2015年6月16日、トヨタ自動車の株主総会において、議決権のある、「元本保証」の譲渡制限付種類株式「AA型種類株式」を発行できるよう定款が変更された。最近ベンチャーのファイナンスでもよく聞く種類株式とは何なのか?
種類株式とは、剰余金の配当や残余財産の分配、議決権を行使できる事項、譲渡制限、取得請求権、拒否権、役員選任権などに関して、条件が異なる複数の株式を発行したとき、それらを指す言葉である。種類株式を組み合わせることで、企業は議決権の状況をコントロールしたり、既存株主の持ち分の希薄化防止などを図りながら資金調達できる。
近年、ベンチャー企業も積極的にこれを活用し始めている。ベンチャー企業では、増資によって資金を調達したい一方で、創業者やベンチャーキャピタルの持株比率は下げたくないといったニーズが通常の企業よりも強くなりやすい。そのため、種類株式を組み合わせることで、いくつかの目的を同時に達成しようと工夫をするのである。
普通株以外の典型的な種類株式には以下がある。
優先株式:
剰余金や残余財産の配当に関して他の株式よりも優先される株式。その代わりに議決権の制限を受けるなどの条件が付くことが多い。これによって、企業は実質的な株式比率を変えることなく資金調達が可能となる。優先株式は1種類とは限らず、A種優先株、B種優先株など、条件の異なる複数のものを使い分けることもある。
新株予約権付株式:
その株式会社の株式の交付を受けることができる権利付きの株式。新株予約権は用途に応じてワラントと呼ばれる。
今回のトヨタの新型種類株式は、「発行から概ね5年経過後以降、株主は普通株式への転換および発行価格での取得請求が可能」という非常に珍しいものだ。中期に資金を安定調達することで開発投資の原資を確保することが狙いだが、海外の機関投資家などからは、安定株主が増え「もの言う株主」の声が届きにくくなる等との批判も出、株主総会での反対も少なくなかった。また、トヨタほどの優良企業だからこそ「元本保証」ができるわけであり、どの企業でも今回のような特殊な種類株式を発行できるわけではない点にも注意が必要だ。