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グローバルリーダーを目指す人へ。大谷翔平より「松井秀喜」に学ぶ、日本人の強みを活かす3つの戦略

投稿日:2026/02/11タイマーのアイコン 読了時間 7分

JICE(一般財団法人 日本国際協力センター)が開催するグローバルリーダーを目指す日本人向けのリーダーシップのワークショップを行った。この内容をコラムにまとめる。

グローバルリーダーにおける「3つの水準」

グローバルリーダーと一言でいうのは簡単だが、恐らく3種類くらいの水準感がある。

分かりやすいので、野球(メジャーリーグ、日本プロ野球)を例として使用させていただきたい。
最上位は、ドジャース/大谷翔平選手に見られるように、そもそも日本というフィールドが小さすぎて、世界最強の水準である。
昨年メジャーリーグの殿堂入りをした元マリナーズ/イチロー選手もこの範疇に入る。

次の領域は、日本プロ野球ではスターだったがよりレベルの高いメジャーリーグでは日本的なスモールベースボールの特徴を活かしながら、主要(レギュラー、スーパーサブ)選手となった元ヤンキース/松井秀喜選手や元カージナルス/田口壮選手を挙げたい。
自分がヒーローとなることよりも、チームの勝利を優先して四球を取り、ランナーがいる場合は進塁打を打つ(右打ちをする)。
そのチームプレーの精神が監督・チームメートから高く評価され、地元ファンにとても愛された。

三番目が日本プロ野球ではスターだったが、メジャーリーグでは余り活躍ができなかった選手たちだ。

私たちが目指すべき「第二水準」への到達

グローバル・リーダーを目指す皆さんはどの水準を目標としているだろうか?
既に世界最強を目指している人は、世界基準が最初から頭にあるだろうから、ここでは取り上げない。
日本で実績を上げた人が何を意識して、どう振る舞えば、世界で一定の貢献が出来るか(松井選手や田口選手のいる第二水準に行けるか)を考察したい。

勿論、日本で実績を上げた方々にも様々なタイプ(多様性)があることは承知している。
しかし、ここでは、相対的に、日本の社会人が欧米の社会人に対して比較優位があると筆者が考えている点を述べる。
商社、米国MBA、日系ベンチャー経営幹部、米国子会社社長としての事業立ち上げというバックグラウンドの筆者は、
それらは、
1)全体を見てバランスを取る能力
2)ニュートラルな立場からファシリテーションをする能力
3)必ずしも米国追随/物質主義でない歴史観からの精神性・霊性

と考える。

戦略1:専門家を束ねる「全体最適」の調整力

全体を見てバランスを取る能力は、段取り・調整・根回しを通じて磨かれる。
一般的に米国では若いうちから専門的キャリアを歩む。
マーケティングの専門家はずっとマーケティング領域の業務を担当する。
ファイナンスの専門家はファイナンス系のタスクを行う。

一方で、日本ではジェネラリストとして、主要機能の調整役や企画業務を担うことが多い。
主要機能の良い塩梅とはどこなのか。仮にトラブルが起きるとしたら、バリューチェーンのどこが弱く、そのヘッジはどうするのか。
商社ではこういうことを良く考えさせられた。

米国のMBAで、言語のハンディもあり、我々日本人学生は苦しんだが、一科目だけ同僚の日本人誰に聞いても成績が良かった科目がある。
それは「オペレーション戦略」という科目である。
会社を車に例えるならば、エンジンとシャシー(車体)とタイヤと価格のベストバランスとはどこかを探るような科目である。
往々にして米国の専門家は、自機能だけに関心があり、自機能を最大化しようとする。
しかし、全機能がその姿勢だとコストがかさみ、良い車はできない。
異なる視点からのベストバランスを求めなければならない。

戦略2:組織を一つにまとめる「ファシリテーション」

プレゼンテーションとは、自己の主張を理解して貰い、共感を得ようとすることだが、ファシリテーションとは参加者の真意を探り、選択肢を提示した上で、集合的な結論に導くことだ。
欧米の社会人は自らの主張が強すぎて、プレゼンテーションは凄いが、ファシリテーションでは離反者を出してしまうことが多かった。
結果、組織がまとまらず、ミーティングをすると却って組織が分裂するのを何度も見てきた。
ここで大事となるのは、まずは全員を大切と考えて発言の機会を作り、その発言を構造化して、選択肢を提示し、組織ゴールから考えて、どの選択肢が最も良いかを集合的に考えることだ。
このファシリテーションには、参加者の顔の表情を見て、場としての集中力を感じるアート的部分と、ロジカルシンキングに基づく科学的部分の双方が求められる。

戦略3:米国主義に埋没しない「独自の精神性」

最後に、現在は、政治も経済も軍事も米国の一強だ。
そして、日本はその米国と同盟を組む、西側諸国の一員である。
しかしながら、米国は長い歴史を経てきた駿馬では必ずしもなく、やんちゃで力の制御が効かない暴れ馬となることもある。
そのことを理解して、日本人として、自然との折り合い方、三方良し(Creating Shared Valueというとカッコ良いでしょうか)、歴史観からの精神性・霊性を米国リーダーに時には申し上げるべきだ。
米国のMBAに留学した時に驚いたのは、アジアのリーダーから米国主義への反論が出て来ないことだった。
勿論、米国に留学している身で面と向かって米国批判は展開しにくい。
でも、僕が感じたのは、資本主義(米国企業)の進出に伴い、アジア的価値観を消失してしまったアジアのリーダーたちだった。
(アジア的価値観を色濃く残そうとしているブータンやバリなどの国・地域もあるが、残念ながら僕のクラスにはそれらの国・地域の出身者はいなかった。)

2025年の訪日外国人が4000万人を超えたというニュースが発表された。
これだけの外国人が日本に来るのは、円安による割安感もあるが、それよりも欧米にない別世界(自然との折り合い方、三方良し、精神性・霊性)に触れることが目的であろう。

終わりに:日本人の強みを磨き、世界へ

ぜひ、1)全体を見てバランスを取る能力、2)ニュートラルな立場からファシリテーションをする能力、3)必ずしも米国追随/物質主義でない歴史観からの精神性・霊性を磨いていただき、皆さんには少なくとも第二水準のグローバルリーダーとなっていただきたい。
そして、さらなる高みを求める人は大谷選手やイチロー選手のような世界最強レベルを志向していただきたい。

*松井秀喜選手はメジャーリーグのワールドシリーズでMVPも獲得したスター選手であるが、ここではコラムの主旨から野球素人の筆者の私見で第二水準とした。

  • 中村 知哉

    KIBOW社会投資ファンド 代表パートナー/グロービス経営大学院 教員

    一橋大学社会学部卒業。米国ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。同校在学中にGeneral Management UnitのResearch Associateとして東洋哲学のケースを2部執筆。これらケースは長くハーバード大学経営大学院のMBA Programで使用される。丸紅株式会社入社、アドバンテッジパートナーズの投資関連業務で倒産会社富士機工電子の再建などに携わる。JASDAQ公開の株式会社サン・ライフでは、専務取締役としてアルバイト・パートを含む250名強へのストック・オプション・プログラムの実施など先進的な取り組みを行う。

    グロービスでは、グロービス経営大学院英語MBAプログラム、GLOBIS USAの立ち上げを行い、顧客企業にて数多くのグローバル研修を手掛ける。また、グロービス経営大学院にて日本・アジア企業のグローバル化戦略、企業家リーダーシップなどの教鞭を執る。GLOBIS学び放題×知見録にて、コラム『氣と経営』を連載している。

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