今年7月発売の『入社1年目から差がつく 問題解決練習帳』から「Lesson16 決めるために準備する」の一部を紹介します。
問題解決に向けた情報を集めるためにアンケートを用いることはよくあることです。そしてアンケート結果と、実際に起きている事柄を結び付けて分析することで、問題の核心に迫れることも少なくありません。いきなり複雑な分析をしなくても、簡便版の分析でもある程度実態に迫れることが多いので、非常に重宝されます。
さらに、アンケートの質問項目などを工夫すると、さらにスピーディにアクションがとれることがあります。問題解決はスピードが命という部分が大です。アンケートの質問項目などは往々にして安易に設定してしまうことがありますが、ちょっとした工夫でその効果は大きく変わってくるのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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食事は、高評価をつけてくれている人ほどリピートしていることがわかります。一方で、施設は高評価でもリピートしていない人が半数以上います。逆に低評価でもリピートしてくれている人が多くはないですがいます。
施設に対する評価は、直接的にはリピートにはあまり関係がなさそうです。したがって、食事と施設とどちらの方がリピートに効いているかという点では、食事の方が効いていそうと考えることができそうです。
このように、要素の中でも、より高い評価をつけてくれた人がリピートしてくれている項目と、高い評価をつけてくれていても必ずしもリピートにはつながらない項目というのが存在しそうです。
グラフでいうと、左図のように、リピートしている人が高い評価をつけている項目と、右図のように、リピートしているかどうかと点数には関連性が見られない項目があるということです。数値的によりしっかりと分析をするためには、食事とリピート、施設とリピートについての相関係数を算出してみるといったこともできます。ただ、並び替える、グラフにするといったことでも傾向は読み取れます。
先に説明をしたように、評価結果だけから基準を設け、どの項目に手を入れていくかということを考えることも勿論できますが、「アンケート」だけで結論を出す必要もありません。業績の向上にダイレクトにつながる項目を決めるために、業績向上につながる「データ」(今回の例では、「リピートしているか」)と「併せて」評価をするといったやり方を押さえておきましょう。
さて、その上で最後に、もう一度アンケートに戻っておきましょう。今、どの項目に手を入れればいいかを考えるために、リピートの情報と組み合わせて評価をしようという説明をしましたが、このアプローチだと、実際にリピートしたかどうか、その情報が集まらないと評価ができないことになります。少なくとも、数カ月経たないと確認ができない可能性があります。
そこで、アンケートの段階で完結させられないかということを考えてみましょう。
例えば、アンケートの最後に、「次にまた来たいか」といった要素を入れるということもできます。つまり、未来の予定、意思を問う設問を設けることもひとつの工夫として考えることができます。実際に本当に来てくれるかはわかりませんが、少なくともどのような意向をもっているかどうかを確認することはできます。「家族や友人に薦めますか」といった項目を入れてもよいでしょう。
アンケート項目も現状の評価に関する要素だけにとどめる必要はありません。未来へ向けた意思を問う設問を組み合わせて設計することで、何に手を入れるとよいのかについて、付加的な情報を得ることができます。決めるためにどんな工夫ができるかについても色々と考える習慣をつけるようにしましょう。
『入社1年目から差がつく 問題解決練習帳』
著者:グロービス 執筆:岡重文 発行日:2021/7/30 価格:1760円 発行元:東洋経済新報社
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