グロービス経営大学院の教員がオススメする「今、気になるビジネス書」5選をご紹介します。
『問い続ける力』
推薦者:荒木博行
さて、皆さんが今抱えている「問い」ってどんなものがあるでしょうか?
「どうやってこの仕事を早く終わらせるか?」
「どうやったら次のイベントの集客数を増やせるだろうか?」
「どうやってあのクライアントから受注を取ろうか?」
問いにはさまざまなバリエーションがありますが、これらのように私たちが日頃考えているのは、「半径2m程度」のものばかりで占められがちです。しかし、インパクトのある仕事をするためには、「問いの始点」をもう少し離れて4km先くらいに置く必要があります。
例えば、アパレル業の会社であれば、「人はなぜ服を着るのか?」「そもそも良い服とは何か?」を問わなくてはならないでしょう。そこから考えないと、底の浅い凡庸なサービスが出来上がってしまうのです。
この本は、「〜とは何か?」という4km先くらいからスタートする考え方について紹介されています。お手軽な「思考スキル」の話に食傷気味の方は、この哲学的な「思考スタイル」の話に触れてみてはいかがでしょう。
『問い続ける力』
著者:石川善樹 発行日:2019/4/5 価格:950円 発行元:筑摩書房
『幸福な監視国家・中国』
推薦者:許勢仁美
先日、映画のチケットを事前購入しようとして中断した。オンラインで必要以上に個人情報の登録を求められ、嫌気がさしたからだ。日本人は個人情報の提供に慎重だと言われている。一方、オンライン大国と呼ばれる中国ではあまり抵抗がないようだ。
本書では、デジタル化によって利便性が高まった中国の生活が詳らかにされている。監視カメラやネットで常に行動記録がとられ、信用情報として統合・提供されている監視社会でありながら、人々は監視されていることを感じない。行儀よく生活しているぶんには、監視されていることを意識する機会はなく、利便性しか感じないのだ。これが、幸福な、監視国家の姿だ。
私たち日本人は、テクノロジーを活用し、利便性を享受しながら、どのような社会を目指すのか。テクノロジーによるビジネスインパクトを解説した『アフターデジタル』とセットで読んでおきたい。
『幸福な監視国家・中国』
著者:梶谷 懐、高口康太 発行日:2019/8/10 価格:918円 発行元:NHK出版
『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』
推薦者:垣岡 淳
「アート」や「美意識」、さらには「劣化するオッサン社会」など、刺激的なコンセプトで知的刺激を与えてくれる山口周さんの最新作。「オールドタイプ」「ニュータイプ」という二項対立の構成に抵抗を感じ、手に取るのを躊躇っている諸兄姉も多いのではないでしょうか?(実は私もそうでした笑)
心配ご無用!! 読むと惹きこまれること間違いなし!! 何よりパラダイム転換を顕す言葉の対比とそれを裏付ける事例がたまりません。
「問題解決力」から「問題発見力」へ
「役に立つ」より「意味がある」方が強い
「ルール」より「自分の倫理観」に従う
などなど、丸ごと1冊こんな感じです。
若いから関係ない、って思った貴女&貴男、実は「オールドタイプ」は幅広い年齢に分布しているので、迷わず読みましょう!!どストライクな(オールドタイプ)世代かもー、って思った諸兄姉は言うまでもなくネ。
『ニュータイプ――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』
著者:山口 周 発売日:2019/7/4 価格:1728円 発売元:ダイヤモンド社
『本業転換――既存事業に縛られた会社に未来はあるか』
推薦者:嶋田毅
近年、本業が代替技術等によってDisruptされ、一気に立ち行かなくなり、倒産するケースが目立っている。一方で、本業が倒れる前に次のビジネスの種を見つけ、スムーズに事業転換を遂げた会社も少なくない。
本書は、4つの業界の比較的似た状況にあった2社、計8社について、うまく事業転換できた会社と、それができなかった会社を対比させ、その差異をあぶり出そうと試みた1冊である(例:富士フイルムvs.コダック、ブラザー工業 vs. シルバー精工)。
特に着眼しているのは、変化のタイミング「When」と、どのような事業に多角化したかの「What」である。事業のライフサイクルがどんどん短くなる中で、企業がいかに環境変化を乗り越え変わっていくべきかのヒントを得られる1冊である。
『本業転換――既存事業に縛られた会社に未来はあるか』
著者:山田英夫、手嶋友希 発行日:2019/7/19 価格:1620円 発行元:KADOKAWA
『デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論』
推薦者:星野 優
本書の著者は、重要文化財などを修理する日本企業の社長を務める英国人。「人口の増減が国の経済力を決める」というシンプルなコンセプトを展開し、その上で今後日本として何をすべきかを具体的に示唆しています。
本書の特徴は2つ。1つは理路整然とした議論の流れです。 “生産性とは一人当たりの生産性×労働人口”、“労働人口が減るなら生産性を上げるしかない”、“具体的にどの様に上げるのか”。こうして見るとあたり前の論理展開ですが、換言すれば、それだけ納得感が高いと言えます。
もう1つは海外での事例や豊富な定量データ、その分析結果に裏打ちされた主張である事。ゴールドマン・サックスのアナリストとして34年間研究してきた著者の「厚み」を感じることができます。
「すべては貧困に苦しんでいる子供たちを救うために。今こそ日本人が立ち上がることを信じています」――この言葉で本書を結んだ著者は、根っからの親日家。著者と共に高い、そして少し長い目線で日本を見つめ直してみませんか。
『デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論』
著者:デービッド・アトキンソン 発行日:2018/2/23 価格:1620円 発行元:東洋経済新報社