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【2017年への提言】日本型成果主義はもう古い、パフォーマンス・マネジメント大転換へ(林恭子)

投稿日:2016/12/23更新日:2019/04/09

2017年はどのような年になるのか、どのような年にしたいのか――。グロービス/グロービス経営大学院のリーダー陣10人が、それぞれの視点から展望と提言を語る。(企画・構成: 水野博泰=GLOBIS知見録「読む」編集長)

2017年、日本企業の人事評価制度は大きな転換点を迎えるのではないだろうか。最大のテーマは「日本型成果主義」の抜本的な見直しである。

成果主義が日本の人事制度に組み込まれ始めたのは、20年くらい前のこと。それまでは「年功序列」でうまくいっていたのだが、バブルが崩壊し、成長が鈍化した時、団塊の世代にあてがう管理職ポストがないという現実に直面する。あわてて成果主義を取り入れて、能力が高くない人、結果を出さない人にはポストは与えられないのだという新しい理屈がゴリゴリと押し通されるようになったのである。

だが、20年やってみて、日本企業の成果主義はどうなってきただろう。

企業の人事担当の方に話を聞くと、「精緻な根拠に基づく点数付けが必要なので、昨年、評価項目を作り直した」「管理職が評価点数付けをうまくできないので、評価者研修をさらに厚く充実させる予定」「導入したものの形骸化しているので、さらに指導を徹底する」などと、いまだに導入や定着への取り組みにエネルギーを割いているようだ。

しかし一方で、この成果主義の輸入元である米国では、全く逆の現象が起きている。精緻なレーティングやランク付けによる年次考課なんて止めてしまおう、というのである。一体何が起こっているのだろうか。

背景には、テクノベート(テクノロジー+イノベーション)の影響がある。ネットやテクノロジーの進化によりビジネス環境の変化はますます早く、アジャイル(俊敏性)な動きが求められている。ビジネスにおける多様性や複雑性も増すため、社内の人材を競わせるよりも、いかに協力しあって組織として早く良き結果を出せるかが必要になってきた。多くの企業では、MBO(目標管理制度)で年間の目標を設定し、振り返り、精緻に評価し、翌年の給与や昇進・昇格に反映しているわけだが、この急激な変化の時代に「1年」や「半年」という時間軸ではもはや間に合わないのだ。

また、精緻な人事考課により点数をつけられ、A、B、C…とランク分け(レーティング)された社員たちは、実は成長や学習への意欲を下げているという研究結果もある。これでは協働をかえって阻害してしまう。不平・不満が出ないように、説明責任を果たせるように、その評価をもっともっと精緻にしていこうとする人事部の試みには、本当に意味があるのか。個人の成果だけでなく、いろいろな人と協働して物事を進めていくということ自体を評価すべきではないのか。そもそも、パフォーマンス・マネジメントの最大目的は、すべて働く人のモチベーションを高く高く押し上げることだったのではないか――。

というわけで、日本が成果主義のお手本にしてきた米国では、既に評価制度の大幅な見直しが始まっている。格式ばった年次考課をやめ、目的に応じた、柔軟なタイミングでの、より頻繁な上司・部下コミュニケーションを促進する。評価の精緻さを追求するのではなく、個人のモチベーションを上げ、パフォーマンスを発揮してもらうためことを重視したフィードバック・スタイルに転換する――。大手企業の多くが新たなパフォーマンス・マネジメントの在り方を真剣に考え始めている。

米国に倣えと言うつもりはない。ただ、20年前に日本企業が取り入れた「米国型成果主義」は大きく変貌しようとしている。幻を追い続けるようなことのないように、あえて警鐘を鳴らしたい。

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