼロ高」のようなフリースクールが多いのに対し、本校は日本の学校教育システムに則って5年間教育を行う高専。徳島県の神山町で全寮制というのもすごい。今後はITやデザイン業界で活躍する方々が続々応援に集まるだろう。大学への編入も可能だし、卒業後はIT業界にそのままスカウトされるケースも出てくると思う。
2. 5年で生徒数約10倍 フリースクール「N高」のいま
生徒数は系列のS高と合わせてすでに2万人超と、世界最大級の高校になった。今後もKADOKAWA社長の夏野剛氏らがさらに規模を拡大させると思う。フリースクールというと不登校の子が最後に行くようなイメージがあったかもしれない。しかし、今は「この分野を探求したい」という積極的な理由でN高を選ぶ子が増え、国内外の大学にも多数の進学者を輩出している。才能がありながら従来の一斉授業にはまらなかった子もどんどん伸ばせると思う。
3. 中学生の通信教育満足度 1位は『スタディサプリ』
『スタディサプリ』の利用者は社会人を含めるとおよそ200万人。作家の佐藤優氏も「世界史の勉強をし直したりするのにもスタディサプリが一番」とおっしゃっている。情報や知識の学びは今後もどんどんオンライン化していくだろう。一方で先生の役割はというと、たとえば経済的に厳しくオンラインで救えない子をサポートしたり、生徒同士の学び合いをファシリテートしたりするような方向に変化していくのが未来の姿かと思う。
4. 携帯端末の学校持ち込み、教育現場の対応は?
私は奈良市立一条高校の校長だったとき、個人のスマホをすべて学校に持ちこませて授業に活かした。それで生徒から教師へのフィードバックが生まれるからだ。授業で手を挙げるように言われてもなかなか挙がらないと思うが、LINEのノリで意見を書くように言えば今の子はあっという間に意見を寄せてくる。思考力、判断力、表現力を高めるために必要なのは自由に意見を言わせること。そのためにもタブレットでなくスマホがいい。
5. 正解のない時代で、本当に良い会社を見極める指標
成熟社会における就職先選びの基準は昭和・平成と大きく変わった。大切なポイントは5つ。まずは風土の良さ。それがあれば業種はそれほど問わなくても良いと思う。2つ目はデータを生み出し、編集し、価値を生み出すデータドリブンな会社であるかどうか。3つ目は“バッターボックス”に数多く立たせてくれる会社で、4つ目は採用にリソースをかけている会社。そして最後は副業を認める会社だ。副業禁止は時代に合わない。
【スペシャルトーク】希少性を高める「情報編集力」
スペシャルトークでは、成長社会で大切とされてきた「情報処理力」から、成熟社会で重要となる「情報編集力」にシフトし、自らの希少性を高めていくことの大切さについて、藤原和博さんに掘り下げていただいた。
成長社会における学校教育は、速く正確に正解を当てることのできる「情報処理力」の高い人材を大量生産していた。しかし、唯一の正解がない成熟社会では希少性の高い人材にならなければいけない。若い子には「君自身をレアカード化する」という表現を使っている。レアな存在になれば皆に注目され、人々の助けを得て夢やビジョンを実現しやすくなり、人生の豊かさが広がるからだ。
そのためには意外なもの同士をかけ算して価値を生み出す「情報編集力」が不可欠になる。たとえば20年以上前にアロマセラピストはいなかった。アロマの専門家とセラピストは数多くいた。でも、あるとき、その2つをかけ算して「アロマセラピスト」という旗を揚げた人がいたわけだ。それによって新しい価値が生まれていった。
僕自身は、まずリクルートで営業とプレゼンを1万時間やって1つの軸ができた。だいたい1万時間をかけると100分の1の人材になれる。ただ、営業は全国にごまんといる。そこで次はマネジメントを経験し、2つの100分の1を掛け合わせてレア度を1万分の1に高めた。その後、47歳にして都内で義務教育初の民間校長になり、再び5年間、1万時間をかけて100人に1人の校長になった。そうして3つの100分の1を掛け合わせることで、僕の希少性は100万分の1にまで高められたわけだ。
僕の場合もリクルートに入ったのは事故みたいなものだったし、20代で最初のキャリアはあまり選べないと思う。でも、風土が悪いといった話でもないかぎり、まずはそこで1万時間頑張って軸をつくるのがいいし、その次も1つ目の軸に近い領域でいいと思う。ポイントは3つ目に意表をついたキャリアを選び希少性を高めること。3つの軸でつくる3角形の面積を希少性の高さとすると、3つ目の軸を選ぶとき、勇気を出して大きく踏み込んで面積を広げて欲しい。
60代の定年までに8万時間働くとすると、現在の平均寿命でも定年後の余暇は8万時間。つまり2つの人生を生きることになる。それなら人生100年時代、2回目は組織に守られた働き方でない人生を選ばないといけない。そのためには45~55歳頃までに希少性を高めること。そうすれば人が集まって応援を得られるようになり、会社から離れても現役で活躍し続けられると考えている。
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