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会議の機会費用を意識していますか?

投稿日:2017/04/01更新日:2019/04/09

『グロービスMBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編』から「会議運営を俯瞰的に眺める」を紹介します。

会議は多くのビジネスパーソンにとって日常的なイベントです。しかし、それゆえに実は難しいコミュケーションの場であることを我々は忘れてしまいがちです。会議は通常、多くの人間が集まるので、仮に30分が無駄になれば、それだけ参加者全員にとって機会費用が生じ、その時間を使ってできた他の仕事の分、組織の生産性は低くなってしまいます。事実、1時間の予定の会議があったとして、参加者全員が時間通りに揃い、フルに1時間効果的な議論を行えるということは稀でしょう。会議は、上手に行えばスタッフの意識合わせや良い意思決定につながりますが、それが実現できている組織は少なくありません。だからこそ、会議というものの特徴を理解したうえでそれを上手に運営し、生産性を上げることのできる組織は強いのです。改善余地が大きいという意味で、会議は「宝の山」とも言えるでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇ ◇ ◇

会議運営を俯瞰的に眺める

まず必要なのは、ここでも会議という営み全体を構造化して俯瞰し、自分がいまどの位置にいるかを理解するとともに、踏むべきステップを飛ばしていないか確認することだ。そのためには、図に示したようなプロセスを描くと効果的だ。ここに示したように、会議運営は大きく3つのプロセスに分解でき、さらに下位のサブステップにブレークダウンできる。

①の事前準備は、通常、他のコミュニケーションほどには意識されておらず、忘れられがちだが、生産的な会議を行うためには不可欠である。第4章で説明した交渉などと異なるのは、情報を収集し、相手の関心や自分のミッションを構造的に把握すること以上に、参加者の意識をそろえることに力を割かなくてはならない点だ。

②の実行については、さまざまなテクニカルな手法以上に、我々は、イシュー(論点)を意識し続けることや、会議の内容を構造化するといった、論理の構造化全般に通じるポイントを重視している。これは、特に意思決定のための会議の場合、最終的な結論を出すことは、会議を通して最終結論をサポートする論理の構築をしていることにほかならないからだ。

また、②については、各ステップとは別の観点である「集団ゆえの非効率に立ち向かう」という点からも理解を深める必要がある。

③のフォローアップも、他のコミュニケーション活動同様、忘れられがちであるが重要なポイントだ。会議は手段であって目的ではない。そこで決定された事項が実行に移されてこそ意味がある。そのために必要な努力をおろそかにしてはならない。

なお、複数の人間が共同して意思決定をしたり、それを支える論理構築をしていくという点は、実は第5章のコーチングと共通する部分が多い。一見似ていないように見えるコーチングと会議であるが、その根本にはやはり、クリティカル・シンキングの姿勢やテクニックを用いて正しく考える(あるいは考えるように誘導していく)ことの必要性が横たわっているのである。

会議の特徴を理解する

会議の準備や実行、フォローアップといった各ステップについて議論する前に、まずは会議の特徴について理解しておく必要がある。ここでは、典型的な4つの特徴について確認しておく。

(1)    幾何級数的にコミュニケーション・ルートが増していく
会議の第一の特徴は、幾何級数的に増していくコミュニケーションの複雑さだ。下図を見てほしい。会議の参加者が増えるに従い、コミュニケーション・ルートが飛躍的に増加することがわかるだろう。コミュニケーション・ルートの数は、そのまま認識ギャップの数であるともいえる。1対1のコミュニケーションであれば2人の間の認識ギャップしかなく、それを埋めれば事足りるわけだが、会議ではこの認識ギャップが同時多発的に多数発生するのである。

(2)    コントロールしきれない状況が多発する
ルートの多様化、複雑化に加え、コミュニケーションそのものが多対多で行われることから、自らが予期しない、または関与しえないインタラクションが発生し、自分の力ではコントロールしきれない状況が多発するのも会議の特徴である。

たとえば、自分とは関係のないところで、参加者の2人が口論を始めてしまい、会議全体の雰囲気に水を差したり、参加者の思考パターンに枠をはめたりといったことが起こってしまう。往々にして拡散しがちな会議をどのようにコントロールしていくかが、大きな課題となる。

(3) 形態のフレキシビリティが小さい
時間的・空間的制約が大きいという特徴もある。多数の人間の時間をタイミングよく合わせるのは、参加人数が増えるに従って、あるいは参加者の役職が上がるに従って、至難のわざとなる。また、そもそもある会議に適したスペースを毎回押さえられるわけでもない。「今日の会議室は狭いな」あるいは「プロジェクターがなくて不便だな」といった経験は、誰もが持っていることだろう。

その結果、会議の時間が限定されて議論の不足を招いたり、前回の会議から間が開きすぎたりして議論に熱が入らない、あるいは物理的に議論に集中できない、などの結果を招くことがある。

(4) 必要な参加者が常にそろうわけではない
上記③とも絡むが、他の用件が入るなどして会議に参加できなくなることもある。何回かにわたる会議では、1回休むと情報や意識レベルの格差が生まれてしまい、会議の流れに乗れなかったり、疎外感を覚えてモチベーションが下がったりするおそれもある。

会議を生産的なものにするためには、こうした特徴を理解し、それがもたらす悪影響を回避・最小化するような仕掛けを準備しておくことが不可欠である。
 

 

『グロービスMBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編』
グロービス経営大学院  (著)
2800円(税込3024円)

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