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IoTやAIが当たり前の時代にビジネスパーソンは何を意識すべきか

投稿日:2019/06/07更新日:2020/01/24

テクノベートMBA基本キーワード70』の発売に合わせ、執筆者の嶋田毅とグロービスでテクノベート科目の開発にかかわっている君島朋子、鈴木健一、梶井麻未に、グロービスが提唱・推進している「テクノベート」の現状や進化について聞きました。(全2回)

テクノベートを意識することが当たり前の時代に

――今回の執筆の狙いはどのようなところにあったのでしょうか。

嶋田:IoTやAIという言葉はかなり日常的なものになりました。ただ、これらの言葉を聞いてはいるものの、まだ細かくは知らなかったり、ビジネス的な意義まで掴みきれていない人は少なくありません。本書はそうした方向けに、70の項目をピックアップし紹介したものです。スタートラインに立つという意味では、昨年東洋経済新報社から上梓した『ビジネススクールで教えている 武器としてのITスキル』と並び、有用な1冊だと思います。

――「テクノベート」という言葉をグロービスが言い出して3、4年が経ちます。当時と今を比較して変わったことは何でしょうか?

君島:かなり変化しましたね。最初は「何を言っているんだ?」という感じでしたが、今では考えて当たり前という雰囲気があります。こうしたことにグロービスが取り組み出したことに対しても、3年前は「へぇ」という反応だったのが、最近は「当然やるべきことをちゃんとやっているね」に変わってきました。

大学院でテクノベート科目を受ける学生の方も、初期はそうした分野で働いている方やエンジニアの方、あるいはアーリーアダプターの方がメインでしたが、今はみんな「取れるなら取ろう」と思っておられると思います。職場など身近にそういう実例があるようになってきたことが大きいと思います。

鈴木:同感ですね。昔は驚きだったものが、いまや当たり前。本当に劇的に変わった感があります。

梶井:学生さんや周りの方に聞いても、「自分の仕事に全く関係がない」という人の率が減ったといいますか、間接的であっても「そういう波が来ているぞ」という人々がマジョリティになってきたと感じています。

情報量も増えましたね。2016年の秋に「テクノベート・シンキング」を新科目として開講させました。その科目開発をしていたときは、たとえばブロックチェーンの本で一般人が読めるものはほぼなかったんですよね。ブロックチェーンの仕組みの要諦や、どういう形でビジネスに使うかが簡単に分かる本はなくて、マニアックな研究書やブログしかありませんでした。今は、ビジネスに連関した書籍も山積みになっています。そういう意味で、一般化したなというのは体感としてあります。人工知能にしても、当時は東大の松尾豊先生の本ぐらいしかまとまったものはなかったんですけど、今は本当に多いです。

君島:今までの話は個人レベル、特にグロービスに通うような意識の高い人を前提にしていましたが、組織単位でとらえると、受け入れている人と受け入れていない人の差が非常に大きくなってきた気がします。受け入れている方は先端的な部門、部署としてテクノベート化を促進しているような環境におられる方です。そうした人々は、「もちろんやるよね」「面白いよね」「どんどんやろうね」という感じです。一方で、抵抗勢力とまでは言えないかもしれませんが、「あんなの何かの流行りだよ」みたいに捉えられている方もいる。なにか「鬼っ子」的なものと捉えている方もまだまだいらっしゃるなと思います。

――それは世代の問題でしょうか、それとも部門の差に起因するのでしょうか。

君島:どういう事業に携わっている方かによって、差がある気がします。

ちなみに、先日、「テクノベート・マネジメント・プログラム」という、エグゼクティブスクールに新しく作ったテクノベートのプログラムを講師として担当したんですよ。私が担当したのはリーダーシップ・組織のパートの2クラス分で、戦略のパートの後に、いかにそれを実行するかという、まさにHow論のパートです。これは非常にウケがよかったです。

1ケース目にうまくいった事例で「組織やリーダーは何したのか」を見ました。昨年翻訳した『一流ビジネススクールで教えているデジタル・シフト戦略』のフレームワークを叩き台に、それに照らしながら「どこがよかったんだろう」を考えました。そして2つ目のケースで失敗例を見て、「じゃあ何ができてないんだろう」を考えます。そして、「みなさんはどのへんですか?」と最後に振り返っていただきました。みなさん「変わらなきゃいけないんだけど、どうやったらいいのか」という悩みが非常に身近になってきたのを実感しました。

嶋田:確かに組織による差は大きいですね。自分事になっている人とそうでない人の差は大きい気がします。

テクノベートをより本質的に捕えるために必要なこと

鈴木:先ほど、テクノベート関連の言葉がずいぶん一般化してきたという話がありました。ただ、頭で分かったという感覚はなんとなく皆さん持っていると思いますが、体感値として身についたとか、本質的なところについては、やはりまだまだという気がしています。

たとえば、クリティカル・シンキングとテクノベート・シンキングについて、「何が本質的違うのか」を分かっている人は少ないと思います。クリティカル・シンキングは、端的に言えば、人間の脳を最大限有効活用するように作られた思考法だと思います。マーケティングなども、たとえばセグメンテーションといった塊で捉えて、平均化して分けて考えていく。一方、テクノベート・シンキングでやっているのは、テクノロジーの力を借りることによって、人間の脳の認知能力を越える形で個別化をして問題解決をするということです。技術が変わったことによって、問題解決の方法自体が変わっていくのですが、そこがなかなか伝わり切っていないかもしれません。

