(臨場感を出すために、ツイッターに加筆修正してコラムに代えさせていています)
いつものように6時過ぎに起床し、朝7時過ぎにホテルを出る。外は、まだ真っ暗だ。今日は、日本から甘利、茂木両大臣が登場する。僕の登壇もある。「頑張るぞー」と、いつものように歩きながら気合を入れる。
今から安倍首相が、ネット中継でダボス会議でスピーチをする。会場には、甘利・茂木大臣をはじめ、日本側は、緒方貞子さん、長谷川経済同友会代表幹事、三菱商事の小島会長など。アドバイザーには、フィナンシャルタイムズのマーティン・ウルフ氏、ゴードン・ブラウン氏、OECD事務総長のグリア氏、ユヌス氏を初め、要人がズラリだ。今、シュワブ氏も登場された。いよいよ始まる。
会場の画面には、日本の皇居前の光景が映る。ここに、安倍首相が登場される予定だ。シュワブ氏が、立ってマイクを持ち会場が静かになった。
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安倍さんが正面の画面に映し出された。シュワブさんが挨拶をして、竹中さんにマイクが渡り、竹中さんによるイントロダクションが行われた。そして、いよいよ安倍首相が喋り始めた。バックが、皇居前の風景だ。「日本には世界を変えて行く潜在力がある。それらを解き放つことが重要だ。そのためには『成長するのだ』と言う強い意欲が必要だ」。
「鍵は、3つの矢だ。金融政策、財政政策、成長戦略だ。規制緩和も必要だ。山中教授がiPS細胞でノーベル賞を受賞した。成長の種を見つけ、的確に育てれば、人口減であっても成長をすることができる。重要なのは、スピード感と実行力だ。テロとの戦いも重要だ。」強い口調で、とても良い印象を与えている感じだ。
「強い日本の復活に期待して欲しい」と締めくくり、会場から拍手が湧き上がった。シュワブ氏が、「日銀の独立性は、どうなのか?」、安倍首相「基本的には日銀が独自で意思決定したので、独立性には問題ない。一点違うのは、政策協調を明確にしている点だ」。そして、安倍さんとの中継が終わった。
会場で討議が始まったが、これからの議論はオフレコということなので、残念ながらここでは紹介できない。だが、この中継を実現できたことは、とても素晴らしいことだと思う。WEF、官邸の関係者の皆さんに、この場を借りて感謝を申し上げたい。
今から、「ジャパン・パネル」だ。元駐日英国大使のライト卿がモデレートして、パネリストは、茂木大臣、竹中平蔵さん、長谷川経済同友会代表幹事、政策研究大学院大学教授の黒川清さん、三菱ケミカルホールディングス社長の小林喜光さんだ。会場には、慶応義塾大学の清家塾長、ローソンの新浪剛史さん、大和証券グループ本社の清田名誉会長など要人がズラリ。
ジャパン・パネルを終えて、今から僕の登壇だ。プライベートセッションで、今年のサマーダボスのテーマをブレストする。今日は朝7時から活発に活動中だ。僕が、セッションの冒頭に自分の考えを述べ、分科会のディスカッションを引っ張り、そして意見交換した内容を、全体にシェアした。
僕が登壇するセッションを終え、これで僕のダボス会議における全ての公的な役割を終えた。ラウンジで少し、のんびりすることにした。たまたま甘利さんとトイレで一緒になったので、甘利さんに挨拶をした。カウンターで紅茶を飲んでいると、ハーバードビジネススクールの学長が、「グロービス・ナイトに行けなくて申し訳なかった」とわざわざ挨拶に来てくれた。
あとは、ダボスを思いっきり楽しむこととしよう。昼食時には、知り合いや仲間と談笑した。そして、昼食後に岩瀬大輔さんが出るセッションを応援しに行くことにした。
ダボス会議に岩瀬大輔氏デビュー。そのスライドには、出口さんがマーク・ザッカバーグ風に。
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そして、いよいよ「世界経済の展望」と言うキーノートセッションが始まった。いよいよダボス会議に甘利大臣の登場だ。他のパネリストは、ラガルドIMF専務理事、カーニー次期英国中央銀行総裁(現カナダ銀行総裁)、グリアOECD事務総長等。モデレーターは、マーティン・ウルフ氏(フィナンシャル・タイムズ紙)。
マーティン・ウルフ氏が、アベノミクスを「革命的」と呼び、甘利大臣を紹介した。そして、甘利大臣が、3つの矢そして成長戦略について説明した。「日本経済がデフレから脱却するのは、一丁目一番地だ。プライマリーバランスは、2020年までに黒字化する。日本が回復して、他国の良き事例となりたい」。
日本に関しては、「TPPはどうするのか?農業の競争力はどうか?、エネルギーは? 原発は再稼働するのか?、財政はどうか?」とOECDのトップが質問した。やはり、TPP、原発再稼働、財政赤字が、心配ごとなのであろう。しっかりと方針を決めて、日本の立場を説明することが重要だ。
マーティン・ウルフ氏「中央銀行の独立性をどう考えるのか? 為替の円安誘導の批判にどう答えるのか?」甘利大臣「今回初めて、政府と日銀がインフレ目標を共有した。2%は、国際標準だ。あくまでも日銀は独立性を維持したまま、自主的に目標設定し実施するのだ。大臣は為替レートへの言及をしていない。あくまでも為替レートではなくて、政策について言及しているのだ。金融緩和政策等の結果として円安に振れているのだ。デフレにより、名目成長が20年変わっていない。先ずは、政府が実需を財政出動により創りだし、民間投資を誘発できるようにする。世界第三の経済大国として成長への役割を果たしたい」。とても良い回答だと思った。
最後は、カナダの銀行総裁のカーニー氏に、日本の政策やポジションを、代弁して説明してもらっていた。自らが弁明するよりも、第三者が代弁するほどパワフルなものは無い。カーニー総裁と甘利大臣が壇上で目を合わせて会釈をしたのが、印象的だった。日本の政策は、ダボス会議、つまり世界で理解されたと言って良いであろう。甘利大臣>グッドジョブでした。
もっと日本の政治家に、ダボス会議に来て欲しいと思う。なぜならば、あの舞台に立てるのは財務大臣か経済担当大臣、更には日銀総裁くらいであろう。たった3人がセンターステージに立てるのだ。僕が出ることができるセッションはまだまだサブなのだ。そうなると、発言力そして発信力は自ずと違ってくる。
日本の政治家や日銀総裁が来ないと、単純にあのメインの舞台から日本が消えるだけなのだ。そうなると、不在のまま欠席裁判となり、批判されて反論できないまま終わってしまう。このダボス会議の場で、国際世論が創られる。だからこそ、ダボス会議に出席することが、重要なのだ。
これで、ダボス会議のセッションを全て終えた。残すは、夜のソワレだけだ。今年初めて、ソワレが山の上のホテルで開催される。今年のダボスでは、初めてプールがあるホテルに泊まっている。だけど、今まで多忙で一回も泳げていなかった。ちょっとのんびりと一泳ぎをしてくることにした。
山の上の歴史がある場所で開催されたソワレを終えて、部屋に戻った。これにて、ダボス会議の全日程が終了した。火曜日から計5日間。グロービス・ナイトが開催された木曜日がピークで、その後はゆっくりと人が減っていった感じがする。明日日曜日の朝、チューリッヒに戻り、ロンドンに飛ぶ予定。まだまだ出張は続く。
2013年2月1日
一番町の自宅にて執筆
堀義人