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SMAP解散で考えるべき組織の権威

投稿日:2016/10/05更新日:2019/04/09

SMAPの独立・解散報道では、ジャニー氏やメリー氏など事務所幹部の名前がメディアに多く登場した。多くの視聴者は、彼らがすごい権威を持つ人なのだと思ったことだろう。

バーナードは「権威受容説」を唱えている。権威とは権威者が一方的に受容者に強制するモノではなく、むしろ逆で受容者が受け入れた時に初めて権威が成り立つ、という考えである。(権威と権力は異なる。権力とは何かを強制できる権限のこと)。

昨年の独立騒動の際、キムタクだけがSMAPの独立に反対したという。結局のところ独立は不可能な状況となり、残るメンバーは事務所幹部に謝罪をせねばならなくなった。その場を取り持ったのが、キムタクである。

この後、事務所幹部はキムタクにリーダーとしての権威を与え、その権威のもとでSMAPがまとまることを期待した。しかし、メンバー間の亀裂は解消されなかった。つまり、キムタクに権威は備わっていなかったのである。それどころか、事務所幹部もキムタク以外に対しては権威が通用しなかった。

では、権威の源泉とは何か。ひとつは「職位の権威」である。ジャニー氏やメリー氏は、事務所内で最も職位が高いので、この点は十分クリアしている。もうひとつは、「リーダーシップの権威」である。明らかに人よりも優れた能力を持っている人は、職位とは関係なくリーダーシップの権威を持つ。SMAP内においては、マネジャーのI氏を除くと年長者の中居君とキムタクの2人がその権威を持っていたようだ。しかし、昨年の独立騒動でリーダーシップの権威は一気に中居君に集中した。事務所がいくら「キムタクを中心にまとまりなさい」と言ったところで、メンバーがそれを受容しなければ権威は成立しないのである。

もうひとつ、権威の働きには重要な側面がある。バーナードによると、権威の命令を受容されるのは、その内容が受容者の「無関心圏(個人のこだわりがないゾーン)」にある場合だという。権威が発する命令への反応には、絶対に拒否する、迷う、すんなり受け入れるの3つがある。命令が「無関心圏」にあれば、受容者は命令を受け入れる。もちろん、無関心圏の広さは個人によって異なるから、皆が受け入れるとは限らない。SMAPにジャニーズ事務所幹部の権威が通じなかったとしたら、それは幹部によるI氏退社後の事務所からの介入が、彼らにとって「無関心圏」の出来事ではなかったからである。

組織の階層性

昨年の独立騒動に話を戻そう。SMAPの視点からこの話を捉えれば、一人だけ独立に反対したことで、組織の和を乱したのはキムタクである。しかし、上位システムであるジャニーズ事務所の視点から捉えれば、見方は異なる。むしろ組織を守ったのはキムタクの側である。

「たいていの公式組織は、より大きな組織システムの中に含まれる部分システムである(バーナード)」。SMAPという組織の上位階層には、ジャニーズ事務所がある。さらにその上には業界団体などがある。SMAPはジャニーズ事務所の部分システムなのだ。

組織人格と個人人格

「組織の全ての参加者は組織人格と個人人格を持つ(バーナード)」。これに対応して「組織の共通目的」と「個人の動機」は区別される。そして、利己的動機を持つ個人が組織に貢献しようとするのは、組織が個人に十分な「誘因」を与えるからだとしている。

昨年の独立騒動の際、キムタクはジャニーズ事務所の「組織人格」でSMAPの独立を防ごうとした。しかし、ジャニーズからすれば残りのメンバーはジャニーズとしての「組織人格」ではなく「個人人格」で行動した。見方を変えれば、SMAPとしての「組織人格」で行動したとも言える。こうしたズレが起きた理由は、事務所とSMAP(特にマネジャーI氏)との関係が崩れていたからだろう。部分システムとしてのSMAPの影響力がこれ以上大きくなることは、ジャニーズとしては望んでいなかったようだ。

キムタクが不運だったのは、彼にとってはジャニーズ事務所という組織が、彼が貢献したいと思うだけの誘因を提供してくれる存在だったということである。だから、キムタクを悪者にするのは、筋違いだ。彼にとっては、当然の行動だったと言えよう。

こうして組織論の観点からSMAPの解散を分析してみると、一概に「誰が悪者で、誰が被害者なのか」ということは言えないことに気づくだろう。
 

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