部下のモチベーション、自己流でなく「理論」で高める

今年11月発売の『グロービスMBAミドルマネジメント』の第3章1節から「動機づけの理論」の一部を紹介します。

部下を動機づけ、モチベーション高く働いてもらうようにすることはマネジャーの仕事の中でも最も優先順位の高いものの1つと言えよう。その一方で、動機づけの理論をしっかり学んでいるマネジャーは必ずしも多くはなく、自己流で部下とやり取りしている人が圧倒的に多いだろう。動機づけ理論は組織行動学の中心的なテーマの1つであり、提唱されている理論は優に数百はある。それらをすべて知ることは現実的ではないが、古典的なマズローの欲求5段階説などに加え、比較的近年の著名な理論をある程度押さえておくことはマネジャーの大きな武器となるだろう。それらを踏まえたうえで、部下一人ひとりの個性に合わせ、動機づけを行うのが優れたマネジャーの条件だ。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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●期待-価値理論

J.W.アトキンソンが提唱した期待-価値理論を特に学習課題への取り組みの観点から発展させたのがメリーランド大学のアラン・ウィグフィールドである。彼は以下の4つの要素が、課題に取り組む人々の姿勢を決めると考えた。

・内発的価値:その課題に取り組むことが楽しいか
・実用的価値:その課題に取り組むことが役に立つか
・達成価値:その課題に取り組むことが自己実現につながるか
・コスト:その課題に取り組むコスト(必要な努力や機会費用などを含む)の大きさはどのくらいか

この理論に基づくと「コストが小さく、楽しめて役に立ち、自己実現にもつながる課題」に対しては人々は前向きになると考えられる。これも非常に納得性が高い。ただし、実際の仕事の中では、そうした仕事はなかなかない。とはいえ、マネジャーがそれをうまく見つけ、部下に適切な頻度で与えると、部下のモチベーションは高まると考えられる。

●達成目標理論

達成目標理論は、ある課題に取り組む際の動機や、その課題の質に注目した理論である。初期の達成目標理論の研究者であるスタンフォード大学のキャロル・ドゥエックは、達成目標には、学習目標と遂行目標の2つがあるとした。学習目標は、自身の能力を伸ばしたい、新しいスキルを身につけたいといった目標である。一方、遂行目標とは、自分の能力に対して肯定的な評価を得ることにつながる目標である。学習目標は、現在の自身の能力に関する自信がどうあろうと、積極的にそれに取り組む。一方、遂行目標は、能力への自信が高い場合は積極的に取り組むものの、低い場合にはその逆になると考える。

後にイリノイ大学のキャロル・エイムスとジェニファー・アーチャーは、ドゥエックや他の研究者の理論を統合し、学習目標を「熟達目標」と呼ぶようになった。さらにアンドリュー・エリオットは、遂行目標を「近接的な遂行目標(自分の有能さを示したい)」と「回避的な遂行目標(自分の有能さを否定されたくない)」に分け、熟達目標と合わせ3分類に整理した。

マネジャーにとってこの理論からの示唆は、「人は、自分の有能さを否定されそうな課題には積極的には取り組みたがらない」ということだろう。当たり前のことではあるが、業務のアサインメントなどを考える際や、部下にどのような支援が必要かを考える際などにピントになるだろう。

●自己決定理論

自己決定理論はロチェスター大学のエドワード・デシとリチャード・ライアンらによって提唱された理論である。ます、人間が自然に持つ以下の3つの欲求に着目する。

・自身の「有能さ」を証明したいという欲求
・周囲との「関係性」を良いものにしたいという欲求
・自己の行動を「自律性」を持って自分自身で決めたいという欲求

そのうえで以下の5つのステップを経て、内発的動機によって人は動くと考える。

・外的調整:指示やそれに伴う報奨や罰によって動く
・取り入れ:義務感によって動く
・同一化:自身で感じる必要性によって動く
・統合:積極的に動く
・内発的動機づけ:やりがいを感じ、楽しんで動く

内発的動機に近づくほど、人は強く動機づけられており、かつ高いパフォーマンスを残すと考えるのがこの理論である。そのベースとなるのは、他の理論ではあまり触れられなかった、自律的に自分で決めたいという欲求への着眼である。

グロービスMBAミドルマネジメント
著者:グロービス経営大学院 監修:嶋田毅 発行日:2021/11/30 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社

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