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【2017年への提言】CSVが日本企業のグローバル化を後押しする(中村知哉)

投稿日:2016/12/26更新日:2019/04/09

2017年はどのような年になるのか、どのような年にしたいのか――。グロービス/グロービス経営大学院のリーダー陣10人が、それぞれの視点から展望と提言を語る。(企画・構成: 水野博泰=GLOBIS知見録「読む」編集長)

グローバルビジネスに取り組む日本企業にとって、2017年のキーワードの1つは「CSV」だろう。これは、米ハーバード大学の経営学者、マイケル・ポーター氏が2006年に提唱した概念で、Creating Shared Value(共有価値の創造)の略。企業の経済的利益活動と社会的課題の解決を両立させるという経営戦略である。

これまで、多くの日本企業のグローバル化は、進出拠点を増やし、工場を建てたり、現地市場で製品やサービスを売る仕組みを作ったりすることに懸命だった。ところが「面の拡大」が一段落し、各国・各地域における市場により深く入り込んでいくといフェーズに移行しつつある。その際、単に売り上げや利益を拡大することを追求するのではなく、愛される企業、愛されるブランドになって末永くビジネスを行っていくという発想が必要になってくる。必然的に、その市場における社会的課題をビジネスを通じて解決するという「CSV」の考え方に行き着くのである。

この考え方は、まだミドルマネジャー・クラスまで浸透しているとは言い難い。今年、ある企業の研修をシンガポールで行った際に、社会問題に取り組むソーシャル・ベンチャーキャピタルやNPO、NGO、政府系団体に話を聞くセッションを組んだところ、当初は「我々のビジネスと何の関係があるんだ?」という疑問の声が上がったが、半年後の社長プレゼンでは現地の社会課題を理解した良質な提案が相次ぐ結果となった。

日本人の選抜人材と米欧亜の選抜人材の混成だったのも功を奏した。日本人にとっての社会課題は、高齢化、過疎化、財政赤字といったものだが、海外、特に新興国では、電気・ガス、飲料水、教育などが深刻な問題だ。チームを混成にすることで現地課題を肌で感じることができる。

ちなみに、グローバル研修を数多く担当してきた経験からすると、日本人で固めたチームはA~E評価でほぼ「B+」を取る。一方、多国籍混成チームは「A」もあれば「E」もある。個人的な意見だが、これからの日本企業には、後者、すなわちダイバーシティを取り入れ、失敗を認めつつ、「A」を狙っていく姿勢がもっと求められるようになると思う。

さて、海外拠点における社会課題解決のために押さえておきたいポイントが3つある。

(1) 自社の本業に限定せず、その国の社会的・経済的課題を深く理解する。
(2) 社会的課題の解決に対しては、企業単独で取り組むのではなく、他者との協働を前提とする。他者とは、NPO、BGO、政府、場合によってはビジネス上の競合などを含む。
(3) 活動のサステイナビリティ(持続性)を担保する。赤字では続かない。継続するためのお金の流れをしっかり設計する。

「日本は世界の大皿になれる」と言った人がいる。ドギツイ絵柄や色付けはなく、素朴でシンプルだから、西洋料理も中華料理も何でも盛れる。日本企業は国内では既にCSVに取り組んできた実績がある。どんな国でも、どんな国とでも、大皿のように受け入れてパートナーシップを組むというのは、日本企業が得意とするところなのではないか。

CSVの流れは、日本企業のグローバル化にとってポジティブな要因になるはずだ。

  • 中村 知哉

    GLOBIS USA, Inc. President

    一橋大学社会学部卒業。米国ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。同校在学中にGeneral Management UnitのResearch Associateとして東洋哲学のケースを2部執筆。これらケースは現在もハーバード大学経営大学院のMBA Programで使用される。丸紅株式会社入社、アドバンテッジパートナーズの投資関連業務で倒産会社富士機工電子の再建などに携わる。JASDAQ公開の株式会社サン・ライフでは、専務取締役としてアルバイト・パートを含む250名強へのストック・オプション・プログラムの実施など先進的な取り組みを行う。現在は、グロービス経営大学院英語MBAプログラムの責任者として、顧客企業にて数多くのグローバル研修を手掛けると共に、グロービス経営大学院にて日本・アジア企業のグローバル化戦略、企業家リーダーシップなどの教鞭を執る。GLOBIS.JPに、コラム『氣と経営』を連載している。

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