社内変革や新事業を成し遂げたいなら「初期の成功」を意識せよ 

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『社内を動かす力』から「小さい成功(スモール・ウィン)を積み重ねる」を紹介します。

スモール・ウィン(スモール・サクセス)やアーリー・ウィン(クイック・ヒット)は、従業員が社内で何かを成し遂げるだけではなく、外部から来たコンサルタントや再生請負人が人々の信頼を獲得する上でも重視するポイントです。通常、人々は「この人に任せて大丈夫なのか?」「彼/彼女の言うことは本当に機能するのか?」と不安を感じるものです。そこで、比較的初期のうちに小さくてもいいので結果を出すことで、人々に受け入れられる土壌を作るのです。

コンサルタントであれば、パレート分析による商品や顧客の優先順位付けなどは比較的結果も出しやすいことからよく使われる手法です。ちなみに、「ロー・ハンギング・フルーツ(low-hanging fruit)」という言い方もあります。文字通り「低いところに生っている果実」の意味です。労少なく結果を出せる部分から取り組むのが早期の成功、ひいては自らの基盤作りや人々の自信の醸成には有効なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

小さい成功(スモール・ウィン)を積み重ねる

新しいことを始める時、既存の制度や長年慣れ親しんだやり方を変える時には、「小さい成功(スモール・ウィン)を積み重ねる」ことが効果を発揮します。スモール・ウィン(スモール・サクセスと呼ぶ人もいます)とは文字通り、小さい部分における、ささやかな成功のことです。

人間は基本的に変化を嫌う生き物なので、相当に良い条件が揃った時以外は、一気呵成に大きな変化を実現するのは難しいのです。ケースにあった、新しいKPI(重要業績評価指標)の導入を例に考えてみましよう。

その時点で活躍している人々は皆、現在のシステムやルール、つまりKPIの中で優秀な成績を上げ、評価されてきた人たちです。現在のポジションや権利は、その結果だと言えます。新しく何かが導入されると、評価のされ方が変わったり、今持っているものを失ったりするかもしれないと、不安に思うがゆえに抵抗するのです。主人公の森山さんやプロジェクトメンバーの面々は、もう少し現場で頑張っている人たちに配慮すべきだったと言えます。

人々の気持ちを変えるには、小さい成功を少しずつ積み上げ、「思ったほど悪くない」「案外行けそうだ」という気にさせていくことが重要です。また、スモール・ウィンは反対する人だけではなく、ニュートラルな人や戸惑っている人、そして賛同者にとっても「この方向で本当に大丈夫なのか」という不安を払拭する効果があります。ですから、なるべく早いタイミングで成し遂げるのがコツです(アーリー・スモール・ウィン)。

具体的には、全体プランの中で、「最も成果が出そうな」小さなことを、自らの置かれた状況、これまでに築いてきたパワーの基盤、できそうなことは何かを冷静に見極め、着手します。小さいことであれば、変更するためのエネルギーも小さくて済むはずです。

いったん、アーリー・スモール・ウィンを実現すると、実績として認められ、信頼を得られる上に、実行したメンバーに自信をつけさせることができます。変化は怖いものではない、やればできる(CANの状態を作る)、ということを実感してもらうのです。

それでは、スモール・ウィンを導くために、現状をどう分析したらよいかについて、いくつかポイントを紹介します。下図に気づいた点を書いてみてください。

チェックリスト

1)最も悪い状況になっている「場所・箇所・部分」はどこか?
「最も悪い」ということは、少し手を入れることで多少なりとも改善する可能性がありますし、それ以上悪くなる可能性は小さいとも言えます。

2)最も簡単に改善できそうなところはどこか?
最重要ポイントでないとしても、「簡単に手をつける」ことができ、「成果が見えやすい」ところで、成功事例を作るのも一つの手です。

3)誰が最も困っているか?
一番困っている人に協力すれば、改善は見込みやすいですし、その人が成果をクチコミで広げてくれる可能性もあります。

4)良い状況で、広める価値のあるものは何か?
最初の項目とは逆ですが、現状の中で良い部分を探してみてください。たとえ部分的であっても良い状況にあるということは、その組織の中ですでに受け入れられているということです。そうした好事例をテコに、徐々に抵抗感を薄めていくわけです。

例を見てみましょう。社内のITシステムを改革するプロジェクトなどは、今までとインターフェイスが変わったり、使えていた機能が使えなくなったりするなど、反対勢力が出てきがちです。その場合、まず従業員が一番困っている部分だけを変更し、しばらくの間テスト利用をしてもらって評判を聞き、スモール・ウィンを作った後で他の部分を変えていくといった方法がよく取られます。

付き合いの長い外注会社の変更も、リスクを大きく感じて反対する人が出てくるでしょう。まずは小規模の実験的な業務を依頼して成功を作り上げ、徐々に移行すると効果的です。

(本項担当執筆者:田久保善彦 グロービス経営大学院研究科長)

『社内を動かす力』
田久保善彦(著)、ダイヤモンド社
1620円

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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