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論点を把握する(14)〜広げる(11):合意形成のステップを細分化する(9)〜

投稿日:2011/05/12更新日:2019/08/15

前回は「合意形成のステップ」の中の「アクションの選択と合意」について論点を考えました。今回は最後のステップである「実行プラン・コミットの確認・共有」についてポイントをまとめてみたいと思います。

具体性を徹底的に追求することで対策の実効性を高める

「会議で対策が満場一致で決まった。しかしその後、通常業務に戻って数日経っても誰も動いている気配がない。皆納得して賛成したはずなのに・・・問い合わせてみると、『それは○○さんがやるんじゃないですか?』『確かに賛成です。でも私は何をすればよいのですか?』『そんなにすぐに動く必要があるとは思っていませんでした。いろいろと忙しくて・・・』といった反応。結局、再度会議を開くことに・・・」

皆さんはこうした経験は無いでしょうか?組織で何らかの対策を行うことを「決定」しても、「いつ、誰が、何をするのか?」が明確になっていなければ、「実行」されることはありません。こうしたことを避け、メンバーが対策案の実行に向け、実際に動き出せるようにすることがこのステップの目的です。

ここで重要なのは、「具体的にすること」です。対策を実行するために、「いつ、誰が、何をするのか?」を具体的に考え、関係するメンバーが迷わずに活動を始められるまで認識を合わせていきます。たとえば、

◇実行プランをどうするか?
・いつまでに(納期・スケジュール)
・何を(作業項目)
・どの程度(各作業のアウトプットイメージ)
・どのように(作業の方法や、そのために必要な資源の調達方法等)
◇各自の役割は何か?誰が責任を持って推進するのか?
◇実行時に生じる判断や意思決定をどのように行っていくのか?

などがあげられます。以下、このステップで特に注意が必要な点について考えてみます。

明瞭な成果イメージから逆算するのが実行プラン精査の肝

■成果から逆算して実行プランを具体化する

実行プランの具体化とは、別の言葉で言えば「段取りを組む」ことです。一見簡単そうに見えて、的確な実行プランを作成することは意外に難しく、作業を始めようとすると「前の作業が終わっていない」「その前に決まっているべきことが決まっていない」「入手すべき情報が揃っていない」「複数の人が同じ作業を行ってしまっていた」といったことが起こります。

実行プランをつくるためには、(1)対策を実施するためにやるべきこと(作業項目)を洗い出す (2)作業項目間の関係を整理する (3)作業を分担する関係者を把握する (4)作業項目毎の時間(工数)を見積り、必要な資源を把握・調達する (5)作業項目をスケジュールに落とし込む (6)作成したスケジュールを関係者に共有し合意を得る、というステップになりますが、これらを上手く考える上で重要なのは、「成果から逆算する」という発想です。いきなり目に付いた作業項目から考えるのではなく、「最終的な成果を生み出すためには、その前に何が行われ、どういう状態になっていなければならいのか?」「その作業を始めるには、何が決まっていないといけないのか?」「それを決めるためには、誰の承認を得ておく必要があるのか?」などと問いかけながら、最終成果から中間成果物へと遡りながら詳細を詰めていくとよいでしょう。

特に実行の初動段階で、「まず、何が決まっていないといけないのか?」には一層の注意が必要です。このため実行フェーズ時の議論においては、まず決めるべきことのリスト化と確認、未決定事項があれば誰がいつまでに決めて、いつどのように伝達するのか?などの論点を忘れずに討議し確認するとよいでしょう。

■目的とアウトプットイメージ(成果物イメージ)を具体的に共有し、関係者の意識を合わせる

上記を進める上で、難しくかつ重要なのが、「作業の目的とゴールイメージを関係者が共有する」ことです。「各人が、何のために、どのような成果を、いつまでに出す必要があるか?」をはっきり認識していないと、見当はずれの成果に向かって作業をしてしまったり、作業にかかる時間や難易度、必要な確認・調整事項などが適切に見積もれず、結果としてスケジュールが遅延するといった事態が頻発します。特にメンバーにとって未経験の業務の場合、「アウトプットイメージ」を掴むことは難しく、認識の齟齬が生じやすいものです。こうしたところは、かなり具体的なレベルまで「その作業の目的、意味」と、「どのような要件を満たす成果が必要なのか?」を確認する必要があります。具体的な類似例を示す、まずは素早くメンバー自身にドラフトを出してもらって確認するなども効果的です。

■責任者を明確にする

対策を実行する上でキーとなるのが、誰が「責任者」なのか?を明確にすることです。対策全体の責任者は誰か?そして各作業は誰が責任を持って推進するのか?は決して漏らしてはいけない重要な論点です。ここで、「誰が責任者か」を決めるだけでなく、責任者が、その作業の目的、アウトプットイメージ(およびその成果の是非を判断する判断基準)と納期を十分にイメージできているか?を確認することが重要です。これは全員がいる会議の場でできれば望ましいですが、難しい場合はファシリテーターと個別に(出来るだけ早く)確認する、各責任者の認識をメール等で確認し合うなどするとよいでしょう。

■調整の仕方を決めておく

どれだけ具体的にプランを考えても、実際に作業に着手すると、調整しなければならない点が出てきたり、作業の遅延が発生したりします。これらを避けることはなかなかできないのですが、むしろ大事なのは、こうした事態を早く察知し、素早く必要な調整を行えるようにしておくことです。特に、要協議・決定事項が生じた際に「誰が、いつ、どのように決めるのか?」を合意しておくことが重要です。そこがはっきりしていないと、メンバーが動きづらいばかりか、「私が勝手に決めて進めてよいのだろうか?それとも相談すべきなのか?相談といってもいつ誰に相談すればよいのか?」など精神的にも不安定な状態になりがちです。これを避けるためには、「何かわからないことがあったら、まずは誰に相談するか?」という論点を忘れずに提示し、合意しておくこと。また「定期的にミーティングや進捗報告をどのように行うのか?を決めておく」などが効果的です。

このように、「実行プラン・コミットの確認・共有」の論点には、一見細かいように見えて対策の実行の成否を握る重要な論点が多いものです。ファシリテーターとしては、メンバーが見落としがちなこうしたポイントを押さえ、適切な働きかけができるようになりたいものです。

ここまで、「合意形成のステップ」に沿った「論点の把握」を丁寧に見てきました。ファシリテーターの「仕込み」としては、ここまで見てきた論点について、全て詳細まで考えておかなくてもよいのですが、まずは「議論すべき論点」にはどのようなものがあるか?を考え、広く洗い出しておくことが重要です。一回でもある程度考えていれば、議論をしていく中で新しい論点に気づく可能性も高まります。最初は考えるべきことが多く大変だと思うかもしれませんが、だんだんと習熟するにつれて、自然と必要な論点が見えるようになってきます。

このように一旦考え得る論点洗い出し、「広げて」認識するのですが、実際の議論では洗い出した論点を全て議論するわけではありません。次回は、洗い出した論点からどのように「絞り込み」を行うのか?に話を移したいと思います。

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