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それでずっとうまくいく? -近視眼の罠

投稿日:2010/10/13更新日:2019/08/14

問題です

以下の営業部長A氏の考え方の問題点は何か。

「最近、売上げがなかなか上がらないなあ。上からもせっつかれているし、ここはやはり売上げを上げやすい既存顧客に営業担当者のリソースを集中するか。さしあたっては、新規顧客開拓中心のB君のアサインメントを変えて、既存顧客を割当てよう。あと、営業担当者全員に、顧客維持率のアップを強く意識させることにしよう。すぐに明日の朝会で伝えるとともに、各人のMBOで明確に高い顧客維持率を設定しよう」

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解答です

今回の落とし穴は、「近視眼の罠」です。これは、短期的な効果に目を奪われてしまって、長期的にはかえって好ましくない結果をもたらすような意思決定をしたり、施策をうってしまったりするという落とし穴です。多くの人間が非常に陥りやすい罠です。

今回のケースでは、A営業部長は、売上げの数字を満たすために、新規顧客ではなく、既存顧客の深耕の方にリソースを割く腹積もりです。既存顧客の方が、新規よりも話をしやすいですし、ニーズやKBFなども把握している場合が多いでしょうから、一見理にかなった意思決定のように思われます。

しかし、これはあくまで「短期」での話です。詳しくは、弊社が上梓した『法人営業利益の法則』などをご覧いただければと思いますが、中長期にわたって安定した営業実績を残している企業や営業担当者は、多くの場合、苦労をしてでも、一定のリソースや時間を新規営業に割いているものです。逆に、安易に既存顧客のみに売上げを求める企業や営業担当者は伸び悩むのが通常です。

その理由としては、1.新規営業は、営業担当者にとっての能力開発機会となり、既存顧客の維持や深耕にも結局は良い効果をもたらす、2.限定的な既存顧客との関係の中では見えないような顧客ニーズが、新規営業の現場で認識され、それが新製品開発などに結びつくことが多い、といった理由が挙げられます。

もちろん、期間や度合いの程度にもよりますが、今回、A部長が、こうしたことを理解しないまま、既存顧客重視の方針を続けてしまうと、長期で見て会社の利益を損なう可能性があるのです。

こうした事例は枚挙にいとまがありません。たとえば、最近、非正規社員の正社員化が多くの企業で進められました。「正社員とほとんど同じ仕事をしているのに、待遇に差があるのはけしからん」との世論に押された結果です。

もちろん、同じような仕事をしているにもかかわらず、待遇に大きな差があるのは問題です。だからと言って、安易に正社員を増やすことがいいかと言えば疑問です。わが国は、(特に大企業において)正社員の雇用が非常に強く守られるようになっています。しかも、アメリカほどには人材の流動化は進んでいません。

こうした中で正社員の比重を高めることは、企業としてのフレキシビリティを低下させることにつながりますし、かえって競争力を削いでしまうことになりかねません。長い目で見れば、企業そのものがグローバル競争の中で淘汰されてしまったり、「いっそのこと、国内の採用は止めてしまって、どんどん海外で採用しよう」という行動に走らせてしまう可能性もあります(現に、そうした傾向は現れ始めています)。雇用条件改善のための方策が、長期的、マクロ的に見ると、かえって雇用条件を悪化させるかもしれないのです。

ではなぜ人間は近視眼的に物事を見てしまうのでしょうか。これにはさまざま理由がありますが、代表的なものを以下にリストアップしてみました。

1.人間は遠くの(不確実性の高い)未来のことよりも、予測しやすい短期のことを重視する心理的傾向を持っている。その結果として、たとえば、長期的には良い結果をもたらすようなことであっても、短期の痛みを我慢できない。人間には、同じ量や金額であれば、利得よりも損失を重視する傾向(損失回避の傾向)もあるため、これと複合すると、ますます短期の痛みを避けるようになる

2.「そのうち物事は好転するだろう」という楽観的なものの見方をする人間が多い。自信過剰バイアス(自分は他人より良い判断ができると思いこむバイアス)同様、全く根拠がないにもかかわらず、自分に都合の良い判断をしてしまう

3.イマジネーションやシステム思考(独立した事象に目を奪われずに、各要素間の相互依存性、相互関連性に着目し、全体像とその動きをとらえる思考方法)が不足している。世の中を俯瞰的に捉えた上で、「何をしたらどのような結果が起こるか」を掘り下げて考える習慣がない。これは、第24回「ニーズ無視の規制の罠」とも通じる原因と言える

このように、多くの原因が複合しているため、近視眼の罠を避ける近道はなかなかないのが実情です。それだけ人間に深く根差した落とし穴と言えるでしょう。ただし、こうした原因を知っているのといないのでは大きな違いです。自分を客観視して、上記の要素に当てはまっていないか考える習慣をつけたいものです。

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