どうすれば会議を効果的に進められるか――この悩みを抱える人はとても多くいるでしょう。事実として、仕事時間の大半は会議で埋め尽くされている人も多いはずです。不要な会議はなくしていくべきですが、もう一方で会議の運営方法そのものを学んでいく必要もあります。
典型的なイケてない会議というのは、ゴールが不明確のまま会議が進み、抽象的な発言やアイディア合戦が繰り広げられ、結局時間切れで何も決まらずに終わってしまうパターンです。こういう会議は、どこかフワフワしていることが多いので、私は「空中戦の会議」と呼んでいます。
この「空中戦の会議」では、声が大きい人が制空権を持ちます。物理的に声が大きいということではなく、影響力が大きいとか、立場が高い、はっきりと物を言う、といった人です。空中戦の会議は、そのような「声の大きい人」の独壇場になります。テーマも中身もフワフワしているので、「言ったもん勝ち」だからです。しかし、当然ながらこの手の議論は、大抵中身が深まりません。声の大きい当人だけは「しっかり議論して決めたつもり」。しかし参加者たちは何が決まったのか、どうしてそう決まったのか分からない。単に聞き返せないだけで、納得していないのです。したがって、結果的には会議を繰り返しながらも、物事はほとんど進まない、という状況に陥ります。
「地上戦の会議」とホワイトボード
そこで、「声の小さな人」が体得すべきは「地上戦」への持ち込み方です。ここでいう「地上戦」というのは、「空中戦」の逆で、
- その会議で議論すべき大きな問いが具体的に押さえられていること
- 大きな問いに答えるための論点がはっきりしていること
- 論点に対して、感情や主張と根拠(事実)を切り分けて語られていること
- 導いた結論が何か、どうしてそれが決まったのか、が把握できていること
といったことが該当します。
そして、この「地上戦」で戦うための武器というのが、ホワイトボードです。相手の声の大きさに効果的に対抗するためには、ホワイトボードで論点や意見を可視化して整理していくことが非常に大事です。
ホワイトボードを単なるメモ書き程度に考えている人もいますが、使い方次第でホワイトボードは会議を間接的に支配できる強力な武器になります。会議の際に何か明確に見える文字やコンセプト図があると、なんだかんだ言って目を向けてしまいますよね。そして、いつの間にかみんなでホワイトボードを囲んで議論していることがある。ホワイトボードには、「思考の共通的な下敷き作り」という大きなパワーがあるのです。
何をホワイトボードに書くか、どこに書くかはホワイトボードの前に立つ人が自由に決められます。だとするならば、どんな意見でも丁寧に書ききる、というような「書記」の仕事をしてはいけません。意図を持って「何を書くのか」「どこに書くのか」ということを決めた方がいい。
会議中に答えを出さなくてはならない「問い」を正しく言葉にする。そしてその問いに対してどういう論点をクリアすべきかを考えて、ホワイトボードにおけるスペースの割り振りを決める。その上で、実際に会議が始まった段階では、論点から逸れた意見などは、敢えてスルーする、もしくはホワイトボードの隅っこに目立たないように書いていく。そして、本当に議論すべきことを中心に書いていけばいいわけです。
「間接的に会議を支配する」というのはまさにこのことであり、本当に力のある人は、立場が弱くてもこのようにして会議で主導権を握っていくのです。若手が書記としてホワイトボード係に任命されるケースも多いと思いますが、その際は「会議を支配できてラッキー」と認識すべきです。
リスクのないところで冷や汗をかいておこう
しかし、ホワイトボードの前に立ったからと言って、効果的に会議をコントロールできるわけではありません。どうしたら、いざという場面でホワイトボードを効果的に使えるようになるのでしょうか。これは一言で言うならば「場数」です。「私は下っ端だからホワイトボードの前に立つのは無理です」という人もいますが、下っ端の時にこそこれを率先してやっておかないと、いざという時に空中戦でしか戦えないリーダーになってしまいます。
グロービスの中においても、授業中にグループディスカッションを散々やるわけですが、とにかく慣れていない人ほどホワイトボードの前に立つように、と勧めています。前に立つと冷や汗かきます。「短時間でまとめなくてはいけないのにみんな好き勝手なことを言っている・・・どうしよう・・・」という心境になるわけです。しかし、このようなリスクのない場面で冷や汗を繰り返し経験しておくことによって、いざという時に前に立っても安心できるだけの心構えが身につくのです。
職場で会議ばかりが増えてお悩みの方、是非地上戦での勝ち方を身につけてみてはどうでしょうか。
※本記事は、FM FUKUOKAの「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容を、GLOBIS知見録用に再構成したものです。音声ファイルはこちら>>
イラスト:荒木博行
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