世界の動きや変化の「真実」を知りたい――これが本書を手に取った大きな動機だ。混迷の時代と言われる中、我々は何を信じて日々行動していくべきなのだろうか。
英国のEU離脱、欧州諸国への難民問題、米国におけるドナルド・トランプ氏の大統領就任とその後のドラスティックな政策の数々…。我々日本人は、
「クレムリン・メソッド」とは、
著者である北野氏は、国際情勢の中で起こっている全てのことは、起こるべくして起こっているものであり、「主役」「ライバル」「準主役」となりうる国々が世界の中で覇権国家となりうるために、意図的に「情報戦」「経済戦」そして「実践」を仕掛けていると言う。
さらに、世の中の情報は個々の国々が国益の為にすべて操作しており、その裏ではその国の実権を握るエリートたちがあらゆる情報をプロパガンダとして、国民をコントロールしていると言う。伝達される情報もそれぞれの国に存在する情報ピラミッドによって制限され、その中で我々を信じ込ませているのだ。しかしながら、日本国民にはそのような情報ピラミッドは存在せず、日本は英米情報ピラミッドに偏った情報以外が入って来ないようになっている。
一見、胡散臭い話のようにも聞こえるが、著者がロシアを拠点に数十年以上活動する中でのリアルな経験と事実から得たことであり、また筆者なりの国際情勢を捉えるメソドロジーは、真実を追求するものであると言える。
我々日本国民は、国際的な地位を模索し、多くの情報を取り得ているような幻想を持っているかもしれない。しかし、本当の真実から未だ遮断されているのであり、政治、経済、社会などあらゆる側面から危機感をもって、対峙すべきであると著者は警笛を鳴らす。
世界の状勢は我々が知り得る以上に複雑で、難解になってきている。それは単純にテクノロジーが発達してきているからだけではない。多くの国々が覇権を得るため、国益をもたらすために意図して動いているということを認識することが必要だ。そこには日本国民として、誠実であることとは別に、したたかさが必要だということだ。
ビジネスの世界でも同じではないだろうか。海外への進出を掲げる多くの日本企業が足踏みをしている姿を目の当たりにするが、時にはしたたかに行動することが必要不可欠だ。そこに向き合わないで前進することは、経済的な側面でも大きな代償を払うことになるだろう。
企業が海外の企業とビジネスを行う上では、様々な規制やルールが存在する。それがなぜ存在するのか、その背景にはどのような政治的意図や国策が存在するのか、を知ることが極めて重要になってきている。それをまだまだ大丈夫だ、と思っているところから抜け出さなければならない。
決して簡単なことではないが、世の中の真実をつかむ上で、本書は新たな角度から示唆を与えてくれるに違いない。
日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理
北野幸伯 (著)
集英社インターナショナル
1600円(税込1728円)