パンデミックには2つのフェーズがある:人々が発症を恐れる最初の沈静化の段階(フェーズ1)、そして人々(および国)が財政的にも精神的にも疲弊する、より長期にわたる進化の段階(フェーズ2)だ。
我々はこのパターンが存在することを知っている。なぜなら以前にも経験しているからだ――疫病に見舞われた14世紀の村の流行病や検疫・隔離のあり方は、我々が今経験しているものにあまりにも似ている。社会学的なレベルでは、我々はコロナのフェーズ1における自己隔離により、韓国人哲学者ハン・ビョンチョル氏が著書『The Burnout Society(疲労社会)』で「従順の社会」と表現した社会に戻された。同氏によれば、過去の社会は従順さだけではなく、欠乏や自己愛(自尊心)も大きな特徴だった――どちらも、ソーシャルメディアによって加速される現代社会のナルシシズムの高まりと著しい対照をなすものだ。
今、我々は再び、政府の指令に従って自ら自宅に籠っている。そして新たな規制の下、ビジネスやテクノロジーはかつてないほどのイノベーションを見せている。
フェーズ1:ビジネスモデル変革の時代
フェーズ1は、前例のないデジタル変革を引き起こし、かつてないほどにスマートワークが推進されている。MITスローン・マネジメントレビューによると、これらの変革は3つのビジネスモデルに現れている:
1.異なる製品、同じインフラ
企業は広く開かれた市場と一見無限に見える需要に直面した結果、その焦点を移している。高級ブランドのLVHM、飲料メーカーのペルノ・リカール、香水メーカーのプイグはすべて消毒剤の製造を始めた。バス、バッテリー、フォークリフトで知られる中国のコングロマリットByD Coはマスクの生産を開始した。ベストウエスタン、ヒルトン、メリア等のホテルチェーンは、コロナウイルス感染症患者対応ホテルとするため施設を改造した。
2.同じ製品、異なるインフラ
その他、自社の製品・サービスに自信を持つ企業は、顧客に製品やサービスを配送するための新たな方法を見出している。アマゾンはLyft(アメリカに本拠地を置く運輸ネットワーク企業)と提携しインフラを変えて共同宅配を行い、ウォルマートは受注条件を拡大して宅配を強化している。ヨーロッパでは客室乗務員が航空会社の支援により旅客のケアから患者のケアへと移行している。
3.同じ製品、異なるチャネル
最後に、顧客にとっての新しい環境、つまり家庭内に合わせて自社製品を適応させなければならない会社もある。中国のLin Qingxuan(林清轩)等の化粧品会社はWeChatを利用することで成功した。ナイキ等のスポーツウェアメーカーは、製品の焦点をオンラインエクササイズ向けに変えている。英国のビンバー蒸留所は、対面式テイスティングの代わりに自宅ウイスキーテイスティングキットを導入した。
だが、これらはすべて、フェーズ1におけるCOVID-19ビジネス変革である。
フェーズ 2 はまた違った様相となる。
フェーズ2:テクノロジーの時代
2020年2月~4月の間に生み出されたデータ量はかつてないほどに大量だ。人間のやりとりの大半がオンラインで行われたためである。ビッグデータや人工知能などのテクノロジーがついにその可能性を実証し、ユーザーの信頼を得る機会を得た。これらすべてのデータから確実に生まれるであろう行動態度パターンは、スマートワークからオンラインショッピングに至るまでさまざまなトレンドに光を当てるだろう。
PEPP-PT(汎欧州プライバシー保護近接追跡)や米国のグーグルとアップルの提携など、コロナウイルス感染者を追跡するために開発されたイニシアチブはすべてを変えてしまうかもしれない――よい方向に。
たとえば、レストランは混雑してはいけないということで、営業時間が変わる可能性がある。バルセロナでは、レストランは通常は午後1時~11時まで営業するが、ほとんどの人は5時~8時半の間には来店しない。空いた時間に食事する人をAIを使って特定すれば、顧客をより均等に分配するのに役立つかもしれない。
近所での買い物も復活しつつある。これを利用して、お店同士で提携して、たとえば美容院の予約時間まで待つ間、地元のレストランによる屋外料理レッスンを提供する、等のお得な組み合わせパッケージも考えられる。テスココリアはすでに地下鉄の駅でのバーチャルスーパーマーケット技術を開発している。顧客は駅でアプリを使って買い物をし、帰宅したら買った物が届けられているという寸法だ。
今回が初めてのパンデミックではなく、また最後にもならない。今後も多くの結果が可視化されるが、今回は歴史上初めて、個々の貢献が記録されることになる。コロナデジタルビジネス変革はグローバルであり、全人類にとって重要となるものだ。今後、様々な新しいやり方への社会の信頼を醸成するため、民間企業への政府の規制が必要となるであろう。
*本記事は、GLOBIS Insightsに掲載したものを、翻訳転載したものです。