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CSV経営とは?CSRとの違い

投稿日:2015/07/11更新日:2019/04/09

このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、重要パートを厳選して、抜粋掲載していく、ワンポイント学びコーナーです。

『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』からのピックアップ第9回目となるとなる今回は、「グローバル経営」章から「CSV経営への挑戦」を選びました。かつてはCSR経営がもてはやされましたが、いまや多くの先端グローバル企業は、それを越えたCSV経営に取り組んでいます。CSV経営こそが企業の競争力や利益を増し、ひいては社会的価値を最大化するというパラダイムの転換がまさに起こりつつあるのです。日本企業がグローバル化する上でも大きな課題になることは間違いありません。

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【POINT】
多くの企業がグローバルレベルでCSR経営からCSV経営への進化を模索している。これは、企業の活動そのものが社会的課題の解決に向かうべきであるとの意識が、世界レベルで広がっていることの証左であり、その実現度合いが企業の競争力や持続可能性に影響を与える時代になってきている。

◆CSRからCSVへ

CSV(Created Shared Value)というコンセプトの萌芽が見られたのは、マイケル・ポーターが2006年に発表した論文「競争優位のCSR戦略」(Strategy and Society)においてである。この論文でポーターは、単純な慈善活動や寄付といった、それまでのCSRの中心を占めていた活動は、貧困や環境保護といった社会的課題の解決にあまり寄与しないことを示した。そして2011年に発表した論文「共通価値の戦略」(Creating Shared Value)において、企業活動そのものが共通価値(社会の経済条件や社会状況を改善しながら競争力を高める方針とその実行)の原則に従って行われるべきであるとし、それまでのCSR(これをポーターは「受動的CSR」と呼んだ)とCSVの差異を体系化して示した。

ポーターはこの論文で、CSVの具体的手法として、製品と市場を見直す(例:食品メーカーが安価で健康に良い製品を提供する)、自社のバリューチェーンの生産性を再定義する(例:配送ルートの短縮によりエネルギーや環境問題に貢献する)、企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる(例:海外の農産物の栽培地で人材教育を行ったり、新しいプロジェクトを立ち上げたりする)という3つの方法を提唱している。

ポーターがCSVを提唱した背景には、慈善活動中心のCSRが往々にして企業イメージづくりに偏重していたことや、本来の活動と切り離された活動で企業も身が入らず、実効性が小さいことへの反省がある。それに加え、グローバル企業が持続的に成長するためには、環境面や社会面での持続可能性にも着目したうえで、社会と共有できる価値をしっかり持ち、ウィン-ウィンの関係性をつくること、そうした分野を見極めて事業開発を行うことこそが、経営戦略面からも重要になるといった問題意識があった。

◆グローバル企業のCSV経営への取り組み

グローバル企業のCSV活動について、いくつか事例を紹介しよう。コンサルティング会社のアクセンチュアは、2000年代初期より、アクセンチュア・デベロップメント・パートナーシップと呼ばれる取り組みを開始し、途上国の開発プロジェクトに同社のコンサルティングやITサービスの人材、ノウハウを提供してきた。たとえば途上国の農家支援プロジェクトやセーブ・ザ・チルドレン・プロジェクト(貧困国の子供の命を救うプロジェクト)へのサービス提供などである。

当初は公的機関が顧客になったケースが多かったが、一般の企業顧客が途上国ビジネスに注力するにつれ、そうした顧客からフィーを得つつ、彼らと連携しながら社会的課題の解決に貢献していくようになった。

日本企業では、ファーストリテイリングが2011年に立ち上げた「グラミンユニクロ」の取り組みがある。これは、高品質・低価格の服を着る喜び、幸せ、満足を提供する、バングラデシュ国内で完結するビジネスモデルで雇用を創出する、得られた利益をすべて再投資する、といった方針で成り立っている。世界一の企業を目指すのであれば、購買力を高めて需要を創出したり、現地に受け入れられるためにもCSVに取り組み、世界で通用する価値を提供するのは当然である、という柳井正会長兼社長の意図が反映された取り組みである。

CSVに関しては、当初のポーターの提案に対し、修正すべき個所があるといった批判もあるし、どのようにCSV経営を行えば経済的価値と社会的価値の総和を最大化できるのかという点については、まだまだ研究の余地がある。とはいえ、GEやナイキ、ユニリーバといった名だたるグローバル企業がCSV経営に真剣に取り組んでいるのはまぎれもない事実である。そうしたなかで、日本企業がどのようにこの課題に取り組んでいくのか、そしていかに日本企業らしいCSVを実現するのかは、今後の大きな経営の論点となっていくだろう。

(本項担当執筆者:グロービス電子出版発行人兼編集長、出版局編集長 嶋田毅)

CSRとCSVの違い

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出典:マイケル・ポーター他著「共通価値の戦略」『DHBR』2011年6月号より抜粋

次回は、『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』の「組織変革・事業再生」から「変革の重要性と3類型」を紹介します。

ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載しています)

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