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成功している人を真似ればOK? -軽率な模倣

投稿日:2011/10/12更新日:2019/08/15

問題です

以下のAさんの問題は何か。

Aさんはある中堅食品メーカーのプロダクトマネジャー。現在、シェア15%で業界第3位のブランド「X」のテコ入れについて検討をしている。

「さて、どうすれば『X』をテコ入れができるかな。調査によると、現状の差別化ポイントである『フレッシュさ』では訴求力が弱いという結果が出ている。いま、うちはシェア3番手だけど、ナンバー1ブランドは『本物感』を打ち出しているし、ナンバー2ブランドは『老舗の味』を打ち出している。どちらも言ってみれば『正統派』ということを前面に出しているわけか。新規参入してきた有名海外ブランドの『Y』も『本場の味』をキャッチコピーにしているから、これもある意味『正統派』ということだな・・・。比較的年配者のユーザーが多いこの商品カテゴリーでは、やはりその方が受けるのだろうか。うちの売りである『フレッシュさ』もだいぶ浸透してきたことだし、ここは『本格派だけど新鮮』みたいな感じに変えてみようか・・・」

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解答です

今回の落とし穴は、「軽率な模倣」です。これは、成功している人間のやっていることを真似れば自分も成功できるのではないかと安易に考えてしまうことを指します。真似ること自体がすべて悪いというわけではないのですが、状況によっては、真似るのではなく、その逆を行ったり、より自分らしさを重視したりする方がうまくいくことも少なくないのです。

もともと、「学ぶ」という言葉の語源は「真似ぶ」にあるといわれます(これについては異論もありますが、ここではその議論はしません)。つまり、何かについて上手くなろうとするのであれば、その道の達人のやり方を研究し、真似るのが近道というわけです。

実際、経営におけるベンチマークという考え方も、模倣をベースにしています。ベンチマークという言葉は、もともとは、土地の測量をする際の基準点を指す言葉でしたが、ビジネスにおいては、企業が他社のやり方を分析し、学び、取り入れる手法を指すようになりました。80年代に米国ゼロックス社が、倉庫業務でL・L・ビーン社、請求回収業務でアメリカン・エキスプレス社をベンチマークとし、その優れた点を学んだのが最初とされています。模倣はビジネスでも大いに活用されているのです。

ただ、問題は、今回のテーマはマーケティング、特にポジショニングの問題だということです。ポジショニングは、いかに他社との差別化ポイントを明確にし、ユニークで好ましいイメージを顧客に持ってもらうかという行為です。成功している他者に学ぶという姿勢は、下手をすると「似たりよったり」のものに近づいてしまうという危険性をはらんでいるのです。

そうしたことに対する理解や検討がないままに安易に模倣に走ることは、かえって自社の良さを殺してしまったり、ますます競争を激化させたりすることにつながりません。特に海外から強力な競争相手である「Y」も「本場の味」という看板を引っ提げて入ってきたのであれば、そこはしっかり検討する必要があるでしょう(一般に、体力に勝るトップ企業であればまだしも、中堅企業にとって、軽率な模倣のリスクは大きなものになりがちです)。

ちなみに、かつてアメリカでは、ペプシが、ナンバー1ブランドである(かつコーラの正統と認識されている)コカ・コーラに対抗すべく、「PepsiGeneration(ペプシの世代)」という若者向けのプロモーションを行うことでシェアを伸ばしたことがあります。このキャンペーンは成功を収めたのですが、ペプシはしばらくしてこのキャンペーンを止め、よりコカ・コーラとダイレクトに戦う方向に方針を変えました。マーケティング専門家の中には、いまだにこの判断は誤っていたと指摘する人が少なくありません。

軽率な模倣に走ってしまう際の重大な錯覚として、「答えは1つしかない」「最善のやり方は決まっている」という思い込みがあります。答えが1つしかないのなら、あとはその答えを目指して、いかにそれを的確に実行するか、という話になります。

しかし、ビジネスはそんなに単純なものではありません。企業にも個人にも、さまざまな独自の強みや個性があります。たとえばベンチャー企業が大企業の真似ばかりしていては成功するのは至難の業でしょう。企業や個人ごとに「答え」や「最善のやり方」が変わってくるのは不思議でもなんでもないのです。まずはそのことを再確認する必要があります。

模倣すべきポイントは効果的に模倣し、独自性を出すべきポイントについては、自分や競合のことをしっかり認識した上で独自性を出す——それを見分けるセンスを磨きたいものです。

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