嶋田:通常のオペレーションに機械のアルゴリズムが入ってくる点なども大きく変わって来ていますね。

鈴木:たとえば「ビジネス・アナリティクス」の科目は、昔は「定量分析と意思決定」という名前だったように、「今回の個別の意思決定のために分析をしましょう」というものでした。だからこそ「説明できること」が重要で、データを使ってどういうふうに説明するのか、クリティカル・シンキング的にどうロジックを組むかということが大事でした。しかし、データサイエンスやAIの世界では、単発の意思決定よりも、サービスやオペレーションの中にそれがアルゴリズムとして組み込まれる形になっていきます。なおかつ、特に機械学習になるとブラックボックス化が進んで理由の説明がかなり難しい。そういった世界観の違いなども肌感覚で掴むのは簡単ではありません。

――教え方も変わりましたか?

君島:昔は「へぇ」と知らない段階から入っていた方が、今は「あ、それあるよね。どうしたらいいんだろうと思っていたんだ」という段階から話に入れるので、すぐに実感を持った議論ができます。特に私が担当しているリーダーシップ・組織分野では、感度のいい人は組織を変えたがっているのです。皆さん、変化の進み方が遅いと思っていらっしゃる。いかに進めるかに非常に関心がある。こうした焦りのある方はHow論に非常に関心を持たれます。

「うちの組織が行き詰まっているのは、このケースで言うとここの部分だ」と理解が深まるので、普通のケースとして扱えるようになってきたという点も重要です。基本的な戦略やリーダーシップをケースメソッドで学ぶような感覚で、ケースを使った引き寄せ方で議論ができるようになりましたね。

梶井:テクノベート・シンキングなどで言うと、さきほどの本の話にもつながりますが、世の中に情報がたくさんあるので、自分で学んだり勉強したり、気軽に試したりということがしやすくなったと思います。例えばGoogleも無料で、Webブラウザ上でプログラミングができるようなツールを公開しており、あまり知識はなくても手軽にプログラミングを体感することができます。2016年当時はMITのScratchを含めて数えるほどしか無料でWebブラウザ上で簡単にプログラミングの基本を体感できるようなツールがありませんでしたので隔世の感があります。

嶋田:とはいえ、情報が多いと、その中で埋もれる人もたぶんいたりするんで、学生の方も含め、別の苦労も出てきた気はしますね。

鈴木:これは若干想像ですが、情報が多すぎて、大枠だけ見て若干食傷気味で、追っかけている人は追っかけているんだけど、そこで距離を置いちゃっている人もいそうですね。

そういう意味で言うと、授業の場はある種、強制的にハンズオンでやらざるをえないので、機会としてはすごく大事だなと思います。多かれ少なかれ、大学院側がソムリエっぽく取捨選択して、咀嚼して話をしますから。そこで体感値を得ることができる。

梶井:確かにそこには価値があるかもしれません。テクノベート・シンキングでは最初から「実際にやってみる、体感してみる」ということをとても意識して、ずっと継続してやっていますね。IoTの簡単なキットをみんなで組んでやってみようとか、一部機能には無料でアクセスできるIBMのAIのエンジンに触れてみようとか、そういうことはすごく大事にしています。それがきっかけで、自分のビジネスにひきよせて考えたり、いろいろ工夫して実践してみようという人はいますね。

別の科目「テクノベート・ストラテジー」においても、個人課題としてデジタル技術の経済原理がリアル世界へ普及した時、自社や自業界にどのような影響があるか具体的に考えます。そういう意味ではやはり体感することは大事です。

嶋田:授業が終わると忘れてしまう人もいるのでは。実務はまた別の世界や課題があるので。

梶井:それは難しい問題ですが、できるだけそういう潮流に触れ続け考え続けるようにするしかありませんね。仮に今目の前のビジネス上ではできなくても、SNSでも、記事でも、何でもよいのですが、自然に情報が流れてくるように工夫することが必要です。

テクノベート科目は各テーマに関する知識とか考え方をお伝えするということ自体も大きなテーマなんですが、世の中の変化に気づいて「まずい。今までと世界観、考え方や行動を変えなければならない」という心理面の変革を促すこともねらっています。パラダイムの変化についていけるように支援するということですね。

鈴木:クリティカル・シンキングのクラスでは、「まずイシューを設定して、順序立てて考えていこうね」という感じで、「Howから考えるのは止めよう」と伝えています。一方、テクノベート・シンキング等は、「イシューから始めよう」ということはもちろんキープはしているけれど、結局、Howの、つまりできることが変わることによってイシューも変わってくるから、「Howを知るのは大事だよね」という感じになります。いままでのグロービスで教えてきた世界観とはちょっと違う形ですね。「Howは大事だし、とりあえず、まずはやってみようよ。経験値をまずつかもうよ、考え過ぎずに」みたいな感じです。クリシンも出来たうえで、さらにテクノベートを用いた問題解決ができるようにならないといけない。

梶井:クリシンももちろん重要です。向き合っている課題や状況に応じた使い分けが大事ですね。

後編「テクノベートを実行する姿勢が個人と組織を成長させる」はこちら>>

グロービスのテクノベート科目についてもっと知りたい方はこちら>>

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