Withコロナ時代を生き抜く自律した個人の働き方―『「超」働き方改革―四次元の「分ける」戦略』

リモートワーク中心の時代、組織から個人を分け、自律した個人へ

新型コロナウィルスの感染問題をきっかけとした怒涛のような社会変化については、驚くばかりだ。2019年には働き方改革関連法が施行され「働き方改革元年」と言われたのも束の間、あれよあれよという間にリモートワーク(在宅勤務)も当たり前になった。ワーママ友が、「うちの会社は働き方改革なんて関係無いし…リモートワークのリの字も出ていないよ」と嘆いていたのも今は昔。彼女の勤務先も、今や週二日はリモートワークが可能だというから大変な変わりようだ。

しかし、このようにリモートワーク中心に働き方が変わってくると、私たちはとまどってしまう。仕事の振り分け方は今まで通りで良いのだろうか?チームワークは?モチベーションは今まで通り保てるのだろうか…?

本書はコロナ禍直前に執筆開始されているが、はからずしも大変タイムリーな刊行となった。組織論の研究者として豊富な実績を持つ著者は、本書において「働き方改革の要は組織改革」とし、「今、必要なのは、組織や集団から個人を分け(分化)、その上で統合することだ」と提言している。

端的に言うと、個人は組織や集団に相互依存せず自律し、その上で、それぞれの明確な役割を持って共に働こう、ということだ。もちろん、集団側にも、自律した個人を活かす組織設計が求められる。これができれば、リモートワークもうまくいき、長時間労働や男女格差、生産性の低下まで克服できると著者は主張している。

さて、「分化」は4つに整理されている。それぞれを簡単に紹介しよう。

一つ目は「仕事を分ける」だ。一人ひとりに仕事を分け、個人の分担と責任を明確にする。ここが未分化な組織だと「周囲との相互依存(長時間労働の原因)」「不公平(男女格差)」「部下の上司に対する従属(ハラスメント)」がいつまで経っても解決されない。

二つ目は、「職場を分ける」だ。情報社会になった現在、オフィスは単なる事務作業の場ではなく「創造の場」「考える場」であるべきだ。大部屋でパーテーション無しの旧来の日本型オフィス(まさに『半沢直樹』のオフィス!)は、再考の余地があるだろう。

三つ目は、「キャリアを分ける」だ。働く意欲や満足度などの観点から、キャリア(時間)という要素をもっと重視すべきとしている。

四つ目は、「認知的に分ける」だ。仕事によっては分けるのが難しいものもある。個人の分担を明確に定めたり、働く場所を物理的に分けたりできない場合、誰が行った仕事かを明示することでモチベーションをあげる一つの方法になるとしている。

なお、それぞれの「分ける」については、障害となる難所とその解決方法の提案も書かれている。詳しくは本書を参照されたい。

今後増えるのは、組織にいながらも自営業者のように働く「自営型」か?

特に私の印象に残ったのは、一つ目の仕事を分ける時の“切り口”についてである。「大手企業がジョブ型雇用制度を導入」などのニュースを目にするが、これも環境変化に合わせて仕事の分け方の切り口を変えたと言える。現時点では、どの企業もより有効な制度(切り口)が無いかと模索しているように思える。そのような現状で「3つ目の切り口」として紹介された「自営型」には、この方法があるかと新鮮に映った(残りの二つは、職務型―いわゆるジョブ型と専門職型である)。

自営型とは、組織に属しながらも、半ば自営業のようにある程度まとまった仕事を一人で丸ごと受け持つ働き方である。著者は、この自営型(または専門職型と自営型の融合した働き方)がこれから増えていくと予想している。分業とは真逆の切り口だが、リモートワークが中心となっていく今後において、自己完結ができる、評価も分かりやすい等という面においてありうるのでは無いだろうか(ただ、その業務を遂行するだけの能力開発も必要そうだ)。

いずれにせよ、一個人の立場としては、withコロナ時代に仕事をする上でどんな働き方がありうるのか、またどんな能力開発に取り組んだら今後の時代を生き抜いていけるのか、切実に知りたいところだ。本書は、そんな視点からも参考になる一冊である。

 
「超」働き方改革―四次元の「分ける」戦略
著者:太田肇 発行日:2020/7/7 価格:858円 発行元:ちくま書房

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