先日改定・発売になった『改訂4版グロービスMBAマーケティング』から「インターネットの普及による購買意思決定プロセスの進化」を紹介します。
マーケティングの有名なフレームワークにAIDMA(Attention-Interest-Desire-Memory-Action)やAMTUL(Attention-Memory-
昨今のIT環境に鑑みると、これらもマーケティングに関与する人にとっては知っておかなければいけない重要な考え方と言えます。いずれも、ネット上での情報共有や評判が顧客の購買行動に大きな影響を与えることを大前提にしています。これらのモデルを有効に活用し、適切な打ち手をどんどん試していく必要があるのです。そしてその際には、KPIを測定しPDCAを回しながら改善を図るのも、今や当然の営みと言えるでしょう。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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インターネットの普及による購買意思決定プロセスの進化
購買意思決定プロセスは、製品特性や流通チャネルの形態などによっても異なり、様々なものが提唱されている。特にインターネットの普及に伴う商流と消費者の購買行動の変化に合わせたモデルのうち、ここでは代表的なものを2つ紹介したい。
1つ目はAISASだ。AIDMAモデルから欲求(Desire)と記憶(Memory)を省き、注目(Attention)、興味(Interest)、検索(Search)、行動(Action)、情報共有(Share)の各プロセスで構成したモデルである。2つの「S」が組み込まれていることがAISASの大きな特徴だ。
例えば、消費者がテレビ番組の美容家電特集を見て魅力的な新製品の存在を知り、グーグルで検索し、アマゾンや楽天のサイトで製品のスペックや価格、ユーザーのレビューを見て購入を決定し、購入後の満足体験をSNSで友人たちとシェアするといった具合だ。
2つ目は2011年にグーグルが発表したZMOTだ。このモデルはP&Gが提唱したFMOT、つまりFirst Moment of Truth(最初の真実の瞬間)が下敷きとなっている。これは、「消費者は店舗に陳列された製品を目にした最初の3秒から7秒の間に購入を決定する」という考え方でマーケティングを行うべきだ、というコンセプトをキーワード化したものだ。
グーグルはこの考え方を発展させ、FMOTの前にZMOT:Zero Moment of Truth(ゼロ段階の真実の瞬間)という「インターネット上での情報収集」があることに着眼した新たなフレームワークを生み出した。
広告や友人との会話などから興味を持った商品をモバイルで検索し、eコマースサイト、レビューサイト、比較サイト、SNSから情報を得ることで購買の意思を固める(ZMOT)。その後、店舗や、場合によってはそのままeコマースで購入し(FMOT)、実際に製品を体験する(SMOT:Second Moment of Truth)ことを通じて製品への評価を固め、その評価をSNSやレビューサイトで共有することにより、別の新規顧客のZMOTにつながっていくというモデルである。
AISAS、ZMOTのいずれも、消費者がインターネット上で情報収集することで購買の意思を固め、購買・使用体験を共有することで製品に関する情報が流通していくという点で共通している。企業は、インターネット上の情報量が加速度的に増し、かつモバイル端末により、いつでもどこでも情報を収集できる時代であることを念頭に置き、コミュニケーション戦略を構築する必要がある。
(本項担当執筆者:花崎徳之 グロービス・コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター)