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議論をさばく(4)さばきの基本動作(3)発言を理解し共有する(2)

投稿日:2011/10/13更新日:2021/10/08

発言を多面的に理解する

前回は参加者から発言を「聴く」ことの大事さ、難しさについて考えてきました。今回は「聴く」という行為についてより具体的に紐解いてみたいと思います。

参加者の立場で他の人の話を聴くのであれば、「何を言っているのか?」つまり意見の内容だけを理解すれば事足ります。しかしファシリテーターは、その発言が議論全体の中でどのように位置づけられるのかを把握し、その発言をどう扱うのか、発言の後にどの方向に議論を進めるべきか判断しなければなりません。このためファシリテーターは発言者の「意見」を理解するのはもちろん、より多くのことを発言から読みとる必要があります。では、ファシリテーターが発言から読みとり、理解すべきことは何でしょうか?

■「意見(主張・結論)」を読み取る

まずは、発言者が実際に話している内容を正しく理解することが必要です。しかし「正しく理解する」ことは思いのほか難しいものです。特に議論の場面では参加者は考えながら話をするので、注意深く聴かないと表面的な言葉は理解できても「何を言いたいかわからない」ということになりがちです。それを避けるためには、発言の中で何が「意見(主張・結論)」なのかに意識を強く向ける必要があります。

ある案について反対なのか、賛成なのか、ある状況についてよいと判断しているのか、そうでないのか、などです。様々な状況を説明しているのだが結局何が結論なのかがはっきりしない、色々なポイントを挙げているのだが結局賛成なのか反対なのかわからない、といった発言も多いものです。こうした発言を聴く際は、「で、だから何だと言いたいのか?(So what?)」という問いを心の中で発してみるとよいでしょう。そして、それでも理解できない場合は、「ということは○○については反対という理解でよいですか?」「A・Bという二つの理由から『市場は魅力的だ』という意見ということでよろしいでしょうか?」などと確認するとよいでしょう。

■根拠、理由を読み取る

発言者の「意見(主張・結論)」が理解できたら、その「根拠、理由」がどのようなものか掴むようにします。一つの意見に対して根拠、理由は複数あることが多いので、根拠がいくつあるのか、そしてそれぞれの内容はどのようなものかを把握します。特に日本語でのコミュニケーションの場合、結論としての意見が後で話されることが多いので、話が始まったら挙げている理由が何点、何であるかをチェックしながら聴き、聴きながらSo what?を意識して結論を読み取るようにするのが現実的かと思います。

話をよく聴くと、意見と根拠の関係がどうも繋がらない、なぜその根拠からその意見が導かれるのかがわからないと感じることがあります。これは、そもそも発言者の論理展開が不十分であることもありますが、ファシリテーター側が発言者の頭の中にある前提を共有していないために理解できないことが多いものです。このあたりは次回詳しく考えてみたいと思います。

■「論点」を読み取る

参加者の発言を理解するだけでなく、その発言を議論全体の中に位置づけ、どう扱うかを判断するうえで発言されている意見以上に重要なのが、「何についての意見なのか?」という「論点」です。論点の重要性については、「仕込み」のパートで論じていますので詳細はそちらを参照いただきたいですが、「論点」は重要である一方で、実際に発言されることは稀なので、発言の中から「読みとる」必要があります。参加者が発言を始めたら、まずは「何について話をしているのか?」「何について、どういう意見なのか?」を読み取ることに意識を集中するようにするとよいでしょう。

発言からいきなり論点を読み取るのは難しいですが、「仕込み」の段階でしっかりとその議題についての論点を洗い出し、頭の中に「論点の地図」ができていれば、発言の裏にある論点を読みとり位置づけることは比較的楽にできるはずです。

■発言の「目的」を理解する

もうひとつ、話を聴く際に意識すべきなのは、「何のためにその発言をしているのか?」、つまり発言の「目的」です。

発言の目的にはいろいろなものがあります。前の発言に対して反対、賛成の態度を表明する、前の意見と同じ意見だが別の根拠、理由を述べる、まだ話されていない別の論点を提示する、前に話されている論点に戻す、様々な意見を整理する、意見をまとめ、議論の結論を出そうとする、などです。何のために発言しているのかを理解することで、様々な発言を議論の中で位置づけやすくなるだけでなく、発言の意味をより的確に理解できるようになるでしょう。

また、上記のような論理的な面での目的だけでなく、発言には心理的、感情的な面での目的もあります。たとえば自分の存在をアピールしたい、自分の喜びや怒り・悲しみなどを理解してもらいたい、他の参加者やファシリテーターに対する不満を表現したい、などです。多くの場合発言の裏にはこうした目的が隠れており、参加者の発言の内容はもちろん、議論への参加姿勢などにも大きな影響を与えています。但し、発言者自身がこれらを「自覚」していることはあまりなく、当然言葉として表現されることは稀で、口調や態度に表れることが多いものです。発言者をよく観察し、こうした感情を理解しようと努めることで、発言の真意を掴みやすくなります。

再度まとめると、ファシリテーターが参加者の発言を聴く際には、「何のために(目的)」「何について(論点)」「何を(意見・主張・結論と根拠・理由)」言っているのかを掴むことが必要です。目的と論点は口に出して話されないことが多いので、実際には「何を」を聴きながら、「何のために」「何について」語っているのかを発言の中から読みとることになります。最初はなかなか難しいかもしれませんが、慣れてくると、「目的」「論点」を意識することで、発言をより早く、的確に理解できるようになるでしょう。

次回は、参加者の意見と根拠をより深く理解するためにどうすればよいか、更に考えてみたいと思います。(続きはこちら

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