『女性の視点で見直す人材育成』――働き方改革って、誰のためのものですか? 

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私事ながら筆者は小学生の子どもがいるワーキングマザーだが、近年の働き方改革により数年前と比べて格段に働きやすくなった。本当にありがたい限りだ。もう職場にワーママがいることは普通であるし、既婚・未婚を問わず同僚女性の活躍も目覚しい。今さら声高に「女性の視点」を言われても面はゆい。そう思いながら本書を手に取ったが、「はじめに」にある一文にハッとさせられた。

「本書はジェンダーを皮切りにしつつ、『僕たちみんなのこれからの職場環境や働き方がいかにあるべきか?』を論じた本」――だというのだ。

思えば、働き方改革関連法が6月に成立し、2019年4月1日には主だった部分が施行となる。残業時間の規制や、正社員と非正規社員の不当な待遇格差の解消、高収入専門職の労働時間の規制除外などが主な柱だ。法に加えて、職場では現実的にメンバーの多様性がますます高まるだろう。「いま、日本の職場は『大きな曲がり角』を迎えている」のだ。

そのような状況に対し、著者は、日本の職場において残念ながらいまだに「最もメジャーなマイノリティ」である女性を取り上げ、「女性視点での職場の見直し」を提案している。女性にさえ対応できない職場が、多様性にあふれる未来の職場環境を作り出せるわけがないとし、議論の材料となるモデルケースとして提示しているのだ。

ちなみに、著者は人材開発を専門とする研究者である。大規模なデータ調査による分析結果を、論文ではなく読みやすい書籍の形で公開しているところに、多くの人に多様な働き方について考えて欲しいという、著者の願いを感じる。

実際のデータ分析については、女性が担う役割の移り変わり(トランジション)の4段階ごとに、「職場づくり」という視点から男女差にも着目し論じている。

スタッフ期(実務担当者)というトランジション・ステージを例に挙げてみよう。女性が「今の職場で働き続けたい」と思うことに影響する要因の上位3つは、「責任を持って仕事に取り組む風土」「多様な働き方を認める雰囲気」「残業見直しの雰囲気」であった。言い換えれば、しっかりと仕事ができる職場であっても、多様な働き方を認めず、長時間労働が放置されている職場だったとしたら、ここで働き続けたいという気持ちを持ち続けるのが難しくなるかもしれないということだ。前述したように多様な人々が働くことになる将来の職場としては、彼ら彼女らの就業継続意欲を脅かす原因にもなりかねない。

他にも、リーダー期(部下あり)というトランジション・ステージでは男女とも部下を叱るのが苦手、といった事例が挙げられている。詳しくは本書を参照いただきたい。いずれも、解決のヒントとして「フィードバックの5ステップ」など実際的なTipsが載せられているのはありがたい。近い将来の職場では、多様性ある人々に上手にフィードバックを伝えなければならないのだ。

本書で言う「多様な働き方を望む人々が長くいきいきと働き続けられる職場環境・働き方の実現」という目標に対しては、筆者の周囲の状況(=ワーママも働き続けることが普通)は、まだまだ初期の段階でしかないのかもしれない。2019年の法改正など社会の変化を見据えながら、私たち一人ひとりが、自分の職場の未来を考え行動しなければならない。本書は、そのヒントを示してくれる1冊だ。

 

『女性の視点で見直す人材育成~だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる』
中原淳(著)、トーマツ イノベーション(著)、ダイヤモンド社
2160円

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