「クリティカルシンキング」や「コミュニケーション」の研修で私が講師として登壇する際、最初に参加者の皆さんに当該領域についての問題意識をお話しいただくようにしています。そこで最近顕著に増えているお悩みが、「上司(部下あるいは他部門)が話を聞いてくれない」「上司(部下あるいは他部門)と話が通じない」という、社内におけるコミュニケーション不全の話です。注目したいのは、「通じない」もしくは「聞いてくれない」相手は、「社内」の人であり、「社外」の人ではない、ということです。この「相手」の違いにこそ、不全の原因が隠れているような気がしてなりません。
上司は部下に、「結論からまず言え」「事実と解釈は分けて話せ」と説教ばかり。部下は上司に、「あれもこれもと難しいことを言うが、優先順位をつけてほしい」と密かに不満を募らせる。部門同士に至っては、「説得」されて根負けはしても、心底「納得」はできずしぶしぶ依頼事項をこなすような始末。
ここまで酷い状況はないにせよ、ビジネスパーソンならばどこかで似たような話を聞いたことがあるのでは。
ビジネスパーソンにとっての社外の最たる人はお客様でしょうか。日々の仕事で思い返してみると、お客様には、まずは自分の言いたいことを伝えるよりも、お客様が何を知っているのか、どんな意見を持っているのか、どんな気持ちなのか、何を望んでいるのか、を考えますよね。自分を、自分の商品・サービスを知ってもらおう、受け入れてもらおう、聞いてもらおう、と思えば思うほど、まずは相手がどういう状態か、正しく理解したいという意識が働くものです。
この状態の違いはどこにあるのでしょうか。自分の言いたいことを、相手の理解に委ねずに、自ら踏み込んで相手の状態を理解し、相手に合わせた対応をしようとする意識が働くかどうかの違いです。誤解を恐れず言うならば、同じような環境で共に過ごす相手には、「これくらい分かるだろう」「これくらい知っているだろう」という前提、酷い場合には、「これくらい分かっていて当然」「これくらい知っていてほしい」という期待の下、自分の言いたいことだけ言って理解させよう、という「甘え」がそれぞれの立場で生じていないでしょうか。これでは相互に齟齬が起こっても致し方ありません。
相手に伝わるコミュニケーションを考える上で、それこそ、考えたいことは山のようにありますが、大切なのは、「相手が聞きたいと思っていることを、相手が聞きたい順番で伝えられるかどうか」です。これは、「相手」を理解することなしには実現できません。自分の言いたいことをどう言うかを考える前に、「相手が何を聞きたいと思っているか」に、まずは想いを馳せてみることから始めてみましょう。じっと、あなたの話に耳を傾けてくれるような気がしてきませんか。
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