『爆速!アルゴリズム』――アルゴリズムの威力を知ることがテクノベートの基本

爆速!アルゴリズム

GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の時代と呼ばれるように、近年はデジタル・テクノロジーを駆使したサービスを展開する企業が文字通り世界を席巻しています。そして、あらゆる分野で「明日のGAFA」を目指す新事業・新会社が続々と勃興しています。アリババやテンセント、UberやAirbnb、日本からもメルカリなどがそうですし、もっと規模の小さいベンチャーやスタートアップは枚挙に暇がありません。グロービスでも、こうした状況に応じて、テクノロジーとイノベートを合わせて「テクノベート」と称する新しいMBAカリキュラムを数年前から開発・実施してきました。

こうしたテクノベート時代のビジネスに共通する経営資源は、何と言ってもコンピュータ・プログラム、中でも強力な競争優位性を作るのがアルゴリズムです。数ある検索エンジンの中でグーグルがユーザーから選ばれたのも、SNSの中でフェイスブックが勝ち残ったのも、的確な検索結果や「知り合いかも」をすばやく表示させるアルゴリズムの力が大きく寄与しました。

アルゴリズムとは、もともとコンピュータ特有の用語ではありません。著者の定義によれば、「限られた時間の中で意味のある目的を遂げるための、明確なステップが順に並んだもの」。何かを行う際の段取りや手順といった意味合いですが、それをコンピュータに命じていかに望ましい結果を引き出すかがポイントになります。

本書は、このアルゴリズムの効果と面白さを伝える本です。原題は「Bad Choices」。日常的な問題を解決するのに「良い、上手いアルゴリズム」と「悪い、下手なアルゴリズム」を比較して、どこがどのように優れているかを解説していきます。扱っている日常場面は「洗濯物の山となっているたくさんのソックスの左右を正しく揃える」「家の中のモノが切れたら買い出しに行くがその回数を最小にする」など12章。10足程度のソックスを揃えるならどんなやり方でもさほど問題ではないでしょうが、100万足、1000万足のソックスを揃えるとなるとやり方次第でかかる時間に大差が生じてくるのです。

私がもっとも印象に残ったのは、限られた字数の中にいかに情報を詰め込むかという話。通常、単語をデータ化する際はabcといった文字一つひとつにコードを割り振り、それをコンピュータが処理可能な2進法に置き換えます。aのコードは97とし、これを2進法で表すと1100001という具合。これだと1文字につき7ケタ必要で、たとえばある4文字の単語をコンピュータに記憶させようとすると28ケタ必要になります。ところが、あるアルゴリズムを用いて文字を2進法に変換すれば、その単語を何と11ケタで表せるようになった――どのようにやったかは本書を読んでいただくとして、これがファイル圧縮の技術として新たな世界を切り拓く一助となっていったのです。

本書はイラストによる図解が豊富で文体もフランク、コンピュータ・ソフトウェアの本でありながらプログラミング言語は出てこないなど、プログラミングやコンピュータ・サイエンスを学んだ経験の無い人でも気軽に楽しめるスタイルです。一方で、対数や行列といった数学用語、ハッシュ関数やデータ構造といったコンピュータ用語は出てきます。テクノベート時代に活躍するビジネスパーソンともなれば、このくらいは咀嚼することが求められるとも言えるでしょう。ぜひチャレンジして、アルゴリズムの面白さと可能性を感じていただきたいと思います。

 

『爆速!アルゴリズム』
アリ・アルモッサウィ(著)、吉田三知世(訳)
東洋経済新報社、1620円

RELATED CONTENTS