あいまいな物事は“切り分け”で具体的に把握することができる
上記のお題、「レストランで待つのは好き?嫌い?」を突き付けられ、戸惑ってしまった人も多いのではないだろうか。それもそのはず。今回のお題の目的自体が「回答者を困惑させること」(細谷功氏)なのだという。
「上記の質問に対し、すんなりと答えを述べられないのは、状況の“切り分け”がしっかりと行われていないから。おそらくたいていの人は、外や待合で待つのがそんなに苦ではない反面、席に着いてから長時間待たされるとイライラするでしょう。つまり、『レストランで待つ』と一口に言っても、待つ場所が『外』なのか、『待合』なのか『席』なのかによって待つ人の気分は変化するので、ひとくくりに好き嫌いを判断できないんです」
このお題の場合、「途中で待つのをやめられるかどうか」という選択の自由度の側面から見れば、物事を切り分けることの意味を理解しやすい(図1参照)。
図1:「レストランで待つ」状況の切り分け
「レストランの例からも分かるように、物事は『場合分け』といった前提条件を設け、切り分けることでより理解を深めることができるようになります」
議論がかみ合わないのは見ている対象が違うため
こうした“切り分ける”作業は、コンサルの仕事にも直結しているのだと細谷氏は話す。
「例えばあるクライアントが、新製品を投入すべきか否かの経営判断に迫られたとします。そんな場面でよく直面するのが、『現場社員の意見を聞くべきか?』という議論。
聞くことに賛成派の人は『現場の状況を最も知っている現場社員の意見は聞くべきだ』と言い、反対派は『現場社員は、あるに越したことはないと言うに決まっているから、聞く必要はない』と主張する。
「両者の議論は延々と平行線をたどります。しかしこれも、問題になっている事象を明確に切り分けて考えることで、なぜ話がかみ合わないのかが明らかになるはずです」
さっそくこの問いを切り分けて考えてみよう。すると「聞く」とひとくくりにしていた中には複数の意味が含まれており、何についての意見を聞くべきかがあいまいになっていたことが分かるはずだ。
「つまり、『現場の情報を聞く』と『新製品を投入すべきかの判断を聞く』という2つの意味が、『現場の意見を聞く』という言葉の中に集約されてしまっていたんです。これを整理すると、経営判断するまでのプロセスは『情報収集』と『意思決定』の2つのフェーズに分類できる(図2参照)。先ほどの賛成派と反対派の議論が進まなかったのは、それぞれが違うフェーズについての意見を言っていたからなんですね」
図2:「現場の意見を聞く」目的の切り分け
また物事を切り分ける際、フレームワークを用いればより完全な分類をつくることが可能だという。
「フレームワークを利用することで、全体像だけでなく、部分それぞれの位置付けを見せることができるようになります。こうしたテクニックは、通常の業務にも活かせるはずです。
例えば上司から、状況設定のあいまいな質問が来たとします。そんなときは質問が問題としている対象を状況別に前提条件を付けて分類し、『Aの場合、メリットは大きいですが、Bの場合ではデメリットの方が大きいです』という風に別々の回答を用意すればいいんです。
それだけで上司の目に、あなたがデキるビジネスパーソンとして映るのは間違いありません」