今年6月発売の『グロービス流 あの人頭がいいと思われる 考え方のコツ33』から「16.モデルで考える①」の一部を紹介します。
学者にとって、仮説的に「モデル」を構築し、そのモデルが実際に成り立つのかを検証することは、彼らの仕事そのものともいえます。有名な「イノベーションのジレンマ(破壊的イノベーション)」のようなキャッチーなイラストも同時に提供できれば、人々の記憶にも残りやすいですし、エッセンスを忘れたときにも思い出しやすくなります。モデルはまた、そのエッセンスを横展開できるというメリットもあります。たとえばシェアビジネスのモデルは、ライドシェアのようなビジネスだけではなく、エア・ビー・アンド・ビーのようなユニークなビジネスにも応用されました。「自分は学者じゃないからモデルを考えるなんて」と思われる方もいるかもしれません。たしかに独自のものを考え出すのは大変ですが、何かの事象を見たときに、「これってあえてモデル化したらどう表現できるか」ということを思考の癖として行うだけで、世の中の見え方は随分と変わってくるものです。「あの人の視点はユニークだ」と思われたいのであれば、ぜひそうしたモデル思考にチャレンジしてみるといいでしょう。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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まずは言葉でモデル化を
「自分は学者ではないし、そんなモデル化なんて簡単にできないよ」と思われる方も多いかもしれません。実際、このレベルのモデル化をできる人間は多くありません。しかし、モデルは図のようなものでなく、文章のみでも構わないのです。
「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する」
「官僚機構は自己肥大化する」
「事件は構造をあぶりだす」
といったよく知られた言葉も、実はモデル化の一種です。あるいは「情けは人のためならず」に代表される有名な諺も、ある意味でモデルといえます。要は、多くの事象に共通するエッセンスを、図示化できないまでも言語化できればいいのです。
そこで必要になるのが、事象の共通点に着目することです。まずは、「○○は△△である」あるいは「◇◇は☆☆する」といえないか考えてみるといいでしょう。たとえば、「規制はビジネスチャンスを生み出す」などです。
すべての事象に当てはまる必要はありません。まずはN=3で構わないので、文章として普遍性がありそうなことをいえないか考えてみましょう。
共通点に着目し「So What?」を問う
モデル化にあたっては、単に皆が思いつくことや表層にとどまらず、一歩深い洞察をし、言語化できれば価値が増します。
たとえば、「組織文化とは○○のための装置である。○○を埋めよ」と問われたときに、皆さんは何と答えられるでしょうか。「組織の意思決定のスピードを上げるための装置」や「組織の一体感を高めるための装置」「新人を会社に染める装置」といった表現ができそうです。これはこれで間違いではありませんし、組織文化の効用としてよく指摘される点です。
ただ、ここでもうーひねりしてみましょう。例として組織文化に合わない人材に着目します。彼/彼女はどういう行動をとるでしょうか? 企業規模や業界の人材の流動性などによっても変わってきますが、組織文化に合わない人は、非常に居心地悪く感じて辞めてしまうことも多いでしょう。
この部分に着目すると、「組織文化とは排除のための装置」あるいは「組織文化は人材の選別装置」といった、やや突っ込んだモデル化もできるわけです。このモデルの定義を思いつけば、個性的な組織文化は、自社に合う人材の比率を上げることにつながるシステムとして機能させられることが分かるのです。
『グロービス流 「あの人、頭がいい! 」と思われる「考え方」のコツ33』
著:グロービス 発行日:2021年6月16日 価格:1,650円 発行元:ダイヤモンド社