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モラル正当化とは?「良いことをした後」に起こる危険な心理現象の真実

投稿日:2025/07/22更新日:2025/08/19タイマーのアイコン 読了時間 5分

モラル正当化とは、過去の善行を理由に不道徳な行動を許容してしまう心理現象です。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

モラル正当化とは - 善行の「貯金」が生む意外な落とし穴

モラル正当化(Moral Credential)とは、ある事柄について善いことをした人が、別の場面では「これまで良いことをしてきたから、このくらいは許されるだろう」と考え、道徳的でない意思決定をしてしまう心理現象のことです。

この現象は、私たちが善行を一種の「貯金」のように捉えてしまうことから起こります。つまり、過去の良い行いが、現在の少し問題のある行動を「相殺」してくれると無意識に考えてしまうのです。

日常生活からビジネスの現場まで、この心理現象は意外なほど頻繁に発生します。外で親切にした後に家族に八つ当たりしたり、寄付をした後に強引な値引き交渉をしたりするのも、モラル正当化の典型例といえるでしょう。

なぜモラル正当化が重要なのか - 組織と個人の判断に与える深刻な影響

モラル正当化を理解することは、現代のビジネス環境において極めて重要です。なぜなら、この心理現象が組織の意思決定や個人の行動選択に大きな影響を与えるからです。

①経営判断の質を左右する隠れたリスク

経営者やマネージャーが過去の成功体験や社会貢献活動を理由に、本来であれば慎重に検討すべき判断を軽視してしまうリスクがあります。「これまで会社のために尽くしてきたから」という理由で、利害関係者の声を十分に聞かずに重要な決定を下してしまう可能性があるのです。

②組織文化と倫理観への長期的影響

個人レベルでのモラル正当化が積み重なると、組織全体の倫理観や文化にも影響を与えます。「過去に良いことをした人は少しくらい融通を利かせてもらえる」という風土が根付いてしまうと、公平性や透明性が損なわれる恐れがあります。

モラル正当化の詳しい解説 - 心理メカニズムから実践活用まで

モラル正当化は、単純に見える現象でありながら、その背景には複雑な心理メカニズムが存在します。この現象を深く理解することで、ビジネスの現場でより効果的に活用したり、逆に悪影響を防いだりすることが可能になります。

①記憶の力が生み出す意外な効果

モラル正当化の興味深い特徴は、実際に最近行った善行でなくても効果があるという点です。過去の良い行動を思い出させるだけで、その人の現在の判断に影響を与えることができます。

これは、私たちの脳が過去の善行を「道徳的な資産」として記憶し、現在の行動選択に影響を与えているからです。つまり、実際の行動よりも「自分は良い人である」という自己イメージが重要な役割を果たしているのです。

②交渉術としての活用可能性

この心理現象は、交渉の場面で戦略的に活用することもできます。相手の過去の善行や立派な判断を褒めることで、現在の交渉において相手により柔軟な態度を取ってもらえる可能性があります。

人事考課の場面を例に取ると、上司に対して「以前のコンプライアンス重視の判断は素晴らしかった」と過去の善行を評価してから本題に入ることで、より好意的な反応を得られる可能性が高まります。

③一貫性の法則との相克関係

しかし、モラル正当化には対抗する心理法則も存在します。それが「一貫性の法則」です。これは、過去に正しい判断をした人は現在も正しい判断を続けようとする心理傾向のことです。

どちらの心理が強く働くかは、個人の性格、状況の緊急性、周囲の期待値など様々な要因によって決まります。そのため、モラル正当化を活用する際には、相手の性格や状況を慎重に見極める必要があります。

モラル正当化を実務で活かす方法 - 効果的な活用と防止策

モラル正当化の理解は、単に学術的な知識として覚えておくだけでなく、実際のビジネスシーンで積極的に活用できる実践的なツールでもあります。一方で、この現象の負の側面を防ぐための対策も重要です。

①戦略的なコミュニケーション手法として活用

交渉や説得の場面では、相手の過去の善行や立派な判断を具体的に評価することから始めると効果的です。ただし、露骨すぎるお世辞は逆効果になるため、具体的で誠実な評価を心がけることが重要です。

「先月の品質改善提案は本当に素晴らしかった」「昨年のCSR活動への取り組みは業界でも話題になっていました」など、相手が実際に行った具体的な善行に言及することで、より自然で効果的なアプローチが可能になります。

②組織運営における注意点と対策

組織のリーダーとしては、モラル正当化による判断の歪みを防ぐための仕組み作りが重要です。過去の実績や貢献にかかわらず、すべての案件について客観的な基準で判断できるようなプロセスを整備することが必要です。

定期的な第三者による監査、複数人での意思決定プロセス、明確な評価基準の設定などを通じて、個人の主観的な判断に過度に依存しない組織運営を目指すことが大切です。また、「過去の善行は素晴らしいが、現在の判断は別問題である」という文化を醸成することも重要な要素の一つです。

参考ページ

MBA経営辞書「モラル正当化」

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    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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