大人の女性向け月刊ファッション誌『DRESS』が2014年10月から3カ月にわたって開催した「自立塾」の講義録である。8人の起業家、プロフェッショナルが「6つの術」について語っている。
(1)キャリア術(安藤美冬氏: コラムニスト・コメンテーター)
(2)人脈術(中村貞裕氏: 話題のスポット生み出すプロデューサー)
(3)企画術(山本由樹氏: 「美魔女ブーム」を仕掛けた編集者)
(4)お金術(和泉昭子氏: ファイナンシャルプランナー)
(5)マーケティング術(村尾佳子氏: グロービス経営大学院教授)
(6)起業術(楠本修二郎氏: カフェ・カンパニー社長)
(7)起業術(坂野尚子: ノンストレス社長)
(8)起業術(藤田晋: サイバーエージェント社長)
いずれも、筋金入りの自立したビジネスパーソンである。「イザというときには会社が助けてくれるだろう」という発想はカケラも無いと言い切ってよいだろう。物理的にも、経済的にも、そして精神的にも自立しているリーダー揃いである。
特に後半では、精神的な自立の最も象徴的な形として「起業術」を取り上げているのが興味深い。楠本修二郎氏、坂野尚子氏、藤田晋氏という3人の著名起業家がその貴重な経験をシェアしてくれている。起業術といっても、起業するためのテクニック解説や起業のススメ、ましてや精神論ではない。タイトルに「会社を辞めても辞めなくても」とある通り、会社に属しているか属していないかを、大きな問題ととらえていない。起業する人はもちろんだが、会社に属している人こそ会社に縛られない自由な発想が必要になっているからだ。
ビジネス環境が激変していることは今さら言うまでもない。これまで対処したことのない問題に直面することが今後ますます増えていくのは間違いない。そんな中で結果を出すためにはどうすべきなのかを8人の猛者たちが熱く語っている。
あなたの会社にも1人や2人いるのではないだろうか。「この意見が受け入れられないのなら会社を辞めてでもやり抜く!」という強い覚悟を持って仕事に取り組む人。上司や上層部をも恐れずにぶつかっていく人。自分の信念を貫いて、結果を出し続けている人――。
私には数人思い当たる人がいる。彼ら・彼女らは間違いなく「どこでも稼げる力」を持っている。たとえ失敗しても、また立ち上がる強さと自信を持っている。
そういう意味で、組織での昇進や、転職の成功を狙う狭義の「キャリア論」とは一線を画している。自立した一人のビジネスパーソンとして、どこにいても結果を出し続けている自分自身のイメージを描いてみる絶好の機会になるかもしれない。それは、激動の時代に生きざるを得ない我々にとっての必須かつ強力な武器になるはずだ。
『会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術』
藤田晋、安藤美冬、中村貞裕、楠本修二郎、山本由樹、坂野尚子、和泉昭子、村尾佳子、著
SBクリエイティブ
1,500円(税込み1,620円)