今年5月発売の『MBA 言語化トレーニング』の「Part5 Lesson23 「相手の思考」を促す」の一部を紹介します。
部下の指導においてコーチングの技法が有効であると言われて久しいものがあります。コーチングの基本は傾聴と質問です。相手の話をしっかり聞きつつ、相手に気づきを与える質問を適宜投げかけるのです。
質問はあまりに誘導的すぎると効果的ではありません。相手の創造性を開放すべく、勝手に置いている前提に気づかせる質問や、新しい角度からの思考を促すような質問をすると、部下の能力も伸びますし、上司すら気づいていなかったアイデアが生まれたりするのです。
相手の頭を揺さぶるような言葉の選択が鍵となります。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
気づきを与える最高の質問
ビジネスでは、それまでの常識を打ち破った製品・サービスやビジネスが多々存在します。たとえば、ダイソンの羽無し扇風機は、扇風機とは羽を回して風を起こすもの」という既存の常識を疑った結果生まれました。あるいは、ソニーのウォークマンは、「音楽は室内で聞くもの」あるいは「(当時)音楽再生機能しかない数万円の商品が売れるわけがない」の常識を疑った結果生まれたといえます。
こうした発想は個人でも大切ですし自問したいものですが、部下の指導においても重要な意味を持ちます。比較的頭の柔らかい若い部下の創造力を高めることができれば、それは組織にとっても顧客にとっても良い結果をもたらす可能性が高まるからです。
さて、部下を指導する際、最初から「こうしたほうがいいよ」という上司もいますが、常にそのやり方では部下は伸びません。緊急で仕方がないといったケースは別ですが、いわゆるコーチングの手法で部下に考えさせるやり方を適宜用いると有効です。つまり、上司が直接的に解やアドバイスを与えるのではなく、質問を通じて相手の気づきを促し、問題解決や目標達成のための行動を喚起するのです。
たとえば、部下にある視点が欠けていると感じたならば、「これって考えるべきポイントはすべて押さえているかな?」と聞くといいでしょう。あるいは、中途半端なところで妥協していると感じたならば、「どのくらいの時間考えてみた?」などと聞くと、部下に「この程度の思考投入では不足なんだ」と気づかせることができます。
優先順位に対する意識が低いようなら、「もし2つの施策しか実施できないとしたらどれを選ぶ?」などと聞いてみるといいでしょう。
図に示したように、部下の課題を踏まえたうえで、部下に「あっ、そうか」「この視点はなかった」などと気づいてもらうことが大切です。
演習問題1
設定
あなたは企画部の課長。部下のAさんの企画が過去の常識にとらわれていてあまりぱっとしません。相手が勝手に置いている暗黙の前提に気づかせるには、どのように話しかけるとよいでしょうか。
相手の状況:頭は良いし、企画案も平均的で悪くはないのだが、いつも平板になるきらいがある。
回答例・解説
まずはあまり良くない例です。
「NG例」
うーん、他にアイデアはないかな?
回答例や他の演習問題をごらんになりたい方は本書をご覧ください。
『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2024/5/22 価格:1,870円 発行元:PHP研究所