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テクノロジーとテクノロジー・マネジメント: 価値創出は知恵の勝負

投稿日:2015/06/13更新日:2019/04/09

このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、重要パートを厳選して、抜粋掲載していく、ワンポイント学びコーナーです。

『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』からのピックアップ第5回目となるとなる今回は、「テクノロジー・マネジメント」章から「テクノロジーとテクノロジー・マネジメント」を選びました。テクノロジーは人類のさまざまな課題を解決する可能性を持ちますが、企業にとっては当然収益につなげなくては意味がありません。単なる発明や発見に終わらせることなく、イノベーションにつなげ収益化することがテクノロジー・マネジメントの眼目となります。

テクノロジーとテクノロジー・マネジメント

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【POINT】
テクノロジーは広義に捉えると課題解決の手段である。テクノロジーそのものが価値を生むわけではなく、手段として課題解決に用いられることで価値を生む。テクノロジーの創出はインベンション(発明)であり、これを適切に管理・活用し、経営や社会に価値を創出したときイノベーションとなる。

◆テクノロジーの範囲

人類に大きな影響を与えた最初のテクノロジー(技術)は、おそらく火のおこし方だったろう。火のおこし方を覚えたことで、人類は暖をとり、暗闇を照らし、温かく衛生的な食事をし、時に天敵から身を守る手段を手に入れた。火は生活を営むための、さまざまな基本的課題を解決した。

テクノロジーとは、広義には「課題解決の手段」と捉えられる。手段である以上、必ずしもモノとしてのかたちを備えている必要はない。無形のサービスであっても、立派なテクノロジーである。たとえば外食サービスは、おいしいものを食べたい、食材購入や調理の時間を節約したいという課題を解決してくれる。依拠する技術は、食材の選別・保存、調理、接遇などである。これらはノウハウやスキルとも呼ばれるが、テクノロジーと言い換えても本質的には変わらない。ノウハウやスキルを生み出したり活用したりする知恵は、テクノロジーと根源的には同じである。

また、サービス業におけるブレークスルー的な課題解決は、テクノロジーを利用して行われることが多い。それゆえ、テクノロジーや、これを価値に転換するテクノロジー・マネジメント(技術経営、MOT:Management of Technologyとも呼ばれる)を理解することは、サービス業に携わる人たちにとっても重要である。

◆テクノロジーの価値への転換

テクノロジーは利用されることで価値を創出する。それゆえテクノロジーには利用目的がなくてはならない。テクノロジーを理解するにあたっては、どのような課題(利用目的)を設定するかが最初の論点となる。

テクノロジー・マネジメントでは、まだ本質的に解決されていない課題を探し当てることが重要だ。すでに低コストで解決されている課題の場合、より高いコストパフォーマンスで追加的に提供できる付加価値はそれほど多くない。そこで世の中の社会ニーズ、既存技術を見る全体観が不可欠になる。さまざまな課題の中から最も潜在事業性と実現可能性が高い課題を見極め、それを解決する技術開発に取り組むのが理想的な流れである。

そして、課題解決への対価の支払いに値する技術が開発されたとき、事業機会が生まれる。ただし、この段階に至るまでに数多くの技術が試され、最終的に実現不可能または事業性不十分と判断されれば中止される。こうした問題をクリアしていくことが、テクノロジー・マネジメントの重要な目的となる

◆インベンションとイノベーション

インベンション(発明)とイノベーションの違いを理解しておくことは、非常に重要だ。イノベーションには事業、社会に対する付加価値の創出の概念が含まれている。たとえば、ライト兄弟は空を飛びたいという夢(課題)から始まり、動力つき飛行機の発明に成功し、飛行機を製造する会社の設立まで行ったが、彼ら自身が社会や事業に直接影響を与える(イノベーションとなる)ことはなかった。

一般にイノベーションは技術革新と訳されることが多いが、これはイノベーションの概念の一部にすぎない(さまざまなイノベーションの概念については96ページを参照)。IBMのGlobal Innovation Outlookでは、イノベーションには、技術革新、事業革新、社会革新の 3種類があるとしているが、テクノロジー・マネジメントが目指すのも、技術を事業化し社会に価値を創出することである。

技術者は往々にして、発明することで満足してしまい、その事業化や上市後の競争に勝ち残ることを考えていないことがある。テクノロジー・マネジメントでは、最後の勝算シナリオをどこまで明確に描けるかを重視する。勝算シナリオでは、その技術が解決する課題と既存技術との差別化ポイント、課題解決によって恩恵を受け、対価を支払ってくれるターゲット・セグメントを明確にしていく。

(本項担当執筆者:IMS Japan株式会社 IMS Consulting Group責任者、グロービス経営大学院教員 前田琢磨)

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次回は、『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』の「テクノロジー・マネジメント」から「破壊的イノベーション」を紹介します。

ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載しています)

 

グロービス出版

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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