アイデアを“収める”ことがフレームワーク思考を進化させる
ブレーンストーミングでアイデア出しをする際、ただ思い付きを羅列していくだけでは、どうしても視点が偏ってしまう。そこで「フレームワーク思考」を持ち出して、アイデアの偏りやモレを補うケースが多い。
「このように、フレームワーク思考は思い付きで出されたアイデアの補完、つまり新しいアイデアを“出す”ためのものとして使われることが多い。しかし、実はフレームワーク思考には、もう一つ重要な側面として、アイデアを“収める”機能もあるんです。それを理解し使いこなせば、今回のテーマである『新しい視点』を見つけ、さらに多くのアイデアを出せるようになります」(細谷功氏)
そこで上記のお題について、考えてみてほしい。
「このお題に対して寄せられた読者の回答を抜粋したのが図1です。
図1:1000万円の利用法
では実際に、これらをもとにフレームを用意してみましょう。回答としては『購入』、『貯金』、『投資』が多いですね。例えば、これを『モノに変換する・しない』というフレームワークに分類してみたとします。すると、図2のような分類になり、読者から挙げられた回答はすべてフレームの中に収まりました」
図2:「1000万円の利用法」を収めるフレーム
普通ならばここで満足し、二つのフレームに沿って新しいアイデアを出そうとするだろう。しかし、それだけではフレームワーク思考の持つ機能の一部しか使っていないのだと細谷氏は話す。
新しい視点のアイデアは新しいフレームから
「例えば、『枕にする』というアイデアが出てきた場合、入れるとするならば『モノに変換しない』グループですが、そのままグループに入れてしまうことに、何らかの違和感を覚えると思います。要するにそれは、『モノに変換する・しない』という当初の分類に、無意識のうちに『1000万円をお金として利用する』という前提条件を設けてしまっていたからにほかなりません」
ここで「枕にする」というアイデアを用いることで、先ほどのフレームワークを広げることができる。それを表したのが図3だ。
図3:「枕にする」を用いたフレームワークの広げ方
「新しいフレームができればこっちのもの。それまで1000万円をお金としてしか見ていなかった視点に加え、お金として扱わないという視点を獲得することになります。一気に視野が広がることで、出てくるアイデアが倍増することは言うまでもありません」
こうした新しい視点の獲得には、先の「枕にする」のような自分になかった視点のアイデアが必要になる。それには他人のアイデアを借りるのが近道だ。
「それまで自分の頭になかったアイデアを聞いたら、その都度それが収まる新しいフレームを作っていけばいいんです。また、一度作ったフレームを違う次元の物事を考える際に応用できるのも、フレームワーク思考の特徴。例えば、上図の『1000万円の利用法』で使った『お金として利用する』・『お金として利用しない』というフレームワークは、『あるモノの機能をそのまま使う』・『あるモノをその機能以外の方法で使う』と一般化して流用することが可能です。自分なりのフレームを作る→アイデアを出す→新しいアイデアを収める新しいフレームを作る→新しいアイデアを出す…というフローを意識すれば、新しい視点は次々と自分のものになりますよ」