アドテク大進化時代だからこそ軸をぶらすな

アドテク

先日改定・発売になった『改訂4版グロービスMBAマーケティング』から「アドテクノロジーの進化」を紹介します。

私は毎年開かれるアドテック東京のイベントに時々参加するのですが、そのテーマやメッセージの変化の速さに驚くことがあります。たとえば数年前は、いかに数多くリターゲティング広告をするかが大きな論点だったのに、翌年には、リターゲティング広告を鬱陶しいと感じる人が増えたので、適切な頻度に下げることが論点になっていた――こんなことがしばしば起こるのです。

こうしたテクノロジーの急激な進化に伴い、できることが増えたのは間違いありません。このような環境下では、多くの人々は「どんなことができるのか」に意識が行きがちです。しかし、テクノロジーは結局のところツールにすぎません。ツールそのものの勉強も確かに重要ですが、ツールを使いこなす鍵は、結局企業として何をしたいか、どうありたいかという幹の部分がしっかりしていることです。手段に過度に振り回されていないか、自問しながらアドテクを始めとするテクノロジーに向き合う必要があります。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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アドテクノロジーの進化

市場の成熟化が進む中、企業は顧客との「つながり」の強化を重要視するようになった。しかし、スマホをはじめ消費者は様々なデジタル端末を持つようになり、SNSなど情報を収集する環境も充実している。したがって、「情報をどのように取得するか」ということはもとより、「何とつながるか」についても、消費者側が主体的に選択できるようになっている。これまでは情報の発信側にいて、ある程度のコントロールができていた企業も、従来のアプローチを続けていては、「顧客とつながる」ことは難しい。

そこで広告主たる企業や伝達媒体としてのメディアは、「ターゲット顧客に自社の情報をクリアに届けたいが、どうすれば最もダイレクトに効率良くアプローチできるか」といった課題に向き合ってきた。ITの進化は消費者の力を強めるだけでなく、企業が課題に向き合い、克服するための武器としても、その存在価値を強めている。

例えば、企業のウェブサイトを訪れた消費者のブラウザに履歴を残すCookie(クッキー)の技術がそうだ。Cookieとは、ウェブサーバーにアクセスしたときにサーバーから振られるIDのようなもので、2回目以降のアクセスが同一人物によるものかをIDで判断する仕組みである。会員制のサイトへのアクセスにおいて、2回目以降はIDとパスワードの入力が省略されるのもこれによるものだ。この技術を活用することで、ネット上のユーザーを特定できるようになり、様々な行動が把握しやすくなった。

さらに近年では、広告媒体をネットワークとして管理するアドネットワークと呼ばれるシステムや、個々のネットユーザーの属性や行動などの多様なデータを統合するDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)といったサポートシステムが登場したことで、自社のサーバーに蓄積された自社サイトの訪問履歴だけでなく、ネット上(社外)のウェブサーバーに蓄積されたデータと組み合わせて、消費者のネット上の行動を把握することも可能になっている。前述のCookieと自社の会員IDやSNSのIDを紐づけて認識するのも、DMPの機能の1つである。つまり、消費者・顧客に関するデータが膨大にかつ安価に素早く獲得、管理できるようになったのだ。これによって、企業はより精度の高いターゲティングが行え、最も効果の高いメディアとのマッチングも主体的に検討できるようになった。

また、モバイルやウェアラブル端末の位置情報、センサーを利用した顔認識や感情認識の技術などにより、インターネット上の行動のみならす、リアルな場での行動も踏まえた最適なターゲティングとアプローチのやり方も検討されつつある。

広告に関するテクノロジーはアドテクノロジー(アドテク)と呼ばれ、プロモーションやマーケティング戦略と切っても切れない関係にあるとの認識が浸透している。しかし、テクノロジーがすべての課題を解決するわけではない。自社がこれから実現したいのは、「どのターゲットから、どんな認知を得る」ことなのか、「どういったアクションを起こしてもらう」ことなのか、そのために「どのような顧客接点作りとアプローチが必要なのか」といった広告の目的と課題を把握して施策をデザインする本質的なプロセスを実行することは、古今東西の別なくマーケティング担当者の重要な任務である。

(本項担当執筆者:花崎徳之 グロービス・コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター)

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