G1関西フォーラム2016
第2部全体会「iPS細胞が切り拓く日本 ~産学連携の新たな地平~」
山中伸弥教授によるiPS細胞発見以来、日本が世界を牽引する再生医療分野。2013年4月に「再生医療推進法」が成立するなど、実用化・製品化に向けた法的整備もされつつある。こうした動きを受け、武田薬品・ロート製薬などの民間企業も積極的に参入している。医療産業都市として最先端のメディカルクラスターを形成する神戸で、iPS分野のビジョンと戦略を描く。(肩書きは2016年6月4日登壇当時のもの)。
<動画冒頭をテキストでご紹介>
髙橋氏: 今日、私自身はiPS細胞のお話をするのですが、産学連携と医療ということを考えていただきたいと思います。
(モニターにiPS 細胞の映像)これがiPS、患者さんの皮膚から作った網膜の細胞です。不思議なことです。皮膚細胞が網膜の細胞になりました。これを我々が移植したということです。
iPS 細胞とES細胞、名前は聞いたことがあると思います。iPS とES細胞は、同じものですが、この2つを同じものと言うと怒る方もいらっしゃいます。なぜかというと、トヨタとマツダみたいなものです。どちらがどう怒るのかは知らないですが、一緒にしてくれるなと。自動車という意味では同じかなと。
ES細胞は、受精卵から少し育ったところで、赤ちゃんの体になる部分、こちらは胎盤になる部分ですが、それを取り出したものです。色々な細胞になる訳ですが、育ってくると色々な方向性が出てきます。ヤサぐれたり、良い子になったり色々で、育った細胞は元には戻らない。
ところが、iPS細胞は、大人になった細胞にたった3つか4つの遺伝子を入れるだけで、無垢な赤ちゃんに戻すことができるのです。いかにすごいことか分かりますよね。ヤサぐれてしまった大人も赤ちゃんに戻れるという技術です。
ES細胞とほとんど一緒ですから、体中のどんな細胞にもなれる。無限に増えるので、再生医療に使えると思われているわけです。今は非常に安全な作り方になっていて、進化がものすごく速い。
ES細胞とiPS 細胞がどうしてこんなに騒がれるかと言うと、医療の将来を担っていくからです。
今、医療は色々な薬や手術が出てきて、簡単に治る部分は全部治るようになっています。糖尿病で失明してしまう人の場合は、数千億円かけて10年以上かけて新しい薬を1つ作っても、0.数パーセントしか治りません。ところが、糖尿病のコントロールを良くして、血糖値を少し下げると、数十パーセントが良くなります。
つまり、治療の開発よりも予防医療が重要になってきます。それでも治らなかったら再生医療という風に、2つにだんだん分かれてきています。
その1つの再生医療を大量生産、産業化できる細胞として、非常に注目されている訳です。(この続きは動画でご覧ください)