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今年6月発売の『ロジカル・シンキング練習帳』から「LESSON6 幅を変えてみる」を紹介します。

物事を分解して見るとき、切り口や切り方で実態に迫れるか否かが変わるということはよくあることです。ここで「切り口」は、切り方のそもそもの視点の違いを指します。例えば「在庫が増えてきた」という問題を考えるとき、「A製品、B製品、C製品…」という分解の仕方で見るのと、「製品在庫、仕掛在庫、部品(原料)在庫」という視点で見るのかで、見える光景が全く変わってくるということです。一方、「切り方」は、仮に同じ切り口で分析しても、その分解の幅の取り方等で、これも見える世界が変わってくるということです。「『切り口』が同じなら、そんなに結果は変わらないのでは?」と思われる方も多いかと思いますが、それはよくある錯覚です。実は、切り方を何通りか試してみると、全然違う光景が見えるということはよくあることです。「分けるは分かる」という言い方もありますが、「どのように分けるか」で、実態に迫れるかそうでないかが大きく左右されるということは、分析の基本として押さえておきたいポイントです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

幅を変えてみる

「現状を正しく理解しよう」とよく言われますが、正確に現状を把握するということは実は簡単ではありません。意味のあるようにみえる事象が、実はたまたまそのようにみえているだけということもよくあります。では、何か起こっているのかを的確に理解するためにはどうしたらよいのでしょうか。

業務知識の理解度を確認するための20点満点のテストの結果、表1を渡されたあなた。チーム40名の成績を分析するように頼まれました。

表のままではわからないので、得点を5点刻みでグラフ化しました。

グラフをみると、0から5点、6点から10点、11点から15点、16点から20点といずれも10名、成績のよいメンバからあまり成績のよくないメンバまで、一様に分布しているようにみえます。

次に、刻み幅を4点に替えてグラフを作成してみました。

すると、先ほどは一様に分布していたようにみえていましたが、4点刻みでグラフを描いてみると、左右に分かれて分布していることに気づけます。成績のよいメンバとそうでないメンバとに大きく二分されているようです。

このように、元のデータは同じですが、5点刻みでデータを集計するか、4点刻みでデータを集計するかによって、みえ方が全く変わってきてしまいます。

私たちはつい、5刻み、10刻みといったわかりやすい単位で集計をしてしまいがちですが、それは単にキリがよいからという理由でしかありません。キリがよいからという単純な理由のみで刻み幅を採用するのではなく、以下の3つのポイントを覚えておきましょう。

①全体のデータの幅を確認する

今回の事例では、テストの点、0点から20点までがデータの幅になります。

②大きく4~8ぐらいに分けられる刻みの幅を考える

データの幅が0~20ですので、刻み幅を5にするとちょうど4つに、刻み幅を4にすると5つ、刻み幅を3にすると7つに分けることができます。4~8は目安ですので、少なかったり超えたりしてはいけないというものではありません。

③複数のグラフを描いて、みえ方が変わらないかを確認する

先ほどは、刻み幅が「5」、「4」のグラフを作成しましたので、ここでは、3点刻みで、全体を7つに分けるグラフを作ってみます。

成績のよい人とそうでない人とが、左右に大きく二分されているという点では、図2でみた解釈と大きくは変わりません。一方で、図3では、左右対称に分布しているという印象よりは、左側の成績のよくない人が多いという印象になります。6点から8点の人数が多くなっていることが理由です。

同じ40名のデータも、刻み幅をいくらにするかによって、みえ方が全く変わってきます。では、どの刻み幅がよいのでしょうか。答えはどれもあり得るということになります。なぜなら、元のデータは同じで刻み幅を変えただけだからです。

大切なことは、「いくつの幅が適切なのか」ということではなく、「いくつの幅にするかでみえ方が変わり、解釈が変わる可能性がある」ということの理解です。

そして、複数の刻み幅で分けてみて、みえ方がどう変わるのか、もしくは変わらないのかを「試行錯誤してみよう」という姿勢を忘れないようにしてください。

(執筆者:岡重文 グロービス経営大学院教員)

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