グロービス経営大学院の「テクノベートMBA」特別講座のうち、この10月期に開講した「ソーシャルメディア・コミュニケーション」の講師、藤代裕之氏にクラスの意義と意気込みを聞いた。
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企業にとってこれまでのソーシャルメディアは、製品やサービスのプロモーション手段としてとらえられることが多かった。しかし、非常に多くの人たちが使うようになり、社会全体の基本的なコミュニケーション手段になったことで、ソーシャルメディアに対する企業の向き合い方は大きく変わろうとしている。
ソーシャルメディア・コミュニケーションと聞いて、ビジネスパーソンが真っ先に思い浮かべるのは「炎上」ではないだろうか。会社のイメージを良く見せようとか、バズらせようとして策を弄すると、利用者に見透かされて批判を受けることになりかねない。
嘘をついてもすぐに見破られてしまう。表面を取り繕っても剥がされる。今まで以上に、その会社がなぜ存在するのか、理念、ミッション、ビジョンは何かということをしっかりと確立することが大切になる。しかも言葉だけではなく、行動が伴う本物でなければならない。
「炎上が怖い」と言うが、本当は「企業の本質が問われることが怖い」のである。ソーシャルメディアとは、顧客やユーザーの声であり、会社の姿を映す鏡である。つまり、ソーシャルメディア・コミュニケーション戦略を立てるということは、自社や自分自身の本質を問い直す作業にほかならない。いわゆる「中の人」と呼ばれるような担当者が、テクニックを弄してうまくやる、というようなものでは決してない。すべてのビジネスパーソンが理解すべきテクノベート時代の必須スキルだ。
一人ひとりにとって最も大切なことを1つだけ選ぶとすれば、それは「洞察力」を研ぎ澄ますことだと思う。様々な事象をじっくり観察し、それら断片をつなぎ合わせて、大局的な意味を掴み取る――。ソーシャルメディアを味方につけ、リアルタイムに変化する顧客インサイトにタッチするためのカギである。
(文・構成: 水野博泰/GLOBIS知見録「読む」編集長)