AIを学ぶ目的とAIを活用できる人材~『文系AI人材になる』

必要そうだからAIを学ぶ――それでいいのか。

「DX(デジタル・トランスフォーメーション)を加速させ日本国内の産業構造を刷新するためには、AI人材がもっと必要!」「雇用市場での価値を高めるためにはデータサイエンスだ!」–ということで、AI関連の書籍やウェブサイト等で独学されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

私も近い将来、子供たちに教えられるようになるためにAIを知っておかなきゃと思い立ち、一昨年からプログラミング(まずは子供向けヴィジュアル・プログラミング言語Scratchからスタート)と統計解析(学生時代の復習、今のところExcelで十分なレベル)を、実際に手を動かしながら学んでいます。

けれど、この先、もし順調に機械学習まで理解できたとしても、「AIを使って、自分は一体何ができるようになりたいのだろうか?」という疑問が沸きました。なんとなく必要そうだからやっておこうという軽い気持ちでは、深いレベルまでの学習を続けられない予感がしたのです。

AIを学ぶ目的意識をはっきりさせる

そもそも何のためにAIを学ぶのか、自分なりの目的意識をはっきりさせたくなった時に出会ったのが、この書籍『文系AI人材になる~統計・プログラム知識は不要』です。タイトル後半部分が、文系出身の私の学習のハードルを下げてくれているのは言うまでもありません。

今からAIエンジニアを目指すわけではないが、AIの力を借りてビジネスや研究開発を発展させたい、つまり、AIをゼロから作る側ではなく、既にある程度出来上がっているAIを使いこなし、「AIと共働き」して生産性を上げていきたい方に本書はオススメです。

AI初心者が独学で学ぶ一般的なステップとしては、①概要と全体像→②数学(最低限必要な範囲に絞る)→③Python→④機械学習・ディープラーニングという道筋をたどるかと思います。が、学習を始める前段階に、

⓪AIでやりたい事を決める

このステップを踏むことによって、自分のキャリアや問題意識にどのようにAIを活かせるのかイメージできるようになります。目的意識がはっきりとしていれば学習のモチベーションを継続させることができ、知識を吸収するスピードも速まります。そこで、まず、今のAI技術で既にできるようになっている例を知ることが大切なのです。

AIの活用事例を知る

この本の後半には業種別に45のAI活用事例が記載されていますので、今取り組んでいる・これから取り組みたいビジネスや社会課題で、どのようにAIが活用されているのかを知ることができます。

現在、私たちの生活に浸透しているAI――写真を読み込んだら植物の名前を教えてくれる画像認識を用いた識別系AIや、チャットボット等の会話系AI、自動翻訳AI、お掃除ロボットなどの実行系AI――は、今後の活用可能性のイメージがしやすいと思います。

反対に、企業内部あるいはB to Bで完結し、消費者にはブラックボックスになっているAI――たとえば、予測系AIについては、どこまで活用が進んでいるのかわかりにくいのではないでしょうか。

予測系AIの活用が進めば、事業の個々のレベルでの未来を確度高く予測できるようになります。その結果、無駄を省き、目的に沿って経営資源を最適化できるようになります。予測系AIはホワイトカラーの仕事を拡張し、生産性向上に寄与する本命の技術だと私は考えているので、この本に記載されている予測系AI活用事例(需要予測に基づくアパレル在庫の発注・値付けの最適化、エリア別のタクシー乗車人数予測に基づくドライバー配置の最適化、見込み客の絞り込みによる最適なタイミングでの営業活動、LIVEチケットのダイナミックプライシング等)は、大変興味深いものばかりでした。

他にも、どのような場面でAIが活用されているのか、日本に多い製造業を例にとって見てみましょう。

生産管理であれば作業を代行するロボットの実行系AIや不良品を検知する識別系AI、マーケティング部であれば需要予測や最適価格を割り出す予測系AI、コールセンターなど対顧客の最前線であれば会話系AI等を用いることで、限られた人員でも業務の効率化・最適化を進めることができるようになります。このように分解して見てみると、AI技術の全てを最初から知ろうとするのではなく、ご自身の目的に合わせたAI技術にフォーカスして学びをスタートさせればよいことが簡単にイメージできるのです。

すでに出来上がっているAIを「使う」という選択肢

さらに、文系出身者ばかりではなく、理系でも情報工学以外の学部ご出身の方の前に共通して立ちはだかるのが、「AIをゼロベースからスクラッチで構築できなくては、AIを仕事で使えないのでは」という思い込みの壁です。たしかに、数年前までは自分でコードが書けてサーバー構築が出来なければAI活用の入り口に立つことすらできませんでした。

ですが、今はAmazonやGoogle、Sony等、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)ベースのAI構築環境を提供するサービスが増えたことで、プログラミングコードが書けない人でもAIをより簡単にカスタマイズすることができるようになりました。これは、例えるなら、HTML言語がわからなくてもWord文書作成レベルのスキルがあれば、Word Pressで自前のホームページを誰でも簡単に作成できるようになったのと似ています。

さらに、すでに構築済みのAIサービスを使用できるなら、カスタマイズの自由度は無くなりますが、より容易にAIを使い始めることが可能になります。例えば、本書のp.55~56で紹介されているAWS(Amazon Web Services)上のAIサービスでは、文字起こしや翻訳だけでなく、時系列データがあれば商品の需要予測や財務計画の策定も可能になるのだそうです。GoogleやMicrosoft Azureでも同様のサービスが提供されてきています。新しいサービスの多くは、最初の数ヶ月間は無料で試すことができるので、個人でも気軽にAIサービスを使い始めることができます。

このように、AIをゼロから作らなくともAIをキャリアに活かすことができる環境が整ってきたおかげで、AIと共働きするハードルが徐々に低くなってきています。

自粛生活中の新しい試み・楽しみとして、『文系AI人材になる~統計・プログラム知識は不要』を読んで、AIを使ってやってみたい事を明確にし、ご自身のキャリアにAIをプラスしてさらに活躍する未来の姿をイメージしてみると、面白いかもしれません!

文系AI人材になる~統計・プログラム知識は不要
著者:野口 竜司 発行日:2019/12/20 価格:1760円 発行元:東洋経済新報社

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