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企業財務を基礎からしっかり、最新事例で生々しく学ぶ ―『新版ファイナンシャル・マネジメント』

投稿日:2015/02/28更新日:2020/02/13

グロービスの新刊・既刊を交え、ビジネスリーダーであればぜひ読んでほしい1冊を紹介するこのコーナー。第1回は、2月27日に発売されたばかりの『ファイナンシャル・マネジメント改定3版』(ロバート・C・ヒギンズ著、グロービス経営大学院訳、ダイヤモンド社)をご紹介する。本書は、グロービス経営大学院のコア科目「ファイナンス」の教科書としても指定されている『新版ファイナンシャル・マネジメント』をグロービスが13年ぶりに翻訳し直したものである。

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この『ファイナンシャル・マネジメント』は、実はグロービスが初めて手掛けた書籍である。1994年にその原著を翻訳したのがグロービスの出版事業の第一歩だったのだ。

『ファイナンシャル・マネジメント』を選んだ理由は非常にシンプルだ。当時は、わかりやすい日本語の企業財務(コーポレイト・ファイナンス)の教科書がほとんど存在していなかった。内容もビジネスパーソン向けのものは、資金繰りに偏っていたりして、いわゆるコーポレイト・ファイナンスの基礎をしっかり紹介している書籍は皆無に近い状況であった。「エクイティはデットよりコストの安い資金調達手段である」という誤解がまかり通っていたり、キャッシュフローに対する意識が希薄だったりしたもの、そうした企業財務に関する出版環境、教育環境の影響かもしれない。

そこで、現在グロービス経営大学院学長でグロービス代表の堀義人が、HBS留学の際に、スラスラ頭に入ってくると感激した本書を、いっそのことグロービスで翻訳して出してしまおうと考えたのである。当時の本書との出会いを堀は初版の前書きで次のように記している

「企業財務に全く経験の無い私が、HBSに留学することとなった。事前にファイナンスを勉強するべく財務に関する本を数冊携えて渡米した。しかしながらあまりにも難解な数式や理論が多く、ほとんど役に立たなかった。また、それらの多くは金融機関や大学教授の視点から書かれたものであり、企業財務に関する説明は皆無と言えるものだった。しかし、(HBSで)ファイナンスコースの教科書として手渡された本書の原書を読み進むうちに不思議なことに今まで何冊読んでも分からなかったファイナンスのフレームワークが面白いように理解することができたのである」

その後、日本でも企業財務に対する関心やリテラシーが上がったこともあり、2002年には新版の翻訳も行い、結局、本書は日本でも20年を超えるロングセラーとなった。そして今回、改定3版発売の運びとなったのである。

本書の特徴を一言でいえば、企業財務の初学者向けに書かれているにもかかわらず、世の中の最先端の動きも常に交えて今日的なビジネスへの示唆を示している点であろう。読者としては、企業財務を基礎からしっかり学びつつ、どのようなことが近年のトピックとして議論されているかもわかるわけで、「1冊で2度おいしい構成」となっているのだ。

たとえば初学者向けの工夫として、財務諸表の分析から丁寧にひも解き、いきなり複雑な数式を示してはいないという点がある。まずは会計的な基礎からスタートするというのは、オーソドックスな手法ではあるが、書き方や事例が面白くないと、とたんに冗長感を増してしまうことになる。本書ではそれをほとんど感じないのは、やはり著者であるヒギンズ教授の筆力や興味深いネタの選択によるところが大きいものと思われる。たとえば「グーグルの財務業績のレバー」というコラムがあるが、このITジャイアントの財務指標、たとえばROEが非常に平凡なのはなぜかといった点を分析し、別の側面を提示したりしている。このように、適宜興味深いコラムを入れたり、章ごとに基本的なまとめがある点も読者に優しい構成といえよう。こうして企業財務の面白さに徐々に触れてもらいながら、中盤からはある程度数式も交え、企業財務の王道を紹介しているのである。

最新の知見についても、あらゆる章に散りばめられている。たとえば、2008年に起こったリーマンショックに関する見解などは、やはりそれ抜きに最新の企業財務の効用や限界を知ることはできない。本書でもさまざまなところで、この点については言及されている。また、昨今、ますます実務に応用されるようになってきており、ビジネスリーダーの必須知識となってきた、リアル・オプションやAPV法、企業価値評価におけるベンチャー・キャピタル方式、あるいはさまざまな資金調達の手法などについても、旧版よりページ数を割いて解説している。変化の早い時代に遅れてはならないという筆者の思いを感じ取ることができる。

企業財務という分野は、ある程度数学的な素養が必要なこともあって、マスターするのが非常に難しい領域である。体系はしっかりしているものの、どこからどのように書くかによって読者の理解度が大きく変わってくるため、執筆者の力量が問われる分野とも言える。その意味で、本書の構成は「唯一のBest」ではないかもしれないが、「One of the Best」であることは間違いないだろう。

企業財務がビジネスリーダーの必須の素養である昨今、特に初学者にお勧めの1冊である。

ファイナンシャル・マネジメント 改訂3版---企業財務の理論と実践
ロバート・C・ヒギンズ (著)、 グロービス経営大学院(翻訳)
2015年2月27日、ダイヤモンド社刊
4400円(税込4752円)

